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うつ病の30歳ひきこもり長女 受診先が廃院&カルテ破棄で「障害年金」請求できず 絶体絶命の家族を救った社労士の“起死回生策”

第三者に証人になってもらう方法も検討

 A病院はすでに廃院、B病院では当時のカルテがない、自宅にも当時の受診を証明できるような証拠書類が何もないといった八方ふさがりの状況です。

 ですが、あと1つだけ対策は残されています。

 そこで私は「かなりハードルの高い対策になってしまいますが」と前置きをした上で、次のような説明をしました。

「初診日の証拠書類として『初診日に関する第三者からの申立書(第三者証明)』というものがあります。ただし、この申立書を書いてもらうためには、お嬢さまが17歳ごろにA病院に行っていたことを『その当時実際に見聞きしていた人』に限られます。よって私がこの第三者証明を書いて初診日の証明をすることはできません。なぜなら私はA病院のことを今ここで初めて聞いたので、その当時、実際に見聞きしていたわけではないからです」

「その当時、実際に見聞きしていた人であれば、母親の私や親戚の人でもよいのでしょうか」

「それは駄目です。ここでいう第三者とは『親族以外の人』になるからです。お嬢さまに当てはめると、第三者とは当時の高校のクラスメートや担任の先生などです。もちろん、その当時お嬢さまが受診していたことを実際に見聞きしていた人でなければなりません。なお、第三者証明は医療従事者でなければ2名、医療従事者であれば1名に記載してもらう必要があります」

「そうなのですね…。長女は高校を中退してしまいましたし、当時のクラスメートや先生の連絡先や所在は何も分からないです…」

「確かに10年以上前のことですから、該当者を探し出すことは容易ではありませんよね。あとはA病院の当時の主治医を見つけ出し、その人に第三者証明を書いてもらえれば、初診日の証明ができるのですが…」

 私がそう言うと、母親は急にはっとした表情になりました。

「A病院は廃院していますが、自宅兼診療所のようなものでした。ひょっとしたら、今もそこに当時の主治医が住んでいるかもしれません」

「そうなのですか。ひょっとしたら何とかなるかもしれませんね」

 母親の言葉に、私は一筋の光を見いだしました。

 面談後、母親は当時のA病院(自宅兼診療所)を訪れました。幸いにも当時の主治医は今もその自宅に住んでいました。

 母親は主治医に事情を説明。主治医は伊織さんのことをよく覚えていてくれたそうで、第三者証明の記入も快く引き受けてくれました。

 医療従事者の第三者証明を入手できたことで、初診日の証明は何とかなる見通しが立ちました。その後、私は診断書やその他の必要書類をそろえ、速やかに障害基礎年金の請求を完了させました。

 請求から3カ月がたった頃。母親から「無事に障害基礎年金の2級が認められました」という内容の報告がありました。母親からの報告を受け、私も一安心することができました。

 今回のケースでは何とかなりましたが、いつもこのようにうまくいくとは限りません。初診日の証明が不十分で、障害年金が認められなかった人は多くいます。

 初診日の証明書である受診状況等証明書には有効期限がありません。一度入手しておけばずっと使用できます。「今は障害年金の請求を考えていなくても、将来請求することになるかもしれない」というときに備え、初診の病院にカルテが残っている間に、受診状況等証明書を入手しておくとよいでしょう。

(社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田裕也)

【画像】要注意! これが、ひきこもりの人にやってはいけない“NG行為”です

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浜田裕也(はまだ・ゆうや)

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

2011年7月に発行された内閣府ひきこもり支援者読本「第5章 親が高齢化、死亡した場合のための備え」を共同執筆。親族がひきこもり経験者であったことから、社会貢献の一環としてひきこもり支援にも携わるようになる。ひきこもりの子どもを持つ家族の相談には、ファイナンシャルプランナーとして生活設計を立てるだけでなく、社会保険労務士として、利用できる社会保障制度の検討もするなど、双方の視点からのアドバイスを常に心がけている。ひきこもりの子どもに限らず、障がいのある子ども、ニートやフリーターの子どもを持つ家庭の生活設計の相談を受ける「働けない子どものお金を考える会」メンバーでもある。

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