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「自閉症の兄」に“ライブさながら”の全力応援&大号泣する妹… 母が見た、ケンカばかりの兄妹の“絆”

普段はそんなに兄妹愛が深いようには思わなかったけど…

 普段の娘と息子は、険悪というわけでもないけれど、そこまで仲良しの兄妹というわけでもありません。

 障害があるけれど、温和で平和主義な息子と、天真らんまんだけど、気が強くて兄に対して強気な娘。ほぼ娘が一方的に手を出しますが、けんかや小競り合いが絶えない2人です。

 息子が娘のことをどう思っているのかはよく分かりませんが、娘はちょっとしたことでもしょっちゅう息子を怒っていたので、正直そんなに息子に対して熱い思いがあるとは思いませんでした。

 でも、学習発表会での娘の様子を見ると、少なからず息子のことを大切に思っていたのだなと、うれしくもありました。

 もしかしたら、いつも家にいるときは空気のように当たり前に思っていたけれど、学校という自分の知らない場所にいる兄を見て、急に距離を感じてさみしくなってしまったのではないでしょうか。ステージに立つ兄を見て、ちょっとまぶしく感じたのかもしれません。

 いずれにしろ、そんなに兄妹愛が深いとも思っていなかったけれど、2人には私の分からないところで、絆のようなものが育まれていたのかなと思いました。

知らなかった兄妹の絆に触れた

 私にとって息子の学習発表会は、息子の頑張る姿を見るだけでなく、娘の息子への気持ちも知ることができたうれしい出来事となりました。

 少し前に、息子が短期入所で施設に一泊することになったときも、施設に息子を送っていった帰りに、娘は息子の名前を呼んでわんわん泣きました。娘にとって息子は、いつも当たり前にそこにいる存在で、けんかもするけど離れがたい存在なのかもしれません。

 大人からすると、「すぐにまた会えるのに」と思いますが、娘にとって息子は少しでも距離を感じるとさみしくなってしまう、不思議な存在なのでしょう。

 娘が大きくなっていくと、息子に対してまた別の感情も芽生えてくるかもしれませんが、親とも友だちとも違う、「きょうだい」という特別な存在として、これからもお互いに大切に思っていてくれたらうれしく思います。

 息子と娘は、家以外にもそれぞれ違う場所で居場所を作り、違う世界も構築しつつあります。今回の発表会のように、それぞれの外での顔を見る機会があれば、連れていくのも発見があっていいものだなと思いました。

(ライター、イラストレーター べっこうあめアマミ)

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べっこうあめアマミ(べっこうあめあまみ)

ライター、イラストレーター

知的障害を伴う自閉症の息子と「きょうだい児」の娘を育てながら、ライター、電子書籍作家として活動。「ママがしんどくて無理をして、子どもが幸せになれるわけがない」という信念のもと、「障害のある子ども」ではなく「障害児のママ」に軸足をおいた発信をツイッター(https://twitter.com/ariorihaberi_im)などの各種SNSで続けている。障害児育児をテーマにした複数の電子書籍を出版し、Amazonランキング1位を獲得するなど多くの障害児家族に読まれている(https://www.amazon.co.jp/dp/B09BRGSY7M/)。「べっこうあめアマミ」というペンネームは、障害という重くなりがちなテーマについて、多くの人に気軽に触れてもらいたいと願い、夫と相談して、あえて軽めの言葉を選んで付けた。

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