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よく見る「署名」と「記名」 どう違う? 契約時の法的効力が全然、異なる【弁護士解説】

契約書などでよく見る「署名」と「記名」。実は全然、意味が違います。そこで、法的効力などについても弁護士に解説してもらいました。

「署名」と「記名」 どう違う?
「署名」と「記名」 どう違う?

 引っ越しやビジネスでの契約時などに度々、見聞きする「署名」と「記名」。名前を入れることは理解しつつも、どのように違うのか、知っている人も少なくないのではないでしょうか。そこで、「署名」と「記名」の違いや、法的効力などについて、佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に解説してもらいました。

「署名」は手書きで自署、「記名」は印刷でも可

Q.まず「署名」について教えてください。

佐藤さん「『署名』とは、本人が手書きで自分の氏名を書くこと、つまり、自署することをいいます。

民事訴訟法228条4項では、『私文書は、本人またはその代理人の署名または押印があるときは、真正に成立したものと推定する。』と定めています。契約書に署名があると、後に『契約書は偽物だ』などと争われたとしても、正しく成立したものと推定されるため、トラブルの未然防止、早期解決につながります。

そのため、売買契約や請負契約など、重要な契約を交わすときは、契約書を作成し、署名することがほとんどです。署名だけでも、契約書が正しく成立したものと推定されますが、商慣習上、署名に加えて押印するケースが多いように思います」

Q.次に「記名」について教えてください。

佐藤さん「『記名』とは、署名以外の方法で氏名を記載することをいいます。例えば、ゴム印を使って氏名を押したり、もともと印刷しておいたり、第三者に記載してもらったりする場合が『記名』にあたります。

契約書を作成する際、記名で済ませても、契約の有効性に影響はありませんが、後にトラブルになった際、契約書の成立が真正であることの証明が困難になる可能性があります」

Q.では、「署名」と「記名」の法的効力について、改めて教えください。

佐藤さん「契約書に『署名』があると、本人が作成したものであると推定されるため、後に争いになった場合も、特に疑わしい事情などがない限り、契約書を証拠として使うことができます。
一方、契約書に『記名』しかない場合、後に争いになった場合、本人の意思に基づいて作成されたものであることを証明する必要があり、例えば、契約書が作成された経緯を示すメール等、別の証拠によって、本人の意思に基づいて作成された契約書であることを証明する負担が生じます」

(オトナンサー編集部)

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佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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