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電車やタクシー待ちで「割り込み」された! 犯罪じゃないの? 弁護士に聞いた

“シルバーウィーク”に突入しました。電車やタクシーを待っている時に“割り込み”をされた経験はありませんか。そこで犯罪なのか、弁護士に聞きました。

“割り込み行為”は違法?
“割り込み行為”は違法?

 “シルバーウィーク”に突入しました。人出でにぎわうと、駅で電車やタクシーを待つ行列に並んでいる時に「割り込み」をされたという経験をした人もいると思います。また、コンビニやスーパーでレジを待っている時、エスカレーターに乗る時にも“割り込み”をされた経験があるのではないでしょうか。そもそも“割り込み行為”が違法なのか、気になったため、佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

“割り込み行為”は「軽犯罪」

Q.ずばり、“割り込み”は違法行為なのでしょうか?

佐藤さん「行列への“割り込み行為”の中でも、悪質なものについては、軽犯罪法違反になる可能性があります。

軽犯罪法1条13号後段では、『威勢を示して』、『公共の乗り物、演劇などの催し、割当物資の配給』を待っている公衆の列に割り込んだり、その列を乱したりする行為を禁じています。

『威勢を示して』というのは、簡単に言うと、人を恐れさせる行為を指します。例えば、列に並んでいる人たちに対して、暴言を吐いたり、威圧的な態度を示したりする場合が該当するでしょう。

なお、スーパーやコンビニのレジ待ちの行列に割り込むような場合には、『公共の乗り物、演劇などの催し、割当物資の配給』に該当しないため、軽犯罪法違反には問われません。

この他、各地の条例で一定の割り込み行為を禁じていることが考えられ、その場合には、条例違反に問われる可能性があります」

Q.どのような刑罰が与えられるのでしょうか。

佐藤さん「軽犯罪法違反については、拘留や科料が科される可能性があります。拘留とは、1日以上30日未満の間、刑事施設に拘置する刑です(刑法16条)。科料とは、1000円以上1万円未満の金銭を徴収する刑です(刑法17条)」

Q.“割り込み行為”以外に「軽犯罪法第1条第13号」になり得る行為や行動はあるのでしょうか。

佐藤さん「軽犯罪法1条13号前段は、『公共の場所において多数の人に対して著しく粗野もしくは乱暴な言動で迷惑をかけ』る行為を禁じています。

例えば、公共の場所で、たくさんの人に対して大声で罵倒したり、からんだりすると、軽犯罪法1条13号違反に問われる可能性があります」

Q.では、無言の場合、「すみません」と言って列に割り込まれた場合は、どうなるのでしょうか。

佐藤さん「さりげなく無言で行列に割り込んだり、低姿勢で『すみません』などと言って割り込んだりする場合、『威勢を示して』には該当せず、軽犯罪法違反にはならないでしょう。

ただし、法律で刑罰を定め、禁じている行為は、社会生活を営む上で、特に問題のある一部の行為に過ぎません。法律で禁じられていなかったとしても、周囲に迷惑をかける行為は、道徳上問題があり“マナー違反”です。みんなが気持ちよく生活できるよう、マナーを守ることが大切だと思います」

Q.人気店などの行列で、代表者1人が並んでいて、入店前に家族や友人が集まったりするケースがあったりします。こういうケースはどうなるのでしょうか。

佐藤さん「人気のある飲食店などの行列に割り込んだとしても、『公共の乗り物、演劇などの催し、割当物資の配給』にあたらず、軽犯罪法が禁止行為として定めていないため、軽犯罪法違反には当たりません。

ただし、例えば、演劇などの催しを待つ行列に、代表一人が並び、順番が来そうな段階になって、全員を呼び寄せて割り込むような場合、威圧的に行えば、軽犯罪法違反に当たる可能性もあるでしょう」

Q.過去に“割り込み行為”が原因で逮捕・裁判などになった事例はありますか。

佐藤さん「コロナ禍において、マスクを買い求める客の行列で、割り込みをめぐり口論となり、男性が女性に体当たりなどの暴行を加えたとして逮捕された事例などがあります。軽犯罪法違反での逮捕ではありませんが、割り込み行為がきっかけでトラブルになり、逮捕に至ったケースです。

軽犯罪法違反の罪で起訴されるケースは多くなく、割り込み行為についても、それだけで立件に至ることはあまりないように思います。しかし、威圧的に所定の行列に割り込めば違法であり、単なるモラルの問題ではなく、法的責任を問われ得る行為であることに注意する必要があります。

また、法律で禁じられた割り込み行為ではなかったとしても、多くの人に迷惑をかけることになり、それがきっかけでトラブルに発展することがあります。割り込まれた側が不快に思い、暴力沙汰になったり、割り込んだ側が注意されて感情的となり口論に発展したり、いろいろな問題が起こり得ます。

周囲への思いやりを忘れず、マナーを守って生活することが大切でしょう」

 佐藤さんに、行列で割り込みをされたケースについて説明してもらいました。割り込みをすると、罪に問われる可能性があります。また、佐藤さんが話すように、割り込みが原因で口論や暴力沙汰に発展する可能性もあります。マナーや思いやりを持って行動することを心掛けましょうね。

(オトナンサー編集部)

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佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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