ニュースでよく聞く「破産」「民事再生」「会社更生」「特別清算」 何が違う? 弁護士に聞く
「破産」「民事再生」「会社更生」「特別清算」は、具体的に何が違うのでしょうか。弁護士に聞きました。

新聞やテレビなどで「破産」「民事再生」「会社更生」「特別清算」という言葉をよく耳にします。いずれも、借金の返済が困難なことを理由に、会社が経営をやめるという印象が強いですが、どのような違いがあるのでしょうか。リーガルキュレート総合法律事務所(東京都港区)の高柳孔明弁護士に聞きました。
清算型と再建型の違い
Q.そもそも、「倒産」と「破産」に違いはあるのでしょうか。
高柳さん「『倒産』は、一般的には事業者が経営破綻した状態全般を指す用語として使用されています。法律上も、事業者について『破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又(また)は特別清算開始の申立てがされること』などを倒産と定義しています(中小企業倒産防止共済法2条2項)。ただし、法律上の具体的な制度を指すものではありません。
これに対し、『破産』は、法律上の制度を指しており、『破産法』という法律があります。破産とは、支払い不能または債務超過にある債務者の財産などを清算し、債権者その他の利害関係人の利害および債務者と債権者との権利関係を適切に調整し、債務者の財産などの適正かつ公平な清算を図ること(破産法1条)を言います。
つまり、返済できないほどの多額の借金を抱えた債務者が自身の財産を整理し、それによって得られた資金を、お金を借りた相手、いわゆる債権者に配当することを指します。
法人の場合は破産管財人が法人の財産を管理、処分し、債権者に配当することで、最終的に法人の法人格は消滅し、これにより債務も消滅します。
新聞やテレビなどで登場する『破産』『民事再生』『会社更生』『特別清算』ですが、破産、特別清算は清算型の手続き、民事再生、会社更生は再建型の手続きです」
Q.では、「破産」「特別清算」は、何が違うのでしょうか。意味や手続きの違いについて、教えてください。
高柳さん「破産は、清算型の手続きで、個人でも法人でも破産者となることができます。法人の破産手続きが開始されると、破産管財人が選任され、債務者の財産の管理処分権はすべて破産管財人に移り、これを換価して債権者に配当を行うのが原則です。
ただし、破産管財人は、裁判所の許可を得て営業または事業譲渡をすることができるため、価値のある事業を継続して事業譲渡することによって、配当原資を増やす場合もあります。
破産手続きでは、債権者は、破産手続き開始後、個別的に権利を行使することが禁止され、破産手続きによらなければ弁済を受けることができません。破産管財人は、債務者の財産を換価して配当原資を作り、債権の優先順位に応じて配当を行い、最終的には法人の法人格が消滅します。
『特別清算』は、清算手続きをする株式会社について、清算の遂行に著しい支障をきたすべき事情がある場合または債務超過の疑いがあり、債権者、清算人、監査役または株主からの申し立てがなされた場合に、裁判所の開始命令により開始する手続きです(会社法510条、511条)。
破産手続きと同じ清算型の手続きですが、破産手続きは裁判所に選任された破産管財人が財産管理などを遂行するのに対し、特別清算はその株式会社によって選任された清算人が裁判所の監督の下で手続きを行います。
特別清算と破産との主な違いは、債権者の同意の必要の有無です。特別清算には協定型と和解型の2種類がありますが、いずれも債権者の同意が必要です。
協定型の場合、債権者集会において、出席した議決権者の過半数の同意と、その議決権の総額の3分の2以上の議決権を有する者の同意が得られた場合に協定が成立し、その協定内容に従って債権者に対する弁済を行い、最終的には株式会社の法人格が消滅します。
これに対し、和解型の場合は、個別に債権者と和解した上で、当該和解について裁判所の許可を得て、その和解内容に従って債権者に対する弁済を行い、最終的には株式会社の法人格が消滅します」
「民事再生」と「会社更生」の違いは?
Q.「民事再生」と「会社更生」の違いについて、教えてください。
高柳さん「『民事再生』は再建型で、経済的に窮境にある債務者について、その債権者の多数の同意を得て、なおかつ裁判所の認可を受けた再生計画を定めることなどにより、当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、当該債務者の事業または経済生活の再生を図ることを目的とする手続きです(民事再生法1条)。
民事再生手続きは、原則として、手続き開始後も再生債務者が引き続き業務の執行と財産の管理・処分を行うことが予定されている『DIP(Debtor In Possession)型手続き』です。債務者は、裁判所などの監督の下、財産の管理処分権を有したまま、業務執行を継続することができます。比較的柔軟に手続きを進められますので、中小企業の再建のために選択されることが多い手続きです。
『会社更生』も再建型で、窮境にある株式会社について、更生計画を策定してこれを遂行し、債権者、株主その他の利害関係人の利害を適切に調整し、当該株式会社の事業の維持更生を図ることを目的とする手続きです(会社更生法1条)。
会社更生手続きでは、通常は申し立てと同時に、裁判所が保全管理人による管理を命ずる保全管理命令を発令し、開始決定がなされると、株式会社の事業経営および財産の管理処分権が管財人に移転します。ただし、4要件を満たすことで、例外的にDIP型手続きが認められることもあります。
会社更生手続きは、債権者が担保権を実行することが禁止され、租税債権や労働債権など、破産手続きなどでは優先債権として取り扱われる債権も権利変更の対象となるなど強力な手続きであるため、大規模法人の再建のために選択されることが多いです」
Q.では、会社を完全に消滅させる場合は「破産」「特別清算」、会社が事業を続ける場合は「民事再生」「会社更生」ということでしょうか。
高柳さん「その通りです。ただし、民事再生や会社更生を選択した場合でも、更生(再生)に失敗して更生手続き廃止決定などが確定した場合において、裁判所が当該債務者に破産手続き開始の原因となる事実があると認めた時は、職権で破産手続き開始決定がなされ、破産に移行することになります。
反対に、破産手続き中であっても、破産管財人が裁判所の許可を得て、民事再生手続きや会社更生手続き開始の申し立てをすることも可能です」
Q.「破産」「民事再生」「会社更生」「特別清算」の手続きに関する相談件数や依頼件数は増えているのでしょうか。
高柳さん「新型コロナウイルスの影響や、金融機関の新型コロナ融資の返済を開始したことなどにより、資金繰りが悪化したという相談が増えています。実際に、以前は繁盛していた飲食店から依頼を受けて破産申し立てを行ったり、エステサロンや物販・スクール事業、建設業など、幅広い分野からの相談を受けたりしています」
(オトナンサー編集部)
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