【いまさら聞けない法令用語】「現場検証」と「実況見分」はどう違う? 弁護士が解説
ニュースや新聞でよく見聞きするものの、実はよく分かっていない法令関連用語について、弁護士に聞いてみました。
事件・事故に関する報道だけでなく、ドラマや映画などの劇中でも耳にする機会が多い法令関連用語の一つに「現場検証」があります。また、よく似た用語として「実況見分」という言葉が使われることもあります。「場所の状況を調べる」という点では共通しているように見えるこの両者には、どんな意味と違いがあるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。
「現場検証」は“俗称”
Q.まず、「現場検証」という言葉の意味について教えてください。
佐藤さん「一般に、刑事事件における『現場検証』とは、捜査機関が行う強制捜査の一つです。『現場検証』という呼び方は俗称であり、法的には『検証』といいます。
『検証』がどのような捜査かというと、場所、物、人などの対象について、その存在や状態などを五官(目、耳、鼻、舌、皮膚の5つの器官)の作用を用いて認識することといわれています。具体的には、例えば、事件現場と考えられている場所の状況を、捜査官が目で見たり、写真を撮って記録に残したりする捜査になります。
検証は、場所の所有者や管理者などのプライバシーを害し得る捜査ですが、所有者や管理者といった関係人が同意しなくても、裁判官の令状により、強制的に行うことができます(刑事訴訟法218条)。検証を行うのは検察官、検察事務官、または司法警察職員です(同条)。
なお、検証は、犯罪の捜査をする上で必要な場合において、さまざまな事件で広く行われています。回数は、1回だけの場合もあれば、複数回実施されることもあります」
Q.次に、「実況見分」という言葉の意味について教えてください。
佐藤さん「先述した『検証』は、誰のプライバシーも侵害せず、関係人が検証することに同意しているような場合には、令状によることなく、任意捜査として行われます。この任意捜査として行われる検証のことを、一般に『実況見分』と呼んでいます。
例えば、交通事故が起こり、公道上で現場の状況を見て記録化する捜査は、通常、実況見分にあたります。また、先述の例で、事件現場と考えられている場所を検証する場合も、場所の所有者や管理者などの関係人の同意が得られていれば、任意の実況見分として行うことになるでしょう。
なお、実況見分は居住者、管理者などの関係人の立会を得て行うこととされています(犯罪捜査規範104条2項)」
Q.つまり、「現場検証」と「実況見分」の違いとは何でしょうか。
佐藤さん「『現場検証』と『実況見分』の違いは、強制力の有無になります。先述したように、『検証』は、裁判官の令状に基づき、強制的に行うことができます。ただし、関係人が任意に検証に協力してくれる場合には、原則、『実況見分』として行われることになります。
なお、検証するためには、原則として裁判官の令状が必要ですが、例外的に、逮捕の現場では、令状なしで強制的に検証することが可能とされています(刑事訴訟法220条1項2号、3項)」
(オトナンサー編集部)
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