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9月1日は「防災の日」 障害がある子とその家族にはどのような備えが必要?

障害がある子とその家族が自然災害に備えるには、日頃どのような取り組みが求められるのでしょうか。自閉症の息子を育てるライターが解説します。

障害がある子とその家族が自然災害に備えるには?
障害がある子とその家族が自然災害に備えるには?

 9月1日は「防災の日」です。1923年9月1日に発生した関東大震災などにちなみ、災害への認識を深めるために、1960年に制定されました。災害は誰にとっても大きな脅威であることに変わりはありませんが、障害がある子や、判断力や生活能力が未熟な幼い子どもがいる家庭は、より一層大きな不安を抱えているのではないでしょうか。

 災害に対する備えについて、自閉症と知的障害がある7歳の息子と、きょうだい児(障害や病気を持つ兄弟姉妹がいる子ども)の4歳の娘を育てる筆者が、日頃から意識していることを、お伝えします。

「いつもと違う」が極端に苦手な息子

 知的障害を伴う自閉症がある筆者の息子は、「いつもと違う」状況が極端に苦手です。変わらない毎日、先の見通しがつくルーティンに沿った生活が大好きなので、学校が休みだったり、いつもの予定が急になくなったりするだけでも調子を崩してしまいます。

 そんな息子の特性を考えると、自然災害で生活の全てが突然様変わりした際のストレスは、計り知れないものだと思います。パニックで動けなくなるか、取り乱してかんしゃくが止まらなくなるか…。筆者としては、想像しただけで不安になるのです。

 息子のような特性を持つ人でなくても、パニックになってしまいがちなのが災害時です。せめて、息子と行動を共にする筆者がなるべく冷静でいられるように、事前にさまざまな想定をして備えておきたいと思っています。

 では、具体的にどのような備えをしておくとよいのでしょうか。

特別支援学校で求められる「防災リュック」の中身とは?

 まず、災害時の備えとして、飲料水や食料、医薬品、防寒着、懐中電灯、衛生用品などの物資を用意しておく必要があります。貴重品も、災害時にすぐに持ち出せるようにまとめておくなど、いざというときに慌てない準備をしておくと安心でしょう。農林水産省のホームページ「災害時に備えた食品ストックガイド(1)」では、災害時に備えて「最低3日分~1週間分×人数分の食品の家庭備蓄が望ましい」と呼び掛けています。

 障害がある子どもがいると、災害時は特に動きづらくなることが想像できます。その際、避難所などでは手に入らない物資も必要になるかもしれません。そのため、そういった家庭では特に事前の備えが必要だと考えます。

 筆者の息子は特別支援学校に通っていますが、「非常時のための防災リュック」の用意を求められています。このリュックは年度終わりに毎回持ち帰り、長期休暇中にサイズが合わなくなった服や賞味期限切れの食品などがないか確認し、新学期に再度持っていくことになっています。

 学校にいるときに災害が発生しても困らないように、一人一人専用の防災リュックを用意しているのは、親としても安心感が大きいです。

 参考までに、特別支援学校で求められている防災リュックの中身は次の通りです。

・着替え(上着、ズボン、肌着、オムツなど)
・レインコート
・タオル
・ミネラルウオーター
・非常食

 特別支援学校には、感覚過敏や手先の不器用さなどから、本人がストレスなく着られる衣類が限られるお子さんもいます。筆者の息子もそうですが、小学生になってもオムツが外れていないお子さんもいるため、普段手に入りにくい大きいサイズのオムツの用意も重要です。

 非常食については、偏食があるお子さんもいるので、本人が好んで食べられるものを用意しておくことが大切です。

 思い付きにくいかもしれませんが、レインコートの用意も、忘れてはいけない備えだと思います。筆者の息子もそうですが、障害があるお子さんの中には、傘をうまく差せないお子さんも多いです。傘を差せるお子さんでも、災害時に両手が空くようにレインコートを持っていることは、安全面で大きな助けになるでしょう。

 傘を差していると子ども2人と手をつなぐことができないため、筆者は自分用のレインコートも用意しています。

 特別支援学校で求められる防災リュックの中身は、シンプルだけど、障害がある子が災害時に困らないために、よく考えられている内容だと思いました。家での備えにも参考にしています。

 しかし、リュックに入れておいて放置しておくだけでは、衣類のサイズアウトや非常食の賞味期限切れなどで「いざというとき使えない」という事態にもなりかねません。学校でも定期的に見直しの機会を設けられているように、「防災用品の見直し」は非常に重要です。

 筆者は、防災用の備えを普段の生活に取り入れることを意識しています。例えば、「息子用の大きいサイズのオムツや夜用オムツは、常に多めにストックする」「息子が食べ慣れた食材を多めに買って置いておく」などのちょっとした意識です。あとは、何でも口に入れてしまう息子の衛生面を考えて、除菌ティッシュなどの「拭き取る道具」も多めにストックしています。

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べっこうあめアマミ(べっこうあめあまみ)

ライター、イラストレーター

知的障害を伴う自閉症の息子と「きょうだい児」の娘を育てながら、ライター、電子書籍作家として活動。「ママがしんどくて無理をして、子どもが幸せになれるわけがない」という信念のもと、「障害のある子ども」ではなく「障害児のママ」に軸足をおいた発信をツイッター(https://twitter.com/ariorihaberi_im)などの各種SNSで続けている。障害児育児をテーマにした複数の電子書籍を出版し、Amazonランキング1位を獲得するなど多くの障害児家族に読まれている(https://www.amazon.co.jp/dp/B09BRGSY7M/)。「べっこうあめアマミ」というペンネームは、障害という重くなりがちなテーマについて、多くの人に気軽に触れてもらいたいと願い、夫と相談して、あえて軽めの言葉を選んで付けた。

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