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通学時は? 体育の授業は? 子どものマスク着用、どう変わった?

新型コロナウイルス感染症について、国が基本的対処方針を5月23日に改め、子どもたちのマスク着用などについても、夏場を控えての基準が示されました。どのように変わったのでしょうか。

子どものマスク、着ける場面は?
子どものマスク、着ける場面は?

 新型コロナウイルス感染症について、国が基本的対処方針を5月23日に改め、子どもたちのマスク着用などについても、夏場を控えての基準が示されました。具体的にどのように変わり、今後はどのような点に気を付ければよいのでしょうか。医療ジャーナリストの森まどかさんに聞きました。

夏場は熱中症対策を優先

Q.学校でのマスク着用について、これまでと変わった点を教えてください。

森さん「5月23日に『新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針』が変更され、マスク着用については、夏場の熱中症や子どものマスク着用による事故・体調変化を防ぐことの大切さを盛り込んだ内容となりました。

学校生活において、基本的な感染対策としてのマスク着用の位置づけは維持するものの、児童・生徒の身体的な距離が確保できる場合や、距離が確保できなくても会話をほとんどしない場面でのマスク着用の考え方を明確にし、すでに『学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル(文部科学省)』に記載されている『必要ない場面』を、より具体的に示すことで、学校教育現場が場面に応じて適切な対策を実行しやすくなることも、今回の変更に期待される点です。

学校生活において、屋外では、十分な身体的距離が確保できる場合はマスクの着用は必要ありません。距離が確保できなくても、会話がほとんどない場合は必要ありません。離れて行う運動や移動、『密』にならない外遊び、屋外で行う自然観察やスケッチなどの活動では、マスクを着用する必要がないという見解です。

屋内では、人との距離が確保でき、会話がほとんどない場合のマスク着用は必要ありません。読書や自習時間、視聴覚教材の鑑賞などではマスクをしなくてよいという見解です。

また、体育の授業や運動部の部活動では、運動場だけでなく屋内の体育館やプールでもマスク着用の必要はないとしています」

Q.登下校時のマスクの着用について、これまでと変わった点を教えてください。

森さん「登下校時も、屋外ではマスクを外すことが改めて周知されました。気温・湿度や暑さ指数が高い日には、熱中症対策を優先させマスクを外すことが重要と示されています。小学生など、自分でマスクを外してよいかの判断が難しい年齢の子どもに対しては、教員が積極的に声をかけることも必要とされています。

ただし、人と十分な距離を確保し、会話を控えることも併せて必要とし、公共交通機関を利用する場合には、マスクを着用するなどの感染対策が必要とされています」

Q.そのほか、5月23日の改定で、子どもたちの感染対策で大きく変わった点を教えてください。

森さん「学校に通う児童・生徒だけでなく、乳幼児(小学校に上がる前の年齢)のマスクの着用に注意が必要であることも、基本的対処方針の変更に盛り込まれました。

2歳以上で就学前の子どものマスク着用については、個々の発達の状況や体調等を踏まえる必要があることから、他者との身体的距離にかかわらず、マスク着用を一律には求めないこと、実質的に無理強いすることのないようにする点と、2歳未満のマスクの着用は引き続き推奨されないことが示されています。

2歳未満については、窒息のリスク、呼吸や心臓への負担、顔色や口唇色、表情の変化など体調異変への気づきが遅れるなどの危険性があるからです」

Q.感染経路のポイントや、感染対策の基本が変わったのでしょうか。

森さん「感染経路は、せき、くしゃみ、会話等のときに排出される飛沫(ひまつ)やエアロゾルの吸入、接触感染等と考えられ、現在日本で主流となっているオミクロン株BA.2系統においては、飛沫や換気の悪い場所におけるエアロゾルによる感染が多いと考えられています。学校、幼稚園、保育所等、子どもたちの間での感染の広がりが急増し、家庭に持ち帰り、家庭内で感染する事例が多く見られたことも、オミクロン株の流行の特徴です。

こうした中、基本的な感染対策は変わらず、『3密(密閉空間、密集場所、密接場面)』を避けること、人と人との身体的距離の確保、手洗いや消毒による手指衛生、場面に応じた適切なマスク着用、換気などが引き続き大切と考えられています」

Q.5歳以上の子どもたちもワクチン接種の対象となっています。接種を受けた場合でも、感染対策は必要なのでしょうか。

森さん「学校や幼稚園、保育所、教育施設等は集団行動の機会が多くあり、その集団の子どもたちのワクチン接種状況はさまざまです。また、ワクチンの効果がすべての人に当てはまるわけではないため、先述したような基本的な感染対策は必要になります」

Q.子どもの感染対策で特に注意すべき点、親が配慮すべき点など、今後の感染対策の心構えを教えてください。

森さん「長引くコロナ禍で、一律に過度な感染対策を実施することによる、子どもたちの心身の健康への弊害が指摘されてきました。感染状況も医療提供体制も落ち着いている現在、対策を見直し、保護者や子どもたちと情報を共有しながら、場所や場面に応じて必要な対策に絞ることが大切と考えます。

子どものマスク着用は、個々の発達の状況や体質によって難しい場合や、体調がすぐれない場合なども、負担となるため、周囲の大人が注意を払う必要があります。気温と湿度が高くなるこれからの季節は、熱中症や脱水等のリスクが高くなる恐れもあるため、“マスク慣れ”してしまった子どもたちにマスクを外すことの必要性を分かりやすく伝えることも大切です」

(オトナンサー編集部)

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森まどか(もり・まどか)

医療ジャーナリスト、キャスター

幼少の頃より、医院を開業する父や祖父を通して「地域に暮らす人たちのための医療」を身近に感じながら育つ。医療職には進まず、学習院大学法学部政治学科を卒業。2000年より、医療・健康・介護を専門とする放送局のキャスターとして、現場取材、医師、コメディカル、厚生労働省担当官との対談など数多くの医療番組に出演。医療コンテンツの企画・プロデュース、シンポジウムのコーディネーターなど幅広く活動している。自身が症例数の少ない病気で手術、長期入院をした経験から、「患者の視点」を大切に医師と患者の懸け橋となるような医療情報の発信を目指している。日本医学ジャーナリスト協会正会員、ピンクリボンアドバイザー。

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