MVPは誰?「カムカムエヴリバディ」100年を描いた壮大な物語を振り返る
受け継がれつながる意思「ひなた編」
るいとジョーの間に生まれた2人の子、ひなたと桃太郎(青木柚さん)。ジョーの影響で時代劇好きに育ったひなたは、一時だけ自分の将来に不安を覚えるも、無事、時代劇村のアルバイトとして腰を据えることに。
ひなた編のメインキャラクターといえば、ヒロインのひなた、ヒロインの相手役・五十嵐文四郎(本郷奏多さん)、ひなたが時代劇村でアルバイトをするきっかけをつくった伴虚無蔵(松重豊さん)、時代劇村を代表する名俳優・美咲すみれ(安達祐実さん)などの名前が挙げられるでしょう。
ここではあえて、ひなたの弟・桃太郎を演じた青木さんと、ひなたの友人である野田一恵を演じた三浦透子さんに注目したいと思います。
青木さんは近年特に存在感を見せている役者の一人。NHKではドラマ「きれいのくに」(2021)でメインキャラクターの青木誠也を演じていました。映画では「うみべの女の子」(2021)で主演を務めており、今年9月公開予定の「よだかの片想い」への出演、来年公開予定の「まなみ100%」で主演も決定しています。
青木さんの演技を見ていると、普通の男の子を演じる難しさを感じます。それは、彼があまりにも自然に”普通の男の子”を体現しきっているからに他なりません。わざとらしくない、やりすぎていない、どこにでもいそうな普通の男の子を完璧に演じているのです。私たち視聴者は時として当たり前に感じてしまいますが、青木さんの表現力には注目せざるを得ない強さがあります。
「カムカムエヴリバディ」では、ひなたの弟・桃太郎を演じる青木さん。恋心を寄せる女性が結婚してしまったことを知り、ムシャクシャした気持ちを晴らすためにポータブルCDプレーヤーを店先から盗んでしまう場面は、思春期の少年が醸し出す心の揺れ動きを表現していました。
ひなたの友人・野田一恵は、るい編で登場したベリー(市川実日子さん)の娘です。三浦さんは、アカデミー国際長編映画賞を受賞した映画「ドライブ・マイ・カー」において、無口なドライバー・渡利みさき役を演じたことでも話題に。寡黙でとつとつとした語り口が印象的な、誠実な女性を表現してみせました。
「カムカムエヴリバディ」で演じる一恵は、どちらかと言うと表情も明るくはつらつとしたイメージ。映画村のミス上映コンテストに出場した、ひなたの応援に駆けつける情の深さもある女性です。母の影響で茶道にも通じており、凛とした一面もあります。
本編の流れに関係するような大きな役どころではないかもしれませんが、一恵は、幼い頃からひなたとともに過ごし、ひなたのことを応援してきた存在です。子役時代からのキャリア、映画やドラマなど垣根を超えた演技経験を持つ三浦さんだからこそ、唯一の表現力でもって”一恵”というキャラクターを体現できたのではないでしょうか。
ひなたの道を歩けば
3世代、100年にわたって紡がれた物語「カムカムエヴリバディ」。生き別れた安子とるいは、ついに再会することができました。
キャスティングディレクターとして来日していたアニー・ヒラカワ(森山良子さん)。仕事を通して出会っていたアニーとひなたは、お互いが血縁関係にあることを知らず、やりとりを重ねていました。日系アメリカ人と名乗っていたアニーこそ、るいと生き別れた安子本人だったのです。
るいの子どもがひなたであり、会える距離にるいがいることを知ったアニー。しかし、るいのためを思い、会うことはかたくなに拒んでいました。仕事を終えた足でアメリカへ戻り、二度と日本には戻ってこない――。そう決心した気持ちを、ひなたの熱意が動かします。
ジョーとトミー北沢(早乙女太一さん)の演奏をバックに「On the Sunny Side of the Street」を歌う、るいはやっとアニーと再会し、そんな抱き合う2人の様子を見て、連綿とつながる100年の時を思った視聴者も多いのではないでしょうか。
親から子、孫の世代にわたって聴いてきた「カムカム英語講座」。ひなたがこのラジオ講座の講師となる最終回は、これ以上ないフィナーレだったと言えるでしょう。
「ひなたの道を歩けば、きっと人生は輝く」私たちが生きる現実は、明日、明後日がどうなるか誰にも予想できない時代です。だからこそ、自分にとっての「ひなたの道」を見つけ、自信をもって歩いていく。
「カムカムエヴリバディ」は、それこそが自分らしく生きる道だと、教えてくれる物語でした。
(ライター 北村有)











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