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なぜドラマのタイトルはどんどん長くなるのか? 「流行」「保険」の声も

「書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~」「バイプレイヤーズ~名脇役の森の100日間~」など、この冬は長いタイトルのドラマが数多く放送されています。その理由を筆者が分析します。

「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」に出演する上白石萌音さん(2020年11月、時事)、菜々緒さん
「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」に出演する上白石萌音さん(2020年11月、時事)、菜々緒さん

「書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~」(テレビ朝日系)
「青のSP(スクールポリス)-学校内警察・嶋田隆平-」(カンテレ・フジテレビ系)
「バイプレイヤーズ~名脇役の森の100日間~」(テレビ東京系)
「今野敏サスペンス 警視庁強行犯係 樋口顕」(テレビ東京系)
「江戸モアゼル~令和で恋、いたしんす。~」(読売テレビ・日本テレビ系)
「アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~」(テレビ東京系)
「モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~」(テレビ朝日系)
「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」(日本テレビ系)
「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」(TBS系)
「でっけぇ風呂場で待ってます」(日本テレビ系)
「天国と地獄~サイコな2人~」(TBS系)
「あなた犯人じゃありません」(テレビ東京系)
「レッドアイズ 監視捜査班」(日本テレビ系)
「ここは今から倫理です。」(NHK)
「君と世界が終わる日に」(日本テレビ系)
「直ちゃんは小学三年生」(テレビ東京系)

 今冬放送中の新作ドラマで10文字以上の作品を並べてみました。26作中16作が10文字以上の長いタイトルを採用していることに驚かされるのではないでしょうか。このような「タイトルが長い」という現象は数年前からあったものの、ここに来て過半数を占めるほど各局に浸透し、「最近の流行」という声も聞こえてきます。

 なぜ、ドラマのタイトルは長くなっているのでしょうか。

第1話を見てもらうための最善策

 最大の理由は「第1話を見てもらうため」の分かりやすさ。

 例を挙げると「書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~」はその文字を見ただけで「脚本家が主人公のドタバタコメディーだな」と分かるでしょう。また、「青のSP(スクールポリス)-学校内警察・嶋田隆平-」はスクールポリス、学校、警察と、意味の重複するフレーズを詰め込んでいますが、これも見るだけで「学校内に警察がいたら……」という物語がイメージできます。

 基本的に連ドラは第1話を見てもらえなければ、第2話から最終話までの約2カ月半を棒に振ってしまうケースが多いため、「第1話を何としてでも見てもらいたい」のが本音。長いタイトルは視聴者に内容をイメージさせ、興味を持ってもらうためのものであり、各作品のホームページにある「はじめに」の文章をギュッと凝縮させたようなものなのです。

 例えば、「江戸モアゼル~令和で恋、いたしんす。~」「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」は恋愛ドラマであることが一目瞭然ですし、「アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~」はネットの書き込み、「モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~」は変わり者の女性が主人公であることが分かるでしょう。

 ネットの普及で多彩なエンタメコンテンツが好きな時間に好きな場所で楽しめるようになり、ドラマはこれまで以上に分かりやすくアピールしなければ選んでもらいにくい時代になりました。

 以前は「タイトルは短く言い切れるものにすべき」「『どんな内容なのかな』と想像させた方が見てもらいやすい」という考え方がありましたが、最近では「思っていたほど視聴者に伝わらなかった」という失敗を恐れて、保険をかけるように長めに設定するのがセオリー。また、「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS系)が「逃げ恥」と略されて連呼されるようになったほか、視聴率の面でも成功を収めたことで、それに追随する流れが生まれています。

 もう一つ特徴的なのは「書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~」「青のSP(スクールポリス)-学校内警察・嶋田隆平-」「今野敏サスペンス 警視庁強行犯係 樋口顕」のような主人公の名前を入れたタイトル。これらは「ドクターX 外科医・大門未知子」(テレビ朝日系)のように、主人公の魅力で引きつけようというコンセプトの作品。だからこそ、「タイトルに入れることで視聴者に名前を印象づけたい」という狙いがあるのです。

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木村隆志(きむら・たかし)

コラムニスト、コンサルタント、テレビ解説者

雑誌やウェブに月間30本前後のコラムを寄稿するほか、「週刊フジテレビ批評」などに出演し、各局のスタッフに情報提供も行っている。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアー、人間関係のコンサルタントとしても活動中。著書に「トップ・インタビュアーの『聴き技』84」「話しかけなくていい!会話術」など。

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