千鳥・ノブ、テレビ業界内で評価の高い“口グセツッコミ”の力
テレビ業界で高い評価を得ているお笑いコンビ・千鳥。大悟さんの存在感が目立ちますが、ノブさんの評価は想像以上に高いと筆者は言います。
![ノブさん](https://otonanswer.jp/wp-content/uploads/2021/01/210117_nobu_01-360x450.jpg)
現在、テレビ業界内で「最も評価が高い」「一番仕事がしたい」と言われているのは、好感度ナンバーワンのサンドウィッチマンでも、お笑い第7世代の旗手・霜降り明星でもなく、千鳥の2人。見た目とボケのインパクトから、「大悟あってのコンビ」と思われがちですが、テレビの世界では視聴者が思っている以上にノブさんの評価が高いのです。
実際、ノブさんは単独出演だけで「ぐるぐるナインティナイン」(日本テレビ系)のグルメチキンレース・ゴチになります!、「林修のニッポンドリル」(フジテレビ系)、「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」(NHK)、「ノブナカなんなん」(テレビ朝日系)などがあり、主要各局を総ナメ。しかも、MC、レギュラー、声の出演など、番組によって異なるポジションを用意されていることがその実力を物語っています。
失礼ながら、ギャグやモノマネが得意なわけでもなく、イケメンでも美声でもないノブさんはなぜ、これほど評価され、活躍の場を与えられているのでしょうか。
フォローにもなる万能型のツッコミ
そのヒントはノブさんが口グセのように使っているツッコミにあります。
ノブさんの代名詞と言えば、「クセがスゴイ!」というツッコミであり、もはや流行語を超えて幅広い世代に浸透しました。それ以外でも「なんなん?」「〇〇〇じゃ!」「どえらい〇〇」「どういう笑い?」などを多用していますが、特筆すべきはこれらのツッコミを漫才の中だけでなく、バラエティーの進行やトークパートでも口グセのように使っていること。つまり、ノブさんの出演するバラエティーは、口グセのようなツッコミが飛び出すたびに笑いを誘っているのです。
ノブさんのツッコミは視聴者の気持ちをひと言で代弁するようなスタイルで、中でも支持を集めているのは嘆きやボヤき。例えば、誰かのボケが斬新すぎて分かりにくかったり、くだらなすぎてスベッたりしたときに「クセがスゴイ!」「なんなん?」「どういうお笑い?」でフォローしつつ、笑いを誘うことができます。いわば、ツッコミだけでなく、フォローにもなる万能型であり、しかも、「誰かを助けることはあっても傷つけることはない」という現代的な要素を持ち合わせているのも人気の秘けつでしょう。
さらに、そのツッコミはトーク相手、グループコント、映像などあらゆるシチュエーションに使えることで、構成・演出の幅を広げることに貢献。決していい声ではないのに、ナレーターとして起用されることも多いのは、口グセのツッコミが面白く万能で、しかも、繰り出すタイミングもがいいからなのです。
冠番組に組み込まれるノブの口グセ
「ノブさんの口グセがいかに評価されているか」は、番組名に採用されていることからも一目瞭然。
現在、「千鳥のクセがスゴイネタGP」(フジテレビ系)、「ノブナカんなん?」(NHK)が放送されているほか、過去にも「千鳥の東京路地裏大クセ探訪」(テレビ朝日)、「世界の村のどエライさん」(関西テレビ・フジテレビ系)、「運搬千鳥 それ、どうやって運ぶんじゃ?」(東海テレビ・フジテレビ系)などがありました。
いずれもノブさんの口グセをベースに作られた番組であり、これこそ、千鳥が各局のスタッフたちから愛されている証し。さらに、スタッフたちは番組内でも「ノブさんに何とかあのツッコミを言わせたい」と思って、さまざまな工夫を凝らしたり、繰り返しイジるような映像を挟んだりなど、楽しみながら仕事をしている様子がうかがえます。
かつてはバラエティーのスタッフたちにとって、「最も仕事がしたいのは視聴率を獲得できる芸人」という時代がありました。その点、千鳥にはこれといった高視聴率番組はなく、むしろ低視聴率番組ばかり。それでも、民放各局が求める13歳~49歳の人気が高く、見ている人の熱も高い番組が多いため、ネット上の反響もスポンサーの反応も上々で千鳥の評価が下がることはないのです。
(コラムニスト、テレビ解説者 木村隆志)
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