「半沢」「わたナギ」「テセウス」…TBSが2020年のドラマシーンを制した理由
「半沢直樹」「私の家政夫ナギサさん」「テセウスの船」…と、2020年のドラマシーンで大きな盛り上がりを見せたTBS作品。強さの理由は何だったのでしょうか。

秋ドラマも佳境に入り、1年が終わりを迎えようとしている2020年のドラマシーン。今年は新型コロナウイルスの影響で、ドラマ撮影の中止や延期、放送スケジュールや編成の変更を余儀なくされるなど前例のない年でした。
そんな中、視聴率、SNSともに盛り上がりを見せたのがTBS系列で放送された連続ドラマ。平均視聴率は「半沢直樹」24.7%(最終回32.7%)、「私の家政夫ナギサさん」15.1%(同19.6%)、「テセウスの船」13.4%(同19.6%)など年間を通して、各クールに放送された作品が注目を集め、話題を提供していました。
2020年のドラマシーンで、TBSの作品が盛り上がりを見せた理由について、テレビドラマに詳しいライターの田幸和歌子さんに聞きました。
局全体が一つの“チーム”に
TBSは現在、「日曜午後9時」「金曜午後10時」「火曜午後10時」の3つの枠でそれぞれ連続ドラマを放送中。田幸さんは「それぞれの枠の特徴を上手に出せている」と評します。
「日曜は中高年の男性を意識した、豪華キャストの王道の作品、金曜は脂ののった中堅実力派のスタッフや勢いのあるキャストを起用した社会派、話題性のある作品、火曜は若い女性をターゲットにスタッフ、キャストともに若手を抜てきした恋愛要素の強い作品と、それぞれの特徴が明確に見えます」(田幸さん)
「これは朝ドラ、大河ドラマのほか、女性層をターゲットにエンタメ性の高い作品を手掛ける『ドラマ10』、演劇畑からの抜てきなどチャレンジ作の多い『よるドラ』など枠ごとの特徴をしっかり打ち出しているNHKと似た体制のような気がします」
さらに、TBS全体が一つの“チーム”になっていると田幸さんは分析します。
「役者ありきではなく、プロデューサーが主体となってドラマ作りをしているとTBSは公言しています。火曜枠に抜てきされた若手が金曜枠、日曜枠の安定感ある仕事ぶりに支えられ、チャレンジができたり、その後、金曜枠、日曜枠へとステップアップできる環境と体制が整っており、局全体が一つのチームとして機能している印象です。ビデオリサーチが発表した今年のタイムシフト視聴率ランキングでは、上位6作品をTBSのドラマが独占するなど圧勝の1年でした」
(※1位「半沢直樹」、2位「テセウスの船」「私の家政夫ナギサさん」、4位「恋はつづくよどこまでも」「MIU404」、6位「おカネの切れ目が恋のはじまり」)
田幸さんによると、今年放送されたTBSドラマは回を重ねるにつれて盛り上がっていく傾向が強かったといいます。
「特に、1月期に放送された『恋はつづくよどこまでも』はその傾向が顕著で、初回放送は9.9%だったにもかかわらず、最終回は15.4%を記録しました。その他、『テセウスの船』『私の家政夫ナギサさん』なども初回放送より終盤の方が視聴率が高く、最終回で最高視聴率を記録するなど、作品の盛り上がりが数字となって表れていました」
一方で、昨今のテレビドラマはSNSやネット上での盛り上がりも大事な評価の指標であると考えられるそうです。
「SNSの盛り上がりやネット記事の本数なども視聴率に作用していると考えられます。初回放送を見逃してしまったけど、SNSやネットで話題になっているから見てみようと途中参入している人も多くいたはずで、特に『恋はつづくよどこまでも』のSNS上での熱狂度はすさまじく、新たな成功例の一つといえるでしょう」
今後のドラマはリアリティーとエンタメ要素のバランスが鍵を握ると田幸さんはみています。
「ドラマの描き方として、現実世界でも起こるようなリアリティーを追求するか、エンタメ要素を盛り込んだ振り切った作品にするかというパターンが考えられますが、近年はこの二極化がより進んでいるように感じます。この両方の要素をバランスよく取り入れていたのが『半沢直樹』です」
「銀行や政治などリアルな社会でも起こりうる難題に立ち向かう姿を描きながらも、堺雅人さんをはじめ、香川照之さん、市川猿之助さんらの熱量高い演技が話題になり、エンタメ要素としてもウケたことがヒットにつながりました。今年はコロナもあり、ドラマの作り方も大きく変わりましたが、この2要素を両立させるのか、またはどちらかに振り切るのかが今後のドラマ作りを考える上では一つの軸になるでしょう」
(オトナンサー編集部)
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