オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

「ランチ」「テークアウト」で夜間営業店は生き残れる? 新たな収益源にも?

夜間の営業時間短縮を求められた飲食店が、ランチタイムに営業したり、テークアウトを始めたりしています。売り上げ減少の解決策になるのでしょうか。

緊急事態宣言後、テークアウトを始めたフランス料理店(2020年4月、時事)
緊急事態宣言後、テークアウトを始めたフランス料理店(2020年4月、時事)

 新型コロナウイルスの流行による緊急事態宣言を受けた措置として、東京都などは午後8時以降に営業をしていた飲食店に対し、営業時間を午後8時まで、酒類の提供は午後7時までにするよう協力を要請しています。夜間のみ営業していた飲食店の中には、ランチタイムの営業を新たに始めたり、テークアウトを始めたりして、売り上げの激減を食い止めようとする動きがあります。

 しかし、こうした対策で飲食店は存続できるのでしょうか。経営コンサルタントの大庭真一郎さんに聞きました。

顧客のつなぎ止めには効果?

Q.夜間営業のみだった飲食店が夜間の営業時間を短縮した場合、経営にどの程度の影響があるのでしょうか。

大庭さん「現在、都道府県からの営業自粛要請により、夜間の営業を午後8時までとする飲食店が多くあります。時短営業を行うことで売り上げが減り、店は赤字に転じてしまいます。通常、飲食店は昼と夜の営業がありますが、夜間の営業時間を短縮したことによる影響を分かりやすく解説するため、夜間営業だけの居酒屋への影響を考えてみます。

居酒屋の客数は午後7時台から9時台がピークのため、少なくとも売り上げは3分の1以下に落ち込みます。一般的な居酒屋の原価と経費の水準は、原価(食材、酒類など)35%、人件費25%、広告費などの変動経費15%、家賃などの固定経費20%、営業利益5%程度です。そのうち、原価と人件費と変動経費は売り上げの減少に比例して減らすことができますが、固定経費は減りません。

仮に月の売り上げが600万円だったとすると、時短営業前の営業利益は30万円です。時短営業後の月の売り上げが3分の1の200万円だった場合に、原価、人件費、変動経費の合計を売り上げに対する75%相当の150万円に抑えたとしても、固定経費は元の売り上げ600万円の20%相当である120万円発生します。そうなると、差し引き70万円の赤字になってしまうのです」

Q.夜間営業を短縮して、ランチタイムの営業を始めた場合、どの程度、売り上げや利益の減少をカバーできると考えられますか。また、経営面以外のメリットがあれば教えてください。

大庭さん「今は全国民を対象とした外出自粛の影響により、外食への需要自体が激減している状態ですが、そのことを考慮しない場合であっても、赤字を解消できるほどの売り上げは難しいと思います。

例に挙げた居酒屋の売り上げは、夜の客単価5000円、1日の平均客数48人、月25日間営業として考えましたが、ランチの場合は、立地にもよりますが1000円程度の客単価しか期待できません。客数も夜の半分程度の想定が無難だと思われますので、ランチで得られる月の売り上げは60万円ほどです。

60万円では、夜間の時短営業による赤字の70万円を回収できず、加えて、ランチ営業に必要な経費が支出として発生するので赤字解消へのハードルは高いです。ただし、ランチ時に店の一押しメニューをコストパフォーマンスが良いと感じられるような形で提供することにより、顧客のつなぎ止めや宣伝広告の効果が生まれると思います」

Q.テークアウトの営業については、いかがでしょうか。

大庭さん「外出自粛の強化に伴い、テークアウトへの対応を行う店も増えてきています。テークアウトのメリットは、メニューが限定されることで食材の使い残しなどの原価ロスを抑えることができる▽店内接客が不要なため人件費を抑えられる▽調理を効率的に行えるので光熱費等も抑えられる――などです。

その半面、売り上げの上限が限られてしまう▽売れ残ったときに廃棄ロスが発生する▽持ち帰り容器などの備品コストが発生する――といった点は課題です。客単価も店内での提供時よりは低くなるため、集客力が高くない立地でのテークアウトによる売り上げのカバーは、ランチ営業ほどは期待できないのではないかと考えられます」

Q.ランチ、テークアウトの営業について、デメリットは。

大庭さん「新型コロナウイルスの感染拡大防止への対応として、ランチ営業やテークアウト営業を強化することに関しては、いずれも店が感染源となるリスクが存在します。

ランチ営業の場合、店内接客のために従業員を確保しなければならないケースが多く、事業主は安全配慮義務の観点から従業員に対する感染防止策を講じる必要があります。加えて、店内が3密状態になることによる客への感染を防止するための対策も講じる必要があります。もっとも、これは夜間営業と同じ課題です。

一方、テークアウト営業の場合は、従業員を確保せずに対応できるケースが多いですが、客が密集することによる感染を防止する対策を講じる必要があります。また、人が集まることやごみが散乱することに対して、近隣住民から苦情が来る可能性も考えておく必要があります。

また、テークアウトに関しては、一定の許可が必要となる場合があります。例えば、新たに食材を仕入れて、店で提供していない料理を弁当として販売する場合は、保健所の許可が必要になります」

1 2

大庭真一郎(おおば・しんいちろう)

中小企業診断士、社会保険労務士

東京都出身。東京理科大学卒業後、企業勤務を経て、1995年4月に大庭経営労務相談所を設立。「支援企業のペースで共に行動を」をモットーに、関西地区を中心に企業に対する経営支援業務を展開。支援実績多数。以下のポリシーを持って、中堅・中小企業に対する支援を行っている。(1)相談企業の実情、特性に配慮した上で、相談企業のペースで改革を進めること(2)相談企業が主体的に実践できる環境をつくりながら、改革を進めること(3)従業員の理解や協力を得られるように改革を進めること(4)相談企業に対して、理論より行動重視という考えに基づき、レスポンスを早めること。大庭経営労務相談所(https://ooba-keieiroumu.jimdo.com/)。

コメント