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金ピカ先生にささぐ! メディアは中傷やあおりではなく、社会構造に切り込むべきだ

先生の死から何を学べばいいのか

 記事によると、先生は「生活保護を受けながら食事はほとんど取らない」「口にするのは焼酎とたばこくらいで、アルコール度数20度の焼酎を朝も夜も飲んでいる」「体中が痛い、早く死ねたらいい」などと語られているとあります。さらに、デイケアの方が週2回、身の回りの物を片付けてくれるだけと書かれています。

 先生は大病を患った後、禁煙、禁酒、食事節制をしていました。そう考えれば、アルコール依存に陥っていたことが容易に推測できます。ここで2つの疑問が残ります。

(1)担当ワーカーは必要な処置をしていたのか?
(2)周囲は単に放置していただけではないのか?

 つまり、適切な支援があれば「救うことができたのではないか」という視点です。先生のみじめな姿をクローズアップしたあおり記事が目立ちましたが、助けられる命を見捨てている「社会構造の愚」こそ、取り上げるべきだったのではないでしょうか。治療できる病院につないでいたら、68歳で孤独死を迎えることにはならなかったと思います。

 ニュースによると、デイサービスのスタッフが、冷たくなって倒れている姿を自宅で見つけ、警察が死亡を確認したとあります。私たちは、先生の孤独死から何を学べばいいのでしょうか。

 先生とホテルオークラや赤プリの旧館で、エビフライやオムライスを食べたことを懐かしく思います。「尾藤君、エビフライはカラッと揚げすぎちゃ駄目なんだ。風味が消えちゃうからね」。筆者は、アスカ王国という障害者支援団体を運営しています。先生は社会福祉に造詣が深く、障害者支援活動にもご理解を頂きました。謹んで哀悼の意を表します。先生、安らかにお眠りください。

(コラムニスト、著述家 尾藤克之)

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尾藤克之(びとう・かつゆき)

コラムニスト、著述家 尾藤克之

コラムニスト、著述家。
議員秘書、コンサル、IT系上場企業等の役員を経て、現在は障害者支援団体の「アスカ王国」を運営。複数のニュースサイトに投稿。代表作として『頭がいい人の読書術』(すばる舎)など21冊。アメーバブログ「コラム秘伝のタレ」も絶賛公開中。

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