PPAPも本当はダメ! 「森のくまさん」騒動から考える著作権
「森のくまさん」の歌詞の日本語訳者が、その“パロディー”を販売したパーマ大佐さんとレコード会社にCDの販売中止を求めています。訳者側は「著作者人格権」を侵害されたと主張。しかし、こうした事例は私たちの日常生活にもあふれているようです。
童謡「森のくまさん」の歌詞を日本語訳した馬場祥弘さんが、歌詞を無断で改変したパロディー作品を販売したとして、お笑いタレントのパーマ大佐さんとレコード会社にCDの販売中止を求めたことが大きく報じられました。
報道によると「訳詞者」として著作権を持つ馬場さんは2016年11月ごろ、レコード会社から歌詞の改変許可を求められましたが、これを拒否。しかし同社は同12月、パロディー作品(一部を原文のまま使用し、パーマ大佐さんオリジナルの詞を追加)のCDを発売したといいます。
馬場さん側は、著作権法で定められた著作者の人格権を侵害されたと主張、CDの回収と慰謝料300万円の支払いを求めているようです。オトナンサー編集部では、今回の事案の争点などについて弁護士・弁理士の牧野和夫さんに聞きました。
著作者人格権は孫の代まで行使できる
まず、外国の歌を日本語訳した馬場さんに著作権はあるのでしょうか。
牧野さんによると、「馬場さんには日本語訳の詞に対する著作権、そして著作者人格権があります。今回の争点となっているのは著作者人格権の侵害です」。著作者人格権には、公表権や氏名表示権、同一性保持権が含まれます。このうち同一性保持権は、著作者の意図しない方向で作品が改変されることなどを阻止するための権利。「財産権である著作権は他人に譲渡できるほか、50年後に権利が切れますが、著作者人格権は相続人によって孫の代まで権利を行使できます」。
つまり「森のくまさん」の日本語版には、馬場さんの著作者人格権が残っていることになります。「今回のパロディー作品は一部を元の詞のまま使用し、パーマ大佐さんオリジナルの詞を追加して制作されました。元の詞を使用せず、全てがオリジナルの詞であれば、複製権の侵害や同一性保持権の侵害が問われる可能性は低かったと思われます」。
しかし、今回の作品は原作の詞の一部を利用しており、「著作者の意図に反する改変」として、同一性保持権の侵害が問われる可能性が出てきました。パーマ大佐さんの側は、原作の詞の著作権(複製権)と同一性保持権を持つ馬場さん側に許可を得なければなりません。
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