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100作目の朝ドラ「なつぞら」好調の理由は“すずボイス”にあり

原点に連ドラ「学校のカイダン」

 とはいえ、すずさんの声も個性的であり、独特の震える感じが苦手だという人はいます。ただ、その特徴は彼女の魅力、特に「色気」につながっています。「なつぞら」でその声に接し、すっかりトリコになったのが、俳優の草刈正雄さんです。

 今年4月に放送されたバラエティー「土曜スタジオパーク」(NHK総合)で、草刈さんはすずさんの「艶っぽい声」を、あるベテラン女優に例えました。

「若尾(文子)さんとダブるんですよ、僕」

 と、少年のように照れていたものです。ちなみに、若尾さんは大河ドラマ「武田信玄」(1988年)でナレーションを担当したことがあります。各回ラストの決めぜりふ「今宵はここまでに致しとうござりまする」は、当時の流行語大賞を受賞しました。いわば、艶っぽい声を持つ女優の遺伝子が、時代を超えて受け継がれているわけです。

 そんな「すずボイス」の原点ともいうべき作品が、日本テレビ系連続ドラマ「学校のカイダン」(2015年)です。彼女の連ドラ初主演作品で、底辺女子高生が天才スピーチライターに助けられながら、「言葉の力」で学校と自分自身を変えていくという「スピーチドラマ」でした。演説シーンでの切なくも迫力あふれる声の強さが、今も印象に残っています。

「なつぞら」では、夕見子役の福地桃子さんの声も人気です。こちらは、柔らかさのある正統的な美声で、ヒロイン・なつとのやり取りはハーモニーのようです。物語の進行上、出番から遠ざかっていますが、また2人のやり取りを聞きたいものです。

 というわけで「耳で楽しむドラマ」でもある「なつぞら」。今のところ、個人的に一番心に響いたのは、41話(5月17日放送)の「天陽くーん」のリフレインです。上京を祖父に認めてもらえたうれしさがあふれ、その直前に映った空の青さと雪の白さとに吸い込まれそうな気分になりました。

 これからも、さまざまな「すずボイス」が聞けることでしょう。中盤に差しかかっても「なつぞら」はますます視界良好です。

(作家・芸能評論家 宝泉薫)

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宝泉薫(ほうせん・かおる)

作家、芸能評論家

1964年岐阜県生まれ。岩手県在住。早大除籍後「よい子の歌謡曲」「週刊明星」「宝島30」「噂の真相」「サイゾー」などに執筆する。近著に「平成の死 追悼は生きる糧」(KKベストセラーズ)、「平成『一発屋』見聞録」(言視舎)、「あのアイドルがなぜヌードに」(文春ムック)など。

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