夢をかなえた男性が警察学校で体験したのは…漫画「警察官をクビになった話」が話題に
警察官を辞めた経緯やその後を描いた漫画が話題に。18歳で小さい頃からの夢だった警察官になった男性でしたが…。
警察官を辞めた経緯やその後を描いた漫画「警察官をクビになった話」がSNS上で話題となっています。18歳で小さい頃からの夢だった警察官になった男性。しかし、警察学校で集団生活するうちに、同期や教官との人間関係が…という内容で、「つらさが分かる」「懸命に働いている姿に心打たれた」「昔の職場にすごく似ている」などの声が上がっています。作者の男性に聞きました。
さまざまな人との出会いで成長できた
この漫画を描いたのは、ハルオサン(ペンネーム)さんです。沖縄でコラムニストとして活動しており、著作に「天国に一番近い会社に勤めていた話」(KADOKAWA)があります。なお、2016年にブログ「警察官クビになってからブログ」を開設し、話題となりました。漫画「警察官をクビになった話」は全14話あり、ブログ上で公開しています。
Q.どちらの都道府県の警察官として採用されたのでしょうか。
ハルオサンさん「現在、その県警で頑張っている方々に迷惑がかかるため言えません」
Q.今回の漫画を描いたきっかけは。「警察官クビになってからブログ」はネット上で検索圏外になってしまったそうですが、それも関係していますか。
ハルオサンさん「もともと、ブログで書いていた記事を漫画で描きました。今まで漫画を描いたことはほとんどありませんでした。
漫画を描いたのには、さまざまな理由があります。検索圏外になったことも残念でした。ブログを読んだ方から『自分も頑張ります』『救われました』という声もたくさん頂いていました。検索圏外になったことで『もっとたくさんの方に読んでいただきたい』という気持ちになりました」
Q.なぜ、警察官という職業に憧れていたのでしょうか。
ハルオサンさん「『○○レンジャー』など、見ていた番組に警察官のヒーローが多かったからだと思います。あとは刑事ドラマなどが大好きでした。警察官は私の憧れるヒーローそのものでした」
Q.警察学校で同期に殴られたとのことですが、日常茶飯事だったのでしょうか。
ハルオサンさん「はい。ある日、突然始まりました。授業が始まる前や廊下を歩いている移動中に殴られることが多かったです。『いきなり殴られる』『いきなり蹴られる』感じです。殴った人はみんな『殴られて当然』という態度をするものですから、何をされても罪悪感でいっぱいになりました。いじめは何もしないと悪化するだけですから、私の姿勢に問題があったとも思います」
Q.教官は殴られていることを知っていたのでしょうか。
ハルオサン「途中から気付いたと思いますが、止められたことは一度もありませんでした。最初は教官も『いじめられて私が辞めてくれるなら都合がよい』と考えていたのではないかと思います。しかし、いじめがエスカレートしてしまったので、何らかの責任が来ることを恐れたのでしょう。だから、私に退職を促したのだと思います」
Q.警察学校を辞めるまでの間、同期や教官への怒りが湧いたことはありますか。
ハルオサンさん「最初は怒りがありました。『なぜこんなことをするんだ』と。しかし、それが続くと『自分が悪いんだ』という気持ちが強くなりました。警察を辞めてからも、ずっとそう思っていました。
訴えたいと思ったことはありますが、それが自分の幸せにつながるとは思えませんので、今そういう気持ちは全くありません。怒るにはエネルギーを使いますし、気も病みます。私は覚えていても、あちらは私のことを全く覚えていないと思います」
Q.苦しい状況から立ち直れたのは、さまざまな仕事を経験したからでしょうか。
ハルオサンさん「私は警察をクビになって当然の人間でした。挙動不審の上、何一つまともにこなせなかったわけですから。しかし、社会に出てから仕事を通じ、いろいろな人が大切なことを教えてくれました。尊敬する人ができましたし、仲間もできました。一言では言えませんが、仕事を通して『成長した』ということだと思います」
Q.漫画について、どのような意見が寄せられていますか。
ハルオサンさん「『警察はクソ』『無能な人間に警察官をやってほしくないから、お前は辞めさせられて当然』という感想や『何も言えない』という感想も多かったです。
しかし、メールで寄せられた感想の大半は『私も夢を諦めてつらい気持ちでしたが、読んで救われました』といった内容のものです。元警察官や元自衛官、元消防隊員の方々から多く寄せられました。私以上にすさまじいパワハラを経験された方もいらっしゃいました。結果的に誰かのためになったのであれば、描いてよかったと思います。
警察関係者からは『まあ気にすんなよ』『私があなたの分まで頑張ります』という慰めのメールも多かったです。冷静で客観的な文章が多く、『これは良い文章だな』と感心してしまいました」
Q.夢を諦めなければならなかった人や、つらい思いをしている方にどのようなメッセージを送りたいですか。
ハルオサンさん「何も言えません。かけられる言葉を持っていないからです。『こうしろ』『気にするな』『頑張れ』という言葉は間違ってはいないと思いますが、違ってしまうような気もします。言葉にならないことを描いたのが今回の漫画です。ただ『寄り添いたい』と言いますか。まず一度、漫画を読んでいただけたらと思います」
(オトナンサー編集部)
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