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「茶色い砂糖は体によい」って聞くけど、なぜ? 白い砂糖との違いは? 大正7年創業「宮崎製糖」に話を聞いてみた

到着した原糖の保管倉庫(筆者のまるも亜希子)
到着した原糖の保管倉庫(筆者のまるも亜希子)

 サトウキビは産地の工場で「原料糖」に加工されたあと工場に運ばれてきます。まずはその原料糖に糖蜜を混ぜていく工程です。メルターという機械に原料糖、糖蜜、水を入れて1時間くらい煮詰めていきます。原料を加熱するため、工場内はとても暑く、夏場はかなり過酷な現場であることを実感しました。職人たちはこまめな休憩を取りながら作業しているとのことですが、私たちが通過すると皆さん、礼儀正しくあいさつをしてくれました。

白い砂糖も茶色いお砂糖も 元は同じ「原料糖」からできている!

 煮詰めてできた原液の蜜は、メッシュのストレーナーを通ることで異物を除去しながら沈殿槽へ移されます。沈殿槽の下から15センチくらいは使わず、上にある原液の蜜だけを本格的な火入れのための二重釜へ。ここでも異物を除去しつつポンプを通って一気に工場の4階まで運ばれ、加熱・濃縮・殺菌が行われます。

「4階はもっと暑いですよ」と、宮崎さんに言われながら階段を上っていくと、確かにムワッとした熱気に包まれます。でもすでに、砂糖のあま〜くいい香りがただよっていて、なんだか幸せな気持ちになる筆者。

 次の工程にあたる鉄製の二重釜に到着しました。勇気を出して中をのぞかせてもらうと、釜の中はグツグツとまるで火山のマグマのようになっていました。かなりの高温で加熱、煮沸しているそうです。

 その後、煮沸を終えたドロドロ状の蜜は巨大なミキサーに流し込まれ、空気をおり混ぜながら一気に粉状になるのです。ミキサーは複数台並んでおり、私たち素人が見ている限りは巨大な攪拌(かくはん)機のようでした。ミキサーの中ではドロドロ状の蜜がみるみるうちに粉状に変わり、砂のようにさらりとしたものに変わっていくから驚きです。その後、スクリューコンベアーで階下へと運ばれるのですが、メッシュ状のトンネルのようなところを通る際に大きな黒い玉ははじかれ、もう一度スクリューに戻る仕組み。こうしてサラサラの粉状になった赤糖が、袋詰めへと進みます。

 計量して包装されたあと、X線検査機と金属検出機を通過し、晴れて製品として完成。品質管理には職人さんの知見も欠かせず、ロットごとに少しずつ取って色味をチェックして、袋詰めの時も玉が多いと手の感覚でわかるということです。こうして多くの工程を見てくると、コスパやタイパが叫ばれる時代にあっても、丁寧にじっくりと「いい砂糖」を食卓へ届けようとする思いが伝わりました。

「当社の玉糖は、糖度が86%ほどになっていて、優しくじんわりと感じられる甘味が特徴です。それが料理に使用した際の味のよさ、深いコクといったものにつながると、ご好評をいただいています」と宮崎さんは言います。

 上白糖(白いお砂糖)の糖度は97%程度と高く、口に入れた直後に甘味がピークに達してすぐに下がるのが特徴ですが、今回試食させてもらった玉糖は、口に入れるとゆるやかに甘味が感じられるため、じわじわと奥深い甘さが広がり、ミネラル成分が体に染み入るような感覚になりました。

「茶色い砂糖には栄養素の『蜜』が含まれているから健康によいんです」と語る宮崎邦紘さん
「茶色い砂糖には栄養素の『蜜』が含まれているから健康によいんです」と語る宮崎邦紘さん

「ぜひ、ご自宅でお料理やお菓子づくりに使ってみてください。玉糖は和洋中なんでも相性がよいんです。とくにお勧めは、すき焼き、豚の角煮、ステーキソースの隠し味。素材のうまみを引き立ててくれて、お料理のレベルがグッとアップしますよ」と宮崎さんは言います。

 そこで、私にはトライしてみたいものが。実は母が作った煮物が大好物でレシピを教わったものの、何度作ってみても母の味とは違うのです。だしやしょうゆは同じものを使っているので、これはもしかして、砂糖が違うからではないかとうすうす感じていました。

 取材を終えて土産としていただいた「玉砂糖」を使って煮物を作ってみると、鍋の中ですでに野菜の照りがよく、いつもより少し色が濃いような気がしました。出来上がった煮物を食べてみると……うん! いつもよりうまみが出てコクがあり、口の中に余韻が広がります。これは母の味にかなり近づいた気がします!

 その後もマリネや肉巻き、ブリの照り焼きなどいろいろと使ってみましたが、どれも格段においしくできて、うれしくなりました。砂糖って、私たちが思っている以上に大事なものなのだなと、とても心に響いた工場見学でした。

 皆さんもぜひ、砂糖を選ぶときは「色の濃さ」に注目してみてください。そして、味よし、甘さよし、体にもよし、と三拍子そろった茶色い砂糖を試して、いつもの料理を、よりおいしくしてみてはいかがでしょうか。

(まるも亜希子)

【画像で工場見学!】老舗お砂糖屋さんの砂糖製造工程を見る

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