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自転車での飲酒運転はセーフ? アウト? 法的問題を弁護士が解説

酒を楽しんだ後、陽気に自転車に乗って帰宅したいところ…しかし、自転車での飲酒運転は法的に問題が!

自転車での飲酒運転 法的罰則とは…
自転車での飲酒運転 法的罰則とは…

 送別会や歓迎会、お花見を迎える、この頃。通勤で自転車を使っていると、酒に酔っていてもそのまま自転車に乗って帰宅している人はいませんか。自動車の飲酒運転については当然、厳しく罰せられますが、「自転車」の飲酒運転も法的に問題があります。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に、詳しく聞きました。

自転車は道交法で「軽車両」 懲役または罰金の可能性も

 自転車は「道路交通法2条11号で、『軽車両』の一つに定義されており、同条8号で『軽車両』は、自動車などと同様の『車両』とされています。

 そのため、牧野さんは「つまり、自転車での違法行為も、自動車と同様に罰せられる場合がある」と話します。

 そして、自転車での飲酒運転について「道交法65条で『何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない』と定めています。自転車もこの『車両等』にあたるので、自転車での飲酒運転も法律違反となります」と話し、罰則について「『酒酔い運転』の場合、『5年以下の懲役または100万円以下の罰金』(道交法117条の2)が科せられる可能性があります。これは自転車も自動車も同じです」と説明します。

 「酒気帯び運転」の罰則については「道交法117条の2の2に『3年以下の懲役または50万円以下の罰金』が定められていますが、この罰則は自転車などの軽車両運転者には適用されません。117条の2の2の罰則対象者を説明する文中に『車両等(軽車両を除く)を運転した者』とあるためです」と付け加えています。

 飲酒しての運転というと「酒酔い運転」「酒気帯び運転」という言葉を思い浮かべます。違いについて聞いてみると、「酒酔い運転は『アルコールの影響により正常な運転ができないおそれのある状態』で、具体的には『まっすぐ歩けない』『ろれつが回っていない』などの状態です」と説明。

 一方の酒気帯び運転については「呼気1リットル中アルコール分が0.15ミリグラム以上検出された場合です」と語りつつ、「酒酔い運転は呼気中のアルコール濃度は関係なく、運転者の状況で判断されます」と教えてくれました。

 自転車の飲酒運転で事故を起こした場合、適用が考えられる罪名と罰則はどのような形になるのでしょうか。

 牧野さんによると「自転車での交通事故によって他人を死亡やけがさせた場合には、過失傷害罪(刑法209条1項、30万円以下の罰金または科料)や過失致死罪(刑法210条、50万円以下の罰金)、業務上過失致死傷罪(刑法211条、5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金)に問われる可能性がある」といい、「そのほか、民事上の損害賠償責任を負います。酒酔い運転の状態であれば、先述した道交法の罰則も同時に適用される可能性」があるということです。

自転車の飲酒運転で、自動車運転免許の停止処分も

自転車での飲酒運転は、厳しい罰則が科されます。そこで「自動車の運転免許を停止されたり、取り消されたりする可能性」についても質問しました。

 牧野さんは「基本的には影響を受けませんが、道交法103条で『運転免許を受けた者が著しく交通の危険を生じさせるおそれがあるときは、6カ月を超えない範囲で免許の効力を停止することができる』とあり、これを根拠に愛知県条例では、自転車で酒酔い運転をした場合、最大で180日間の自動車運転の免許停止処分を受けることを定めています」と説明。

 判例として「飲酒運転ではなく、また、奈良県での事例ですが、自転車が後続のバイクと接触し、バイクを運転していた男性が重傷を負って自転車が逃走した事件で、自転車に乗っていた男性が道交法違反(救護義務違反)で書類送検され、その後、自動車運転免許について150日の免停を受けたケースがありました」と教えてくれました。

 都道府県公安委員会が、酒酔い運転をした人などを対象に、自転車の運転による交通の危険を防止するための講習「自転車運転者講習制度」を行っています。

 牧野さんは、同制度について、「自転車を運転中に、信号無視、一時停止違反などの危険行為(14類型、)を行い、交通違反として取り締まりを受けた、または、交通事故を起こして送検された者に対し、都道府県公安委員会が自転車運転者講習を受講する旨を命じる制度です」と詳しく説明しつつ、「3年以内に2回以上取り締まりや事故を起こした人が対象で、3カ月以内に受講時間3時間、手数料6000円の講習を受けなければなりません」とコメント。

 受講命令に従わなかった場合は「5万円以下の罰金に処せられる可能性がある」ということです。

 自転車で飲食店に来ている人に、お酒を勧めた場合、勧めた側にも法的責任が生じるのでしょうか。牧野さんは「道路交通法117条の2などに規定があり、お酒を勧められた人が自転車で酒酔い運転した場合、勧めた側も3年以下の懲役または50万円以下の罰金を科される可能性があります」と語ってくれました。

 一瞬の気の緩みが思わぬ事故につながることがあります。自転車でも飲酒運転すると危険かつ厳しい罰則を受けるので、絶対にやめましょう。

(オトナンサー編集部)

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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