オフィスロボット「RPA」は日本の働き方を変えるのか
オフィスロボットなどとして、最近注目されている「RPA」。ホワイトカラーの間接業務を自動化する欧米発のテクノロジーですが、今、日本の働き方や生産性を改善するための切り札として期待されています。

「RPA」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。別名「オフィスロボット」「デジタルレイバー」などと呼ばれる最新テクノロジーです。かつて、私たちが予想していたSF的な未来とは異なる形で、いつの間にかロボットがオフィスに導入されつつあります。
2015年、長時間労働の末に起きた電通若手社員の痛ましい自殺事件は、まだ記憶に新しいことと思います。それをきっかけとして「働き方改革」が叫ばれ、さまざまな職場で、長時間労働が蔓延(まんえん)する働き方を見直す動きが活発になっています。
しかし、いくら残業が規制されたところで、現場の仕事そのものが減るわけではありません。どの企業にも、毎日の定型業務や、時間のかかる膨大なデータ処理業務などは山積みになっていると思います。ノー残業デーに仕方なく仕事を持ち帰る、深夜残業ができないので早朝出勤する、などの笑えない実態も聞こえてきます。
なおかつ、それほど働いているのにもかかわらず、日本人の生産性は低いということが、これまでにたびたび指摘され続けてきました。経済協力開発機構(OECD)が発表した「生産性指標総覧」によると、加盟国中の日本の労働生産性は、1990年代前半からずっと、先進7カ国の中で最下位です。特にサービス業の労働生産性は、米国の約半分(50.7%)しかない、と指摘した日本生産性本部の調査は4月にも大きな話題となりました。
この危機的な状態を打開する切り札とされ、今、急速に注目が集まっているのが、RPA(Robotic Process Automation)なのです。
複雑な事務処理をロボットがこなす
RPAとは、欧米で登場したホワイトカラーの間接業務を自動化してくれるテクノロジー、またはそれを利用した業務改革の手法のことです。ロボットというと、工場のラインで作業を行う、アームを備えた産業用ロボットのようなものを想像するかもしれませんが、RPAのオフィスロボットはソフトウェアで、姿は見えません。
このロボットは、人間がパソコンを使って行っていた事務処理を忠実に代行してくれます。人間がやることは、職場に新人が来た時のようにロボットに仕事を教え、実行させることです。どのような作業を行わせるかは、自由にプログラミング可能ですが、中でも、次のような仕事がロボット化に適しているとされています。
・一定のルールに従って、繰り返し行われる
・構造化されたデータを扱う
・ウィンドウズやクラウドサービスなどのアプリケーションを使う
・業務プロセスが標準化されている
・プロセス実行に3人以上のリソースが求められる
・ヒューマンエラーが起きやすい
紙媒体や、さまざまな異なるシステムの画面などがあっても、オフィスロボットは画像認識技術を用いて、人間の作業を正確に再現できます。RPAが本格的に実用化され始めたのは、従来は専門家にしか開発できなかったプログラムを、自動的に生成できる技術が生まれたからです。
ロボットが得意とする上記の業務は、人事、経理、調達、営業事務といった部署で特に顕著に見られるものです。熟練の担当者が手書きされた書類を見ながら、必要なデータを入力し、別の担当者が入力にミスがないか一行ずつチェックする、というこれまでの業務フローは、ロボットを使うことによって、より早く正確なものに生まれ変わります。
かつて、そろばんが電卓に代わり、手書きからワープロ、そしてパソコンに代わっていったように、従来は人間が行うしかなかったこれらの業務に、大きな変革が起きつつあるのです。
オフィスロボットが人間の新人と異なる最大の特徴は、昼でも夜でも24時間働き続けることができること。しかも一度教えたことは絶対にミスをしません。どんな地道な作業でも愚痴をこぼすことなく、淡々とこなし続けるわけですから、人間の新人よりもはるかに役に立ちます。人間の部下を管轄していた管理職は今後、ロボットも管理する立場になると言われていますが、そんな未来に不安を感じる人もいるかもしれません。
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