オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

お兄ちゃんではなく弟? 3歳娘と自閉症の7歳息子、母が望む関係とは?

3歳の娘にとって、自閉症の7歳の兄はどのような存在なのでしょうか。2人を育てるライターが解説します。

自閉症の7歳の息子に懐く3歳の娘(筆者作)
自閉症の7歳の息子に懐く3歳の娘(筆者作)

 筆者には、自閉症と知的障害がある7歳の息子と、きょうだい児(障害や病気を持つ兄弟姉妹がいる子ども)の3歳の娘がいます。少し前まで赤ちゃんだったのに、いつの間にか発達面で兄を追い越し、ぐんぐん成長していく娘。娘にとって兄は、どのような存在なのでしょうか。

兄の世話をしたがるようになった妹

「にぃに!!」

 珍しく息子を連れて保育園へお迎えに行くと、娘がうれしそうに飛びついてきました。筆者にではなく、息子にです。

 娘はそれまでお友達と楽しくはしゃいでいましたが、兄の姿を見るとすぐに、こちらに走ってきました。息子はこれといったリアクションもありませんでしたが、何となくうれしそうなことは分かりました。

 娘は、年齢的にもまだ息子の障害について、よく分かっていないと思います。しかし、息子のことを単純にきょうだいとして好きなのだろう、ということは、そばで見ていて感じます。最近はけんかも多くなりましたが、怒りながらも気付けばすぐに、2人はくっついているのです。そんな様子を見ると、筆者もほっこりした気持ちになります。

「あ! これ、にぃにさんと○○(娘の名前)ちゃん!」

 絵本を読んでいるときや、外出先でポスターを見たときに、娘がよく言う言葉です。男の子と女の子が一緒に描かれているイラストを見ると、娘は必ずと言っていいほど、それを「兄と自分」だと言うのです。

 息子は言葉をほとんど発しませんし、娘もまだそれほどすらすらとしゃべるわけではないので、2人の関係性は私の予想の範囲を出ません。それでも、毎日2人のことを見ていると、けんかはするけど仲のよいきょうだいだな、と思います。

 年齢が4歳離れているので、体格面では息子と娘は分かりやすく「お兄ちゃんと妹」です。それでも、娘が息子の発達段階を追い抜いて先に行ってしまっていることは、娘も何となく気付いているようで、息子より4歳年下でも、何かと息子の世話を焼きたがります。

 息子は自閉症ですが、あまり動かないタイプの自閉症です。そのため、「お風呂に行こう」「トイレに行こう」「寝室に行こう」と誘っても、なかなか動こうとしません。

 とはいえ、大人には大人の事情があり、時間に沿って生活を回していかなければならないので、私は息子を次の行動に向けて必死に促します。

 すると、あるときからその促しは、娘も一緒にやるようになりました。私の声掛けをまねして娘も「にぃにー! お風呂だよー!」「こっちにおいでー!」と息子を説得します。時には手を引いたり、プンプン怒ってみせたり、まるで小さなお母さんかお姉さんのように振る舞うようになりました。お風呂上がりには2人分のお茶を筆者から受け取り、自分が飲むと同時に、息子にも届けに行ってくれます。

 しかし、時に息子は娘のライバルにもなります。いつからかはおぼろげですが、娘は何でも息子と同じことをやりたがるようになりました。食事も息子と同じ物を同じ量欲しがりますし、3歳児には少々多過ぎるように思う量でも食べ切ります。

 そして、息子より先に食べ終わると、誇らしげににっこり笑うのです。着替えや片付けも、息子よりも先に終わらせようと頑張ったり、張り合ったりする姿が見られるようになりました。

 娘にとって息子は、お兄ちゃんであり、弟分であり、双子のきょうだいでもあるような、そんな何とも定義しづらい絶妙な存在なのかもしれません。

1 2 3

べっこうあめアマミ(べっこうあめあまみ)

ライター、イラストレーター

知的障害を伴う自閉症の息子と「きょうだい児」の娘を育てながら、ライター、電子書籍作家として活動。「ママがしんどくて無理をして、子どもが幸せになれるわけがない」という信念のもと、「障害のある子ども」ではなく「障害児のママ」に軸足をおいた発信をツイッター(https://twitter.com/ariorihaberi_im)などの各種SNSで続けている。障害児育児をテーマにした複数の電子書籍を出版し、Amazonランキング1位を獲得するなど多くの障害児家族に読まれている(https://www.amazon.co.jp/dp/B09BRGSY7M/)。「べっこうあめアマミ」というペンネームは、障害という重くなりがちなテーマについて、多くの人に気軽に触れてもらいたいと願い、夫と相談して、あえて軽めの言葉を選んで付けた。

コメント