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久々登場、堺雅人 作品をヒットへ導き続ける“グレー”な在り方とは

日本テレビ系スペシャルドラマ「ダマせない男」で主演を務める堺雅人さん。「半沢直樹」「リーガル・ハイ」などをヒットに導いた、俳優としてのこれまでを振り返り、その魅力に迫ります。

堺雅人さん(2017年10月、時事)
堺雅人さん(2017年10月、時事)

 きょう3月26日、午後9時から放送されるスペシャルドラマ「ダマせない男」(日本テレビ系)。主演を務める堺雅人さんは、2020年に放送された「半沢直樹」(TBS系)以来、約2年ぶりに地上波のドラマに出演することで注目を集めています。

 同作で堺さんが演じるのは、超が付くほどお人よしの主人公・絹咲正。彼はしがないサラリーマンでしたが、婚活パーティーで浅香澪(門脇麦さん)という女詐欺師に出会ったことで「10億円詐欺計画」に巻き込まれ、詐欺師に仕立てられていきます。

 優しすぎてうそをつけない正が、どのように10億もの大金をせしめるのか。日テレドラマ公式YouTubeチャンネルで公開された予告映像では、「無理です、誰かをだますなんて!」と必死に運命にあらがおうとする、正の姿が映し出されています。

巧みな話術と笑顔

 しかし、どちらかといえば、これまでの出演作を振り返ってみると、堺さんは“ダマす男”のイメージが強いかもしれません。今回演じる役柄から思い起こされるのは、2009年に公開された映画「クヒオ大佐」。堺さんは同作で、米軍パイロットを自称し、何人もの女性からお金をだまし取った希代の結婚詐欺師・クヒオ大佐を演じています。

 また、代表作の一つである「リーガル・ハイ」シリーズ(フジテレビ系)では、敏腕弁護士・古美門研介を演じた堺さん。とにかく勝つことにこだわる優秀な弁護士である一方、人格的には破綻しており、勝率を上げるためなら汚い手を使うこともいとわない、古美門をコミカルに演じました。

 立場は違えど、どちらの作品でも堺さんは、巧みな話術で人を操る力を持ったキャラクターを演じているのです。

 アクの強い性格で、褒められたものではない行動を平気で取るのに、なぜか憎めない彼ら。その理由は、堺さんが持つ“笑顔”にあるのかもしれません。

 いつも、ほほ笑んでいるような優しい顔立ちが印象的な堺さん。母子犬の殺処分を回避するため、飼い主探しに奔走する保健所の職員を演じた映画「ひまわりと子犬の7日間」や、患者の心に優しく寄り添う精神科医に扮(ふん)したドラマ「Dr.倫太郎」(日本テレビ系)など、その笑顔で視聴者を和ませることもあれば、時に、真意が見えない“末恐ろしさ”を映すこともあります。

 堺さんを語る上で欠かせない「半沢直樹」でも、「やられたらやり返す、倍返しだ!」をモットーに、不正を犯した人間を追い詰めていくときの不敵な笑みと、妻や同僚だけに見せる優しい笑顔を使い分け、単純に正義のヒーローとは言い難い、半沢直樹という男を体現していました。

 堺さんはどんな役柄を演じるときも、色で言えば、白でも黒でもなく、常にグレーであろうとしているように感じます。荒唐無稽なうそをつくクヒオ大佐に悲しい過去が見え隠れしたり、無情に思える古美門の言葉が実は本質を言い当てていたり、人間は多面的な生き物であることを物語るのが、堺さんの演技です。

 うれしいから笑っているのではなく、人は何かをたくらんでいるときも、心の傷を覆い隠そうとするときも、笑顔を見せる――。堺さんの演技に引き込まれるのは、見ている人に「この人は一体何を考えているんだろう?」「本当はどんな人なんだろう?」と想像の余地を残してくれているからなのかもしれません。

ぴったりな役柄「ダマせない男」

 そのため、「ダマせない男」で演じる正は、堺さんにぴったりな役どころと言えるでしょう。

 堺さん自身が「これをやりたい、という自分の意志ではなく、すべて人から言われてやるので、そんな生き方でいいのか? と思ってしまいますけれど。でも、お人よしで優しいから、詐欺を働くときでさえ、一生懸命うそをつこう、成立させようと努力するんですよ」と語るように、とことん人の良い正が「10億円詐欺計画」を通じて、どう変化していくのかも見どころの一つ。最後まで、お人よしを貫けるのか、それとも悪に染まってしまうのか――。

 わずか2時間の中で変化していく、堺さんの表情にも注目したいです。

(ライター 苫とり子)

苫とり子(とま・とりこ)

エンタメ系ライター

1995年、岡山県生まれ。東京在住。学生時代に演劇や歌のレッスンを受け、小劇場の舞台に出演。IT企業でOLを務めた後、フリーライターに転身。現在は「Real Sound」「AM(アム)」「Recgame」「アーバンライフメトロ」などに、エンタメ系コラムやインタビュー記事、イベントレポートなどを寄稿している。

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