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“オールラウンダー女優”波瑠、抜群の安定感で各局に引っ張りだこの今

フジテレビ系連続ドラマ「ナイト・ドクター」で主演を務め、近年は各局のドラマで主演起用が続く波瑠さん。その魅力について、専門家に聞きました。

波瑠さん(2017年2月、時事通信フォト)
波瑠さん(2017年2月、時事通信フォト)

 放送中のフジテレビ系連続ドラマ「ナイト・ドクター」(毎週月曜 後9:00)で主演を務める女優・波瑠さん。同ドラマは、夜間救急専門のチーム「ナイト・ドクター」の5人の医師たちが、夜は命に、昼はそれぞれの人生に向き合う姿を描いたストーリーで、波瑠さんは「いつでも、どんな患者でも絶対に受け入れる」という強い信念を持つ医師・朝倉美月を演じています。

 近年、各局のドラマで主演に起用され続け、活躍ぶりが注目を集めている波瑠さん。その特徴や魅力について、作家・芸能評論家の宝泉薫さんに聞きました。

作品にもたらす安定感

 今年、30歳を迎えた波瑠さんは中学1年生のときにスカウトされたことがきっかけで芸能界入り。2006年公開の「だからワタシを座らせて。通勤電車で座る技術!」で映画初出演、同年放送の「14才の母」(日本テレビ系)で連ドラ初出演を果たします。

 2007年5月からファッション誌「Seventeen」の専属モデルを務め、2012年3月までの約5年間活動。同年4月からは同「non-no」の専属モデルとして活動し、2014年放送の「おそろし~三島屋変調百物語」(NHK BSプレミアム)でドラマ初主演、同年公開の映画「がじまる食堂の恋」で長編映画単独初主演を飾るなど、モデル業に加え、女優としても活躍の場を広げていきました。

 翌年放送のNHK連続テレビ小説「あさが来た」(2015年度後期)ではヒロイン・白岡あさを演じ、作品のヒットとともにブレーク。以降、「ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子」(関西テレビ・フジテレビ系)、「あなたのことはそれほど」(TBS系)、「未解決の女 警視庁文書捜査官」シリーズ(テレビ朝日系)、「#リモラブ ~普通の恋は邪道~」(日本テレビ系)など、数々の連ドラで主演を務める活躍が続いています。

 これまで、多くの作品に出演し、さまざまな役柄を演じてきた波瑠さん。宝泉さんは「作品に安定感をもたらす女優」と評します。

「放送中の『ナイト・ドクター』を見ていても感じますが、軸がブレない女優で作品に安定感をもたらしてくれる存在です。主役が安定していることで周りの役者が生きてきますし、この安定感は朝ドラ以降、顕著に見られ、数多くの作品で主演を張り続けてきたことで得られた力の一つではないでしょうか」(宝泉さん)

 宝泉さんは、波瑠さんの女優としての特徴についても言及しています。

「すんなりと恋愛しない、こじらせているような役柄が非常に似合い、加えて、風通しのいい、暑苦しくない演技が特徴であり、魅力でもあります。特に『あさが来た』では、元気でおっちょこちょいといった従来の朝ドラヒロインのイメージを継承しつつも、どこか涼しげで、年を重ねていく姿を淡々と演じ、年齢のわりに大人びた演技が印象的でした」

「デビュー当初はギャルっぽい役が多かったと本人も語っていましたが、素の自分とはかけ離れたキャラクターを演じることが多かったように思います。しかし、色白でショートヘアの現在の雰囲気になってからは、本人に似合う役柄にも巡り合えるようになり、このあたりの容姿やイメージの変化がポイントとなり、うまくマッチしたのではないでしょうか」

何でもこなせるオールラウンダー

 宝泉さんは、朝ドラ以降、各局のドラマで主演に起用されている背景について、局や枠のイメージにとらわれない幅広さと引き出しの多さが理由の一つと分析しています。

「局や枠のイメージにとらわれない幅広さと引き出しの多さは波瑠さんの魅力であり、各局で主演に起用され続ける理由の一つではないでしょうか。ホームランをガンガン打つというよりは、ヒットをコンスタントに重ねられるタイプで、局側も企画が組みやすく、何でもそつなく演じられる力に加え、安定した数字を取りたいときにすごく魅力的な女優であると思います」

「それを特に感じたのが昨年放送の『#リモラブ』です。コロナ禍の世界をストレートに描いた、ある意味、実験的なドラマだったにもかかわらず、主演としてしっかり形にした姿は見事でしたし、改めて、何でもこなせるオールラウンダーぶりを目の当たりしたような気がします」

 波瑠さんの近年の活躍ぶりから、今や、世代を代表する女優になったと宝泉さんは話します。

「キャリアも長く、ブレークまで少し時間はかかったものの、近年の活躍を見れば、今や世代を代表する女優の一人となりました。これまで、コツコツといろんなことをやってきたことが実を結んだように感じますし、この先、新たな代表作に巡り合えるのかどうかは注目の一つですが、波瑠さんの場合、何にでも染まれるだけに、むしろ、なくてもいいのかもしれません」

「役柄的には、コメディー色の強いキャラクターを今後、見てみたいと思っています。人によっては空回りしたり、うるさい感じになってしまうこともありますが、波瑠さんなら、暑苦しくない仕上がりになるはずですし、『#リモラブ』で見せたような、淡々とした感じで笑わせてくれるような役柄が似合うように感じています」

(オトナンサー編集部)

宝泉薫(ほうせん・かおる)

作家、芸能評論家

1964年岐阜県生まれ。岩手県在住。早大除籍後「よい子の歌謡曲」「週刊明星」「宝島30」「噂の真相」「サイゾー」などに執筆する。近著に「平成の死 追悼は生きる糧」(KKベストセラーズ)、「平成『一発屋』見聞録」(言視舎)、「あのアイドルがなぜヌードに」(文春ムック)など。

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