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番宣しないことが宣伝に! 中村倫也の“動画戦略”に学ぶビジネス成功のヒント

新型コロナウイルスの影響でSNSを始める芸能人が増えていますが、存在感を増しているのが、中村倫也さんです。

中村倫也さん(2019年6月、時事通信フォト)
中村倫也さん(2019年6月、時事通信フォト)

 新型コロナウイルスの影響でエンタメ界も大きな打撃を受けていますが、嘆いてばかりもいられないとアイデアを出し合い、各所で新しい試みが始まっています。

 新たにSNSを始めるタレントも多く、これまでは決して見る機会がなかったであろう、自宅や日常の様子を見ることができるのは一つの利点です。その中で存在感を増しているのが、俳優の中村倫也さんです。しかも、ここにはビジネスのヒントがたっぷり詰まっているのです。

YouTube再生回数1000万回超

 世の中で自粛生活が始まって間もなくの4月中旬から、所属事務所の公式YouTubeチャンネルで「中村さんちの自宅から。」が始まりました。ほぼ毎日配信され、1カ月で1000万回以上再生されています。特に料理動画が秀逸で、料理をしている姿から地に足のついた生活、丁寧な暮らしぶりが伝わってきます。

 若い女性はもちろん、料理で見せる生活スキルの高さは意外と男性からも受け入れられています。そして、まったりした話し方は年配の方でも十分ついていける聞きやすさで、誰が見てもそれぞれの楽しみ方があるのです。

 私は部屋のきれいさに心ひかれました。物を多く持たないように心がけているそうで、整理が行き届いているのです。特に驚いたのは「五徳」です。あの、火にかけるときに鍋などを置く金属の台です。彼は毎回、五徳を外して掃除をし、料理をするたびに五徳をセットするのです。タレントだけでなく、ライフスタイルアドバイザーとしても成功しそうです。

 これは一朝一夕にできるものではないと思い、取材してみると、「中村さんは10代でデビューしたけれど、ブレークしたのはここ数年。売れるまでに時間がかかっている。自炊歴も長いし、1人暮らしに慣れているので手際もいいのだろう」とのことでした。確かに、先輩から伝授されたレシピを大切に使い、時折話す日常のエピソードなど普通の感覚をしっかり持っているのが分かります。

 現在、各局のドラマ撮影はストップしているところが多く、途中から休止せざるをえなかったり、いまだに初回を迎えられない番組が数多くあります。そんな中、中村さんが主演するドラマは早くに撮影に入っていたこともあり、順調に放送されている数少ない番組です。5月に公開予定だった映画もあります。

 毎日動画を配信しているなら、番組宣伝の大チャンス!なのですが、この動画には一切それらしい内容は出てきません。視聴者からは宣伝しやすいようにキーワードを振られるのですが、見事にスルー。「番宣せんのかい!」と皆からツッコミが入る始末です。

 ところが動画を見ていると、放送中の「美食探偵 明智五郎」(美食家のイケメン探偵役)が見たくなり、ドラマを見ると自宅の料理動画が見たくなり、というループに入ってくるのです。あえて宣伝しないことで、何だか気になって番組を見てしまうという、これまでにはなかった新しい手法かもしれません。

 覚悟を決めて今の場所にいること、日々の暮らしを大事にすること、相手の存在を意識すること。この動画からは、私たちも応用できそうな、いくつもの成功の秘密が見えてきます。

(芸能リポーター 島田薫)

島田薫(しまだ・かおる)

芸能リポーター

東京都生まれ。帝京大学文学部卒業。在学中からイベント司会やナレーターのアルバイトに従事し、卒業後は大手損害保険会社に就職。その後、1年で退職し、テレビ・ラジオのリポーターに転身する。TBS系「モーニングEYE」、テレビ朝日系「スーパーモーニング」「ワイド!スクランブル」に出演。「ワイド!スクランブル」では、事件・芸能などのリポーターとして13年間、ほぼ毎日、取材活動を行う。フジテレビ系「バイキングMORE」、朝日放送テレビ「キャスト」、中京テレビ「キャッチ!」などに出演中。

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