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上西雄大監督、虐待抑止は「周りの人が目を向けること」から

映画「ひとくず」監督・脚本・主演の上西雄大さんに、虐待をテーマにした理由や、描く上で気を付けたことなどを聞きました。

上西雄大監督
上西雄大監督

 映画「ひとくず」で監督・脚本・主演を務める上西雄大さん。同作は、母親の恋人から虐待を受け、母親からは育児放棄されている少女・鞠(小南希良梨さん)のもとにある日、さまざまな犯罪を繰り返してきた男・金田(上西監督)が空き巣に入ります。幼い頃に、自身も虐待を受けていた金田は鞠の姿にかつての自分を重ね、鞠を虐待していた母親の恋人を殺してしまい…児童虐待や育児放棄をテーマにしたヒューマンドラマです。

 オトナンサー編集部では、上西監督に単独インタビューを実施。虐待をテーマにした理由や金田の人物設定、虐待を描く上で気を付けたことなどを聞きました。

「虐待からの救い」描きたかった

Q.虐待をテーマに映画を撮ろうと思った理由を教えてください。

上西監督(以下敬称略)「別の取材をしていたら、虐待の話が出てきたのが始まりです。それが重く、自分の心に残っていました。虐待を受けている子どもが救われる状況を想像したら、この物語が浮かびました。描きたかったのは虐待からの救いです」

Q.リサーチには時間がかかりましたか。

上西「最初に本を仕上げたとき、僕の想像でした。台本の裏付けや心情を描くという意味では、そこから3カ月くらい取材しました。撮影に入ってからもリサーチしていました」

Q.鞠を助ける金田を“アウトロー”にした理由は。

上西「虐待を知ったとしても守るものがあると、法律を犯してでも他人の子どもを助けることはできません。取材で聞いたのは、今の日本の法律では、子どもが助けてくださいと言わないと大人は動けません。アメリカでは警察官の判断でできますが、日本の警察は独自で判断できません。親が子どもに口止めし、子どもが何も言わないと児童相談所も助けられません。

そうなると、家族がいて社会的地位のある人が助けようとしても限界があります。地位もなく社会的に破綻していて、刑務所に入ろうが構わない人間であれば助けられるかもしれません。ただ、そういう人間は人のために何かするかというと難しい気がします。同じように虐待を受けていたら、自分を救う気持ちで助けることはありうるんじゃないかと思い、アウトローな人間にしました」

Q.金田を作る上で参考にした人はいますか。

上西「参考になるような人はいませんでした。自分がそういう環境だったらどう考えるか、もし刑務所に入っていたらどういう見方をするのか、と想像を膨らませました」

Q.金田を演じるのは難しかったでしょうか。

上西「大事にしたかったのは、金田が暴言や悪態をつくのは自分を守るためだということです。人に内面を見られるのを恐れ、むちゃくちゃな行動を取ったりすることが、自分を守ることと結び付くように演じたいと心掛けていました」

Q.虐待を描く上で、気を付けたことを教えてください。

上西「役者は自分をその環境に置いて演じます。でも、(子役の)小南希良梨さんを虐待を受けている子どもの環境に追いやってしまうと虐待になってしまうので、それはしないように気を付けていました。その都度、子どもに表現してもらうべきことを説明して演じてもらいました」

Q.虐待をなくすには、どうしていく必要があると思いますか。

上西「当事者は抜け出すきっかけをつかめないし、見いだせないと思うんですね。周りがきっかけを作ることだと思います。子どもが泣いていたら、その子の親と話してみるとか、周りの人が目を向けることが抑止になると相談所の先生も言っていました。虐待はおぞましいから目をそらしますが、それも虐待がなくならない原因だと思うので、目を向けていただけたらと思います」

Q.今回、一番の挑戦だったことを教えてください。

上西「虐待は悲しいテーマじゃないですか。それをテーマに置くことで、暗い映画になったり、そういう気持ちになると、虐待について社会に問うことができないと思いました。きちんとしたドラマがあり、人間の温かみがあり、見終わった後、感動できるかどうかが挑戦でした。悲しいテーマのまま終わってしまえば、一番駄目だと思っています」

 映画「ひとくず」は3月14日から全国公開。

(オトナンサー編集部)

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