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津田寛治が考える“尊厳死” 本質は医師と患者のコミュニケーション

映画「山中静夫氏の尊厳死」主演の津田寛治さんに、尊厳死の考え方などを聞きました。

津田寛治さん
津田寛治さん

 映画「山中静夫氏の尊厳死」で主演を務める俳優の津田寛治さん。同作は、末期の肺がん患者の山中静夫(中村梅雀さん)は、医師の今井(津田さん)が勤務する信州の病院にやってきます。今井は付き添う家族の負担も考え、静岡の病院での治療をすすめますが、余命を宣告された山中は「生まれ育った信州の山を見ながら死にたい」と希望する…南木佳士さんの同名小説を映画化した作品です。

 オトナンサー編集部では、津田さんにインタビューを実施。尊厳死の考え方や役作り、仕事選びのポリシーなどを聞きました。

共演者の芝居を受けて「表現しない」

Q.原作小説は読まれましたか。

津田さん(以下敬称略)「リアルで本当に深いなと思いました。好きなタイプの小説です。読者に分かりやすくというより、作家自身の日記のようなタイプの小説でした。病院の世界を専門的なまま書いているのが印象深かったし、お医者さんも人なんだというところが強調されていてそこに好感が持てましたね。

脚本を読んでから原作を読みましたが、脚本もうまいと思ったし、物語っぽく書くのではなく、お医者さんの日記みたいなニュアンスを残していました」

Q.尊厳死について、出演する前後で考え方に変化はありましたか。

津田「調べてみると、亡くなる患者さんの意思を尊重するということでした。映画で描かれているのは、意思すら伝えられなくなったときにどうするかというところで、その場合は遺族の発言が重要になります。

今井は、意思を伝えてこない患者さんからも意思をくみ取れるくらいまで、普段からコミュニケーションを取っています。それって尊厳死の本質なんだなと思いました。意思表示できなくなってしまった患者さんから意思をくみ取るには、元気があるときの患者さんとのコミュニケーションが大事だということを学びました」

Q.中村梅雀さんとの共演の感想をお願いします。

津田「素晴らしいの一言です。梅雀さんの演技がないと僕もあんな演技はできませんでした。梅雀さんの芝居を見たとき、涙が止まりませんでしたが、村橋明郎監督からは『今井は泣かないですからね』と注意されました。それくらい真に迫った、山中静夫の人生が浮かんでくるようなお芝居をされていました」

Q.今回、役作りはどのようなことをされましたか。

津田「今井は受ける役だと思っていたので、現場で相手の芝居がないことにはどうにもなりません。自分が過去に演じた医者の役をベースにしつつ、あまりドタバタしない、変な緊張感を持たないように意識しました。患者との距離感も近すぎず離れすぎず、温かすぎず冷たすぎず、これから旅立つ人への距離の持ち方は、プロに達していないといけないと思いましたね」

Q.一番の挑戦はどんなことでしたか。

津田「受けの芝居です。共演者の芝居をとにかく受けて表現しない。受けて感じるだけにとどめることです。表現をせずに、お芝居が成立するか不安はありました。誰に何を言われてもいいから、梅雀さんやほかの方々がキラキラ見えてくれたら成功だから、僕は全部受けようと思いました」

Q.仕事選びのポリシーはありますか。

津田「俳優の仕事の捉え方ってそれぞれだと思うんですが、俳優は選ぶのではなく、目の前にきた仕事をどう料理するかが大事だと思います。こういう作品しか出ない俳優なんだとか、そんなところで希少価値を上げるのは好きではありません。

画家と同じで、その画家が何を描いたかより、その題材をどんな筆使いをしてどんな色で描いたか、過程に価値を感じるので、俳優もどんな作品に出るかより、どんなふうに役を捉え、フィルムに焼き付けたかの方が大事です」

Q.演じるときに意識していることはありますか。

津田「演じることに慣れないことですね。お芝居が安定しないようにしています。キャリアを積むと分かってくることがあります。それを意識して、なるべく『初めて経験する』と念頭に置いて演じるようにしています。

舞台だと、その感覚より段取りや共同作業が大事になります。舞台でアップになろうと思うと、前に出ないといけません。映像の場合は、いろいろな人がそれを受け持ってくれるので、役者は物語により集中できます」

 映画「山中静夫氏の尊厳死」は全国公開中。

(オトナンサー編集部)

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