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大仕掛けが続く「あなたの番です」、ピンチ乗り越え2クール攻略へ!

テレビが改編期に突入する中、2クール放送の「あなたの番です」が注目されています。序盤に低迷し、打ち切りもささやかれた同作が、ここに来て存在感を放っているのはなぜでしょうか。

田中圭さん(2018年10月、時事)
田中圭さん(2018年10月、時事)

 ほとんどの春ドラマが終わり、テレビは改編期に突入。通常は連ドラの放送がない時期ですが、今回は2クール放送の「あなたの番です」(日本テレビ系)があり、話題を集めています。

 日本テレビが2クールの連ドラを放送するのは25年ぶりであり、しかも、「あな番」は「相棒」「科捜研の女」(テレビ朝日系)のような一話完結形式ではなく、状況がめまぐるしく変わる長編ミステリー。発表時は不安視され、放送開始後も「やはり無理がある」「これで2クール持つのか」などの批判が多く、視聴率も1話8.3%、2話6.5%、3話6.4%、4話7.1%、5話6.5%、6話6.3%、7話6.4%、8話6.7%(ビデオリサーチ、関東地区)と、前期の「3年A組-今から皆さんは、人質です-」、前々期の「今日から俺は!!」から大幅に下がってしまいました。

 しかし、6月に入ると「目が離せなくなってきた」「結局、一番気になる」などの声が増え、9話8.0%、10話7.9%、23日に放送された特別編8.1%と、クチコミ、視聴率ともに上昇。間もなくスタートする夏ドラマの存在がかすんでしまうほどの存在感を放っているのです。

「低迷したまま打ち切られるだろう」とまでうわさされた同作は、なぜピンチを脱し、最大の話題作となったのでしょうか。

視聴者予想を上回る変幻自在の脚本

 最大のポイントは、制作陣による多彩かつ大胆な仕掛け。

 当初は「同じマンションの住人たちが交換殺人ゲームをする」という刺激的なテーマ設定と、「原田知世と田中圭が年の差夫婦を演じる」ことが強調されただけで、視聴者の関心度は高くありませんでした。

 しかし、毎週さまざまな方法で誰かが殺され、しかも「予想外の人が命を奪われる」という意外な展開が続き、視聴者は徐々にヒートアップ。手塚菜奈(原田知世さん)の前夫は、手塚翔太(田中圭さん)が「アニキ」と慕う細川朝男(野間口徹さん)で離婚が成立していないことが発覚し、さらに「殺されてしまう」という秘密やうそを絡めたミステリーの王道から、久住譲(袴田吉彦さん)が「俳優の袴田吉彦に似ていることで、不倫スキャンダルの悪影響を受けている」などのトリッキーな設定まで、変幻自在の脚本で視聴者を楽しませています。

 極めつきは、第1章の最後(10話)で、菜奈が殺されてしまったこと。視聴者の多くは、「最終的にダブル主演のどちらかが犯人である可能性はあっても、まさか中盤の段階で殺されてしまうとは…」と衝撃を受けました。衝撃はそのまま犯人予想の熱気につながり、かつてないほどの盛り上がりを見せています。

 1990年代まで、「あなたの番です」のような長編ミステリーは連ドラの花形であり、多くのオリジナル作が放送されましたが、21世紀に入ると激減。特に2010年代に入ってから、湊かなえさんらの人気作家が手がけた小説の実写化以外は、ほとんど放送されなくなり、ミステリーは一話完結ばかりになりました。

 だからこそ、長編ミステリーであり、しかも結末を誰も知らないオリジナルの「あなたの番です」は、往年のドラマフリークにとって「待ってました」、若年層にとって「見たことがない新鮮なもの」という希少価値の高い作品となっているのです。

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木村隆志(きむら・たかし)

コラムニスト、テレビ解説者

雑誌やウェブに月間20本強のコラムを提供するほか、「週刊フジテレビ批評」などに出演し、各局のスタッフに情報提供も行っている。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもあり、新番組と連ドラはすべて視聴するなど1日のテレビ視聴は20時間超(同時含む)。著書に「トップ・インタビュアーの『聴き技』84」「話しかけなくていい!会話術」など。

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