「ハミ乳パパラッチ」でオリコン1位! 手島優の魅力は圧倒的な「安さ」
手島優さんが「NYOUTUBER(手島優)」名義でリリースした楽曲「ハミ乳パパラッチ」が思わぬヒット。手島さんの「安さ」を前面に出す戦略が奏功したと筆者は分析します。

タレントでグラビアイドルの手島優さんが、音楽界に激震を起こしています。「NYOUTUBER(手島優)」名義でリリースした楽曲「ハミ乳パパラッチ」が、オリコンミュージックストアのデイリーシングルダウンロードランキング(5/26)で1位を獲得。さらに、週間ランキングと月間ランキングでも1位に輝きました。米津玄師さんや、あいみょんさん、菅田将暉さんといったライバルたちを抑えて、前代未聞の快挙を成し遂げました。
その大ヒットの立役者の一人が有吉弘行さんです。有吉さんのラジオ番組「有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER」(JFN)に手島さんがゲスト出演した際、リリース未定だったこの楽曲が流されました。有吉さんはこれを大絶賛。放送をたまたまオリコンの担当者が聞いていたことから急きょ、オリコンミュージックストアでの配信が決定し、番組リスナーが興味本位で楽曲を購入したことで、旬を過ぎたグラビアアイドルがオリコン1位に上り詰めるという「令和の珍事」が起こりました。
高嶺の花とは程遠い“安っぽさ”
テレビタレントとしての手島さんの売りは、「安」という漢字一文字に集約されます。とにかく安い。グラマラスな体型でセクシーさを売りにしているのですが、高嶺の花という感じは一切なく、どこか安っぽさが拭えません。だからこそ、バラエティー番組で下ネタを披露しても生々しさがなく、笑いにつながりやすいのです。
手島さんが度々出演している深夜のバラエティー「ゴッドタン」(テレビ東京系)では、彼女が“デリヘル嬢”扱いされるお決まりの流れがありました。おぎやはぎ、劇団ひとりさんらレギュラー陣が、手島さんのマネジャーに予約の問い合わせをしたり、オプションの有無を確認したりするのです。マネジャーは冷静に「全く問題ございません」と返して手島さんがツッコミを入れます。
テレビタレントを“デリヘル嬢”扱いするという禁断の悪ふざけが許されるのは、芸能界広しといえども手島さんただ一人でしょう。
手島さんはイメージが安いだけでなく、仕事に対する意識が低いという意味では、「安易」で「安直」でもあります。6月4日放送の「ロンドンハーツ」(テレビ朝日系)では、演技に自信があるからドラマに出たいと主張していましたが、舞台には興味を示しません。仕事がなくて崖っぷちに追い込まれているにもかかわらず、仕事をより好みする姿勢を崩していなかったのです。さらに、手島さんの本音を聞き出すことが企画の趣旨だったのですが、なかなか本音を漏らしません。その勘の悪さも含めて、全体的にどこかズレていました。
手島さんが不器用なのは、もともと栃木県の田舎町でのんびりと育ち、人見知りで純朴なところがあるからでしょう。気取っているところがなく、気取り方も分かっていません。バラエティーに出るタレントには、打てば響く反応の良さが求められるものですが、そういうことがどうしても苦手なのでしょう。
「ハミ乳パパラッチ」は、そんな手島さんの「安さ」をあえて前面に打ち出しています。「ハミ乳 ハミ乳 マジ卍」などという歌詞も意味不明で、YouTubeに一部が公開されているミュージックビデオ(MV)も、ペラペラの背景に合成された手島さんが薄笑いを浮かべながら踊るというものです。
作り手側は、タレントとしての手島さんの武器が「安さ」であることを踏まえて、その武器の威力を高めることだけに注力したのでしょう。結果的に、世間にも想定外のインパクトを与えることになりました。
テレビタレントというのは本来、テレビに出ているというだけで希少価値のある特別な存在だと見なされます。高値が付くからこそ、多くの人に求められて市場に出回るのです。しかし、手島さんは手の届きそうな「安さ」のみで世に出てきました。100円ショップやファストファッションが台頭するデフレ経済の時代を象徴する“激安タレント”なのです。
グラビアの仕事は年齢を重ねると、若い世代と張り合っていくことが難しくなりますが、手島さんの「安さ」という魅力は古びることがありません。これを機に、さらに開き直ってどんどん「安い笑い」を世の中に提供してほしいと思います。お笑いのレベルが高くなり、プロの芸人による「高い笑い」ばかりが出回るこの時代で、手島さんの何も考えずに楽しめる「安さ」は、むしろ貴重なものだからです。
(お笑い評論家 ラリー遠田)
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