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木曜ドラマに“明暗” フジ「グッド・ドクター」がテレ朝「ハゲタカ」を逆転した理由

感動する態勢を整えられる「グッド・ドクター」

 2つ目の理由は、物語が感情移入しやすいかどうか。

「ハゲタカ」は、「バルクセール」「ゴールデンパラシュート」「ホワイトナイト」といった経済用語が飛び交うなど、専門性が高く、難解な上にシビアな作品。前述したように、テレ朝・木9は刑事・医療モノが多く、ビジネスが舞台の作品はほとんどありません。脚本もシンプルな勧善懲悪で爽快感のあるものが多いため、同時間帯の視聴者層とのマッチングには疑問が残ります。

 一方、「グッド・ドクター」は、さまざまな設定を生かして感動を誘うストレートな物語。驚異的な暗記力を持つ一方、コミュニケーション能力に障がいがあるサヴァン症候群の主人公、かわいらしくも、か弱き小児外科の患者たち、その両者をおとしめようと暗躍する悪人たち……人物相関図が分かりやすく、視聴者は感動する態勢を整えやすいのです。

 また、「山崎賢人さんの演技がヤバイ」「少女の演技に泣かされた」などとネット上でポジティブなクチコミがしたくなるのも強みの一つ。事実、1話が放送された段階で、ポジティブなクチコミが一気に広がり、ネットメディアも追随して記事を作り、早い段階で「面白い作品」としての評価が定着しました。

 現時点では明暗が分かれ始めていますが、まだ中盤戦に突入したばかりであり、今後の行方は分かりません。どちらもキャストとスタッフの気合を感じる力作だけに、最後まで良い意味で競い合っていくことを期待しています。

(コラムニスト、テレビ解説者 木村隆志)

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木村隆志(きむら・たかし)

コラムニスト、コンサルタント、テレビ解説者

雑誌やウェブに月間30本前後のコラムを寄稿するほか、「週刊フジテレビ批評」などに出演し、各局のスタッフに情報提供も行っている。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアー、人間関係のコンサルタントとしても活動中。著書に「トップ・インタビュアーの『聴き技』84」「話しかけなくていい!会話術」など。

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