自閉症の息子、「七五三」でかんしゃく それでも母が“写真”を撮りたかったワケ
自閉症の息子を育てる女性ライターが、息子の七五三の思い出について、紹介します。

ライター、イラストレーターとして活動するべっこうあめアマミさんは、知的障害を伴う自閉症がある8歳の息子と、きょうだい児(障害や病気を持つ兄弟姉妹がいる子ども)の5歳の娘を育てながら、発達障害や障害児育児に関する記事を執筆しています。
11月は子どもの成長を祝う「七五三」の季節ですが、発達に課題があるお子さんの中には、お参りや写真撮影の雰囲気が苦手なお子さんもいるのではないでしょうか。今回は、息子の七五三の思い出についてお伝えします。
3歳の頃は大丈夫だったのに…
男の子は3歳と5歳のとき、女の子は3歳と7歳のときに、それぞれ七五三で神社などを参拝するのが一般的です。
息子はちょうど諸々の事情が重なったこともあり、3歳、5歳、7歳のすべてのときに写真店で写真を撮りました。
息子が3歳の七五三のときは、問題なく七五三の写真を撮ることができました。そのため、5歳(満年齢では4歳)のときも、うまく撮影できるだろうと思っていました。しかも、その日は写真撮影の前のお参りを問題なく終えることができたため、私は油断していたのかもしれません。
ところが、息子は撮影時に大かんしゃくを起こしたのです。予想外の事態に私はうろたえてしまったほか、今ほど息子の障害を受け入れることができていなかったため、息子の発達が後退してしまったように感じ、大きなショックを受けました。ちょうど、休日で人が多かったことや、待ち時間が長かったことなどもよくなかったのだと思います。
もともと息子は普段からそんなに暴れるタイプではなく、写真も目は合わさないにしても問題なく撮れる子です。しかし、その日は1人の写真は何とか撮れても、娘とのツーショット写真や家族写真がうまく撮れず、困り果ててしまいました。
それでも、私には息子の写真をどうしても撮りたかった理由がありました。
中身が幼いまま体が大きくなる息子の将来に不安
息子は4歳のときに、知的障害を伴う「自閉スペクトラム症」と正式に診断されました。当時の私は、表面上は何とか息子の障害を受け入れていましたが、実際は受け入れ切れていなかったのだと思います。
4歳の息子は発達が遅れていても、しゃべることができなくてもかわいいけれど、この状態でもっと体格が大きくなったら、大人の姿になったら、それでも私はこの子をかわいいと思えるのだろうか…。そんな不安を抱えていたのです。
これから先、中身は乳幼児のまま体だけがどんどん大きくなっていくであろう息子。当時の私はそんな未来も息子をかわいいと思えるように、今のかわいい4歳の息子の姿をなんとしてもとどめたいと躍起になっていました。だからこそ、息子がかんしゃくを起こしても、写真を撮りたいと必死だったのです。
そして、そんなぐちゃぐちゃな感情のまま、かんしゃくを起こして泣く息子とともに私も泣きました。それが、息子の七五三の思い出です。
息子は何歳になってもかわいい
時がたち、息子は8歳になりました。背もずいぶん伸びて、あの頃よりだいぶ大きくなりました。
5歳の七五三のときに抱えていた「未来も息子をかわいいと思えるのか」という不安ですが、これは今では杞憂(きゆう)だったと分かります。8歳になっても息子はかわいいし、たぶんずっと私にとってはかわいい息子であることに変わりないと思うからです。もちろん5歳の七五三で撮った4歳の息子の写真もかわいいけれど、今の息子だってかわいいです。
息子はいまだに言葉をほとんど話せず、4歳の頃よりも周囲の人の違和感は大きくなったと思いますが、親の私の心境が変化していったのだと思います。
もちろん、今でも落ち込むことはありますが、いつしか息子に障害があることは、私にとってごく自然なこととなっていきました。
最初から理想的な親になれなくて当然
子どもに障害があると、親は世間からさまざまな対応や、理想的なあり方を求められがちです。しかし、今でこそ子どもの障害に十分な理解があるように見える親御さんも、恐らく最初からそうだったわけではないはずです。皆さん、最初はなかなか障害を受け入れられず、思い悩んだ時期があったのではないでしょうか。
それは知識量や性格の問題ではなく、子どもを愛しているからこそ生じる感情だと思います。特に、子どもが3~4歳のときは、診断がつく時期であったり、居場所を得にくい時期であったりして、親も1番大変な時期です。
最初から理想的な親にはなれないし、障害受容ができていなくて当たり前。だから、もしこの記事を読んでいる人の中にそういう状況にある人がいたら、最初から理想を求めて落ち込まなくていいのだと伝えたいと思います。
そして、それ以外の人たちにはどうか、親だって障害受容には時間がかかることを理解していただきたいと思います。そのことで障害を持った人やその家族に寛容な社会となれば、障害を持った子の親としてうれしく思います。
(ライター、イラストレーター べっこうあめアマミ)
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