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小芝風花、金髪ワイルド系→黒髪おどおど系 「転職の魔王様」で実感する“カメレオン俳優ぶり”

振り回されキャラからワイルド&クールも

小芝風花さん
小芝風花さん

 小芝さんは、2012年に連続ドラマ「息もできない夏」(フジテレビ系)で俳優デビューを果たしました。その2年後、実写映画「魔女の宅急便」で主人公のキキ役に抜てきされ、注目を集めました。「魔女の宅急便」といえば、スタジオジブリ制作のアニメ映画が興行収入36億円越えの大ヒット。子どもから大人まで幅広い世代に愛される作品の実写映画ということで、かなりのプレッシャーがあったことは想像に難くありません。しかし、みなぎるフレッシュ感とコロコロと変わる表情で見事に愛されるキキを作り上げました。

 以降、多数のドラマや映画に出演するようになった小芝さん。着実にキャリアを積み上げ、ついに転機となる代表作と出会います。それが2019年に放送された主演ドラマ「トクサツガガガ」(NHK総合)です。同作で小芝さんは特撮オタクのOL・仲村叶を演じ、コメディエンヌとしての才能を開花。周囲に特撮好きをひた隠しにしながらも、ついついオタクしぐさが出てしまう叶の姿はおかしくも一生懸命で応援したくなるキャラクターでした。

 この“滑稽ないとおしさ”は小芝さんの代名詞とも言え、その後も「美食探偵 明智五郎」(日本テレビ系)や「妖怪シェアハウス」シリーズ(テレビ朝日系)、「彼女はキレイだった」(カンテレ・フジテレビ系)など、周囲に巻き込まれがちなヒロイン役でその魅力が大いに生かされました。

 昨年放送された連続ドラマ「霊媒探偵・城塚翡翠」シリーズ(日本テレビ系)で、また新たな一面を見せてくれました。同作は、俳優の清原果耶さん扮(ふん)する“霊が視える”探偵の翡翠があらゆる事件を解決していくミステリー。小芝さんは、お嬢様で世間知らずな翡翠を公私ともに支える“お姉さん的存在”のアシスタント・千和崎真を演じました。ほかのキャラクターに振り回される役の演技とは違い、“お姉さん的存在”のキャラクターをクールさを際立たせた落ち着いた演技で表現し、技術の幅広さを感じさせてくれました。

 沙村広明さんの漫画を実写化した「波よ聞いてくれ」では、さらにイメージをガラリと変え、荒々しさとやさぐれ感満載のヒロイン・鼓田ミナレを熱演しました。髪を金髪に染め、ワイルドなファッションに身を包んだビジュアルで、キュートなイメージだった小芝さんに対し、当初、原作ファンからキャスティングについて「意外!」という声が多く挙がっていたと思います。

 ミナレは持って生まれた滑舌の良さと、頭の回転の速さで飛ばすマシンガントークでパーソナリティーとしての才能を開花させていくキャラクター。これを果たして実写ドラマで表現できるのかという不安要素もありました。しかし、小芝さんは得意なコミカルな演技と見事なせりふ回しでこうした課題をクリア。作中のラップやアクションシーンも難なくこなし、2021年放送の連続ドラマ「モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~」(テレビ朝日系)で顕著だった繊細な心理表現も光るなど、小芝さんの多才ぶりをまざまざと見せつけられました。

 ミナレを演じている小芝さんと、「転職の魔王様」で千晴を演じている小芝さんは、あまりにも違いすぎて同一人物とは到底思えません。同世代の俳優の中で、随一の“カメレオン俳優”といえるほどのめざましい活躍を見せています。ドラマファンの中には、「彼女が出ている作品なら間違いない」と大きな信頼を寄せている人も多いことでしょう。

 今後もどんどん進化していくであろう“俳優・小芝風花”の活躍から目が離せません。

(オトナンサー編集部)

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苫とり子(とま・とりこ)

エンタメ系ライター

1995年、岡山県生まれ。東京在住。学生時代に演劇や歌のレッスンを受け、小劇場の舞台に出演。IT企業でOLを務めた後、フリーライターに転身。現在は「Real Sound」「AM(アム)」「Recgame」「アーバンライフメトロ」などに、エンタメ系コラムやインタビュー記事、イベントレポートなどを寄稿している。

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