【いまさら聞けない法令用語】「過料」と「科料」はどう違う? 「罰金」との違いは? 弁護士が解説
ニュースや新聞でよく見聞きするものの、実はよく分かっていない法令関連用語について、弁護士に聞いてみました。
事件に関する報道だけでなく、日常生活上でも耳にすることのある法令用語の一つに「過料」があります。また、よく似た用語として「科料」という言葉が使われることもあります。「かりょう」と読む同音異義語である点、また、金銭を納付しなければならない点が共通しているこの両者には、どんな意味と違いがあるのでしょうか。また、「罰金」とはどう違うのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。
過料は「行政罰」、科料は「刑罰」
Q.まず、「過料」という言葉の意味について教えてください。
佐藤さん「『過料』とは『行政罰』であり、行政上の秩序維持のために、違反者に対して制裁として金銭的負担を課すものです。
例えば、転入・転出時の届け出を、正当な理由なく怠れば『5万円以下の過料』に処される可能性があります(住民基本台帳法52条2項)。また、路上喫煙を禁じる条例に違反した場合に過料を科す自治体もあります(千代田区生活環境条例など)。
過料の上限は各法律で定められており、例えば『会社法』では、過料の金額が『100万円以下』となっています(会社法976~979条)。法律で定められた金額の範囲内で、裁判所が事例ごとに具体的な過料金額を判断します。なお、地方自治体の条例における過料は『5万円以下』でなければなりません(地方自治法14条3項)。
過料の徴収は、検察官が行います。検察庁から通知が来たら、その指示に従って支払うようにしましょう。徴収された金銭は、国が過料を科した場合には国庫に納められ、地方自治体が過料を科した場合には自治体の収入になります」
Q.次に、「科料」という言葉の意味について教えてください。
佐藤さん「『科料』とは、1000円以上1万円未満の金額を支払わせる『刑罰』です(刑法17条)。例えば、軽犯罪法違反や侮辱罪(刑法231条)、暴行罪(刑法208条)など、比較的軽微な犯罪に対する刑罰の一つとして定められています。
科料は刑罰なので、完納することができない場合、『1日以上30日以下の期間、労役場に留置する』と定められています(刑法18条2項)。『労役場留置』とは、刑事施設に収容され、科料の金額がたまるまで強制的に働かされることをいいます。
なお、科料の執行も、過料の徴収と同様に、検察官が行います。納付された科料は国庫に帰属し、国の予算として使われることになります」
Q.ずばり、「過料」「科料」の違いとは何でしょうか。
佐藤さん「双方の大きな違いは、『行政罰か、刑罰か』という点でしょう。先述したように、過料は行政罰であり、犯罪に対して科される刑罰ではありません。そのため、過料に科された事実は前科にはなりません。また、過料を支払えなかった場合、労役場留置がなされることもありません。
一方、科料は刑罰なので、たとえ軽微な犯罪であったとしても、有罪となり、科料を科されれば前科がつきますし、支払えなければ、労役場留置の処分がなされることもあります」
Q.ちなみに、「罰金」とは何ですか。「過料」「科料」との違いはあるのでしょうか。
佐藤さん「『罰金』とは、1万円以上の金額を支払わせる『刑罰』です(刑法15条)。過料と罰金の違いは、『行政罰か、刑罰か』という点です。
一方、ともに刑罰である科料と罰金の違いは、『金額』です。先述したように、科料は1000円以上1万円未満、罰金は1万円以上をそれぞれ支払わせる刑罰となります。なお、罰金も、刑を減軽する場合においては、1万円未満に下げることができます(刑法15条ただし書き)」
Q.「過料」や「科料」に関連する、特徴的な過去の事例を教えてください。
佐藤さん「新型コロナウイルスに関連し、特措法(新型インフルエンザ等対策特別措置法)の改正を巡って、違反した場合の罰則を刑罰にするのか、行政罰である『過料』にするのか、議論がなされました。
結局、飲食店が休業や営業時間短縮などの命令に応じない場合、『過料』とすることに決まり、2021年7月、全国で初めて、改正特措法に基づき、緊急事態宣言中に時短要請に応じなかった飲食店4店に対し、各25万円の過料が決定され、話題になりました」
(オトナンサー編集部)
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