三菱電機新入社員の死に思う「自殺をめぐる訴訟に勝者はいない」
三菱電機の新入社員がいじめを理由に自殺したとされる一件は、両親が会社に損害賠償を求めているようです。労災訴訟に備える企業向け保険のコンサルティングを行う筆者が、これら自殺に関する訴訟について考えます。
昨今、急増している労災訴訟
三菱電機の新入社員が、上司や先輩からのいじめを苦にして自殺。ご両親が同社に対し1億1768万円の損害賠償を、労働基準監督署に労災認定をそれぞれ求めている、との報道がなされています。
筆者は、こうした労災訴訟に企業が備える保険(賠償を肩代わりする商品)のコンサルティングを行っています。つまり「企業側に立つ人間」ですが、昨今急増している労災訴訟の事例を見ていると、企業側に責任があるものから従業員側に非があるものまで、実にさまざまです。
前者は、長時間労働やパワハラ、セクハラ、リストラの強要などが原因で「精神疾患を発症した」として労災や賠償を求めるもの。一方、後者は日ごろから職務に不真面目で、遅刻や欠勤が続き、穏便に注意しても激高、しばらく休職が続いた後「会社のせいでうつ病になったので訴える」と連絡が来るといったケースで、実はこちらのパターンも意外に多いのが実情です。
裁判では、双方が言い分を主張しますが、ここで一つの基準となるのが「労災認定」で、認定されれば企業側の責任、されなければ個人の責任とある程度の判断基準になります。少しややこしい話ですが、労災と賠償は原則的に別の話。たとえば、労災認定はされなくても企業側の責任を認め、賠償命令が下ることもあるため、「労災認定=企業の責任」と割り切れない部分もあります。労災と賠償は“概ね”関係するものといえます。
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