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【漫画】一人一人違う生徒を学校の“枠”に押し込むことへの違和感 「親として感謝」

小学校教諭として考えたことを描いた漫画が話題に。学校生活には、時間やルールなどの“枠”が存在すると考える作者ですが…。

漫画「教室の枠」のカット=ほたろう(hotarouenikki)さん提供
漫画「教室の枠」のカット=ほたろう(hotarouenikki)さん提供

 小学校教諭として考えたことを描いた漫画「教室の枠」がSNS上で話題となっています。学校生活には、時間やルールなどの“枠”が存在すると考える作者。一人一人、個性の異なる生徒を同じ枠に押し込むことに違和感を覚えつつ、枠がなければ成り立たない現状があることを認めて…という内容で「すてきな感覚」「こういう先生がいてほしかった」「親として感謝します」などの声が上がっています。作者の女性に聞きました。

“枠”をやわらかくする意識を持とう

 この漫画を描いたのは、小学校教諭のほたろう(ペンネーム)さんです。インスタグラムツイッターでイラストエッセーなどを発表しています。

Q.漫画を描き始めたのは、いつごろからでしょうか。

ほたろうさん「3年ほど前からです。最初は、自分がこの仕事で学んだことや感じたことを絵日記のようにノートに書いているだけだったのですが、あまり続かず…。『SNSで誰かの反応をもらいながらだと続けられるのではないか』とインスタグラムのアカウントを作って投稿し始めました」

Q.今回の漫画を描いたきっかけは。

ほたろうさん「この漫画を描いた頃、自分のクラスでトラブルがありました。それに対応したとき、『学校や教室の決まりや先生など大人の理想に縛られて、居心地の悪い思いや悲しい思いをしている子がいたんだな』と気が付きました。また、『私自身が、子どもたちを取り囲んでいる窮屈な決まりや大人による理想の押し付けのようなものを、あまり感じていなかったんだな』とも思いました。

集団での生活や社会性を身につけていくという意味でも、まったく決まりがなくていい、自由にすべきとは思いません。ただ、その決まりが強すぎたり、狭すぎたり、納得できない押し付けばかりだったりすると、それは固い枠のようになり、中にいる人はやはり苦しい。さらに、私の立場で枠に頼ってしまうと、その子自身を素直に見ることができなくなってしまう。

だから、これからは『枠はあると知っているけど、やわらかくする意識を持とう』と思いました。それをまとめたのがこの投稿です」

Q.「枠をやわらかくする」とは。

ほたろうさん「具体的には、『苦しさに気が付くこと』『教室が自分らしくいられる場でもあること』『自分の理想に子どもたちを当てはめようとしないこと』だと思います」

Q.子どもたちから、枠に対する違和感やプレッシャーについて相談されることもあるのでしょうか。

ほたろうさん「あります! でも、ケース・バイ・ケースです。苦しさを感じているなら、枠を変えたり、本人が乗り越えるための方法を一緒に実践していこうと促したりします。

『枠を壊したい』『枠から出たい』と言う子に対してはまず、『なぜ壊したい、出たいと思うくらい苦しいのか』を分析します。その子の様子を見たり、聞いたり、直接話したりしながら、必要なら枠を見直したり、その子が苦しさを乗り越えるための対応を実践したりすると思います」

Q.教室以外にも枠はあると思いますが、ご自身がその中にいるときはどのような心構えで過ごしているのでしょうか。

ほたろうさん「自分で何とかできる枠と、できない枠があると思います。自分で何とかできず、その枠の中にいて苦しいときは『その枠から出られないか』『出られなくても広げることはできないか』と考えて行動したいと思っています。

より具体的には、枠の中にいるしかないときでも何とか、自分がやりたいと思ったことがしたい。自分らしさを出していきたい。そのためにはどうしたらいいかなと考えて、動きたいという感じです」

Q.先生として生徒に接するとき、特に注意していること、心がけていることを教えてください。

ほたろうさん「立場は先生ですが“人”対“人”であるということを忘れないでいたいと思っています」

Q.この作品に限らず、イラストエッセーの形で考えを整理したり、誰かに伝えたりすることでご自身に影響はありますか。

ほたろうさん「描くことで、もやもやしていたことが整理されて気持ちが落ち着き、具体的に今、自分が何をすべきかも見えてくると思います。そして、描いたことをよく覚えていて、仕事でもそれを意識できることが増えました。

誰かに伝えて共感していただけると純粋にうれしいですし、悩むことの多い仕事ですが、励まされています。また、コメントでアドバイスや意見を頂けるのもプラスです。実際に指導で試したり、紹介していただいた本を読んだりして勉強になっています」

Q.漫画について、どのような意見が寄せられていますか。

ほたろうさん「『自分が言いたかったことを絵にしてくれてすっきりした!』など共感のコメントを頂きました。DMも何件か頂きました」

Q.創作活動で今後、取り組んでいきたいことは。

ほたろうさん「自分が学んだこと、考えたことが、自分のためだけでなく誰かの役に立ったらいいなと思っています。そんなインスタグラムのアカウントになればうれしいです。見てくださる方も増えているので、教育や子育てに役立ちそうな情報や道具、支援の方法など具体的な内容も描いていきたいです」

(オトナンサー編集部)

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