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フレンチ、一人飯、家レシピ…秋の「食ドラマ」はなぜこれほどウケた?

「グランメゾン東京」「孤独のグルメ」「新米姉妹のふたりごはん」など秋の「食ドラマ」4作がそろって支持されました。好調の背景を解説します。

「孤独のグルメ」主演の松重豊さん(2017年10月、時事)
「孤独のグルメ」主演の松重豊さん(2017年10月、時事)

 今秋スタートの新作ドラマで視聴率トップを快走する「グランメゾン東京」(TBS系)を筆頭に、ネット上には、4つのグルメドラマを褒めたたえる声が飛び交っています。

 その4作とは、型破りなシェフが世界最高のレストラン作りに挑む「グランメゾン東京」、さまざまな町で一人飯を楽しむ「孤独のグルメ」(テレビ東京系)、美少女姉妹が家で料理する「新米姉妹のふたりごはん」(同)、給食マニアの教師が主役の「おいしい給食」(TOKYO MX、テレビ神奈川、BS12トゥエルビほか)。

 主人公や主演俳優、グルメの扱い方、物語性の割合、放送時間帯などが異なる4作が、なぜ、そろって好意的な声を集めているのでしょうか。

多彩なコンセプトで飽きさせない

 もともと「食欲の秋」という言葉が浸透しているように、テレビ局にとって、秋はグルメを扱いやすい季節。情報番組やバラエティーで秋の味覚をピックアップした特集が放送されるほか、ドラマも例外ではないのです。

 各局の制作サイドとしても、「ただグルメドラマを作ればいい」というわけではなく、それぞれのスタッフが試行錯誤。「グランメゾン東京」は三つ星レストランを目指すフレンチ、「孤独のグルメ」は週替わりの町グルメ、「ふたりごはん」は多彩な食材を使った家レシピ、「おいしい給食」は1980年代の給食と、それぞれ異なるコンセプトの作品を放送しているのです。

 そのコンセプトを決めるポイントは、放送時間帯に合わせた視聴者のターゲット層。たとえば、中高年の男性視聴者が多い日曜午後9時台の「グランメゾン東京」は「高級フレンチ+サクセスストーリー」、一人で視聴することの多い金曜深夜の「孤独のグルメ」は「大衆的な店+一人飯」、さらに遅い深夜帯の「ふたりごはん」は「男性視聴者向けの美少女+女性視聴者向けのレシピ」、日本各地で放送時間が異なる「おいしい給食」は「幅広い大人層にリーチできるノスタルジックな給食+学校の風景」がテーマとして選ばれています。

 実際、「グランメゾン東京」には「どの料理も美しくおいしそう」「力を合わせて店を作る過程が面白い」、「孤独のグルメ」には「あの店、食べに行きたい」「やっぱり見ているとおなかが減る」、「ふたりごはん」には「かわいい子とおいしそうな料理って最高」「食べるだけではなく調理のシーンも楽しい」、「おいしい給食」には「本当に懐かしい」「ソフト麺、また食べたいな」などの声が上がっていることから、それぞれのコンセプトが差別化されていることが分かります。

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木村隆志(きむら・たかし)

コラムニスト、コンサルタント、テレビ解説者

雑誌やウェブに月間30本前後のコラムを寄稿するほか、「週刊フジテレビ批評」などに出演し、各局のスタッフに情報提供も行っている。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアー、人間関係のコンサルタントとしても活動中。著書に「トップ・インタビュアーの『聴き技』84」「話しかけなくていい!会話術」など。

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