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吉本問題で浮き彫りになった、漫才師ナイツの“お笑い地肩”の強さ

独演会とテレビでテンポが異なる理由

 二人のやりとりをラジオで聞いて、筆者が以前、塙さんに漫才論についてインタビューした際にも同様の話があったことを思い出しました。ナイツの漫才DVDに収録されていた独演会での漫才と、テレビで見る漫才でテンポが違う理由を質問すると、こんな答えが返ってきたのです。

「漫才のスピードっていうのは『広さ』によるんですよ。だから、DVDでは(独演会場の)250人の人が一番聞き取りやすいように作っています。DVDで見る人のことを考えてネタを作ったり、しゃべったりはしていないんですよ。お金を払って舞台を見に来てくれた人のためのものなので」

「テレビの場合はまた違ってきて、テレビを見ている人を意識してしゃべるので、やっぱり速くなるんです(中略)漫才って、お客さんが近いか遠いかでもスピードを変えなきゃいけないんで(中略)球場の広さによってピッチングを変えるピッチャーみたいな感じですね。

『今日の審判はココを取るな』っていうのと一緒で、漫才も『今日はここで笑うな』っていうのが何となく分かって『じゃあ今日はスピードちょっと遅くした方がいいな』とか。ホントそんな感じです」(エキレビ!「ナイツ塙宣之に聞く」)

 ここから見えてくるのは、ナイツがネタを披露する際には「どんな内容か」だけでなく、「どう聞かれるか」まで徹底的に計算し尽くして準備を重ねているということ。そんな二人ならば、このネタを出したら、いずれネットで話題になることすら計算しているはずです。

 そこにあるのは、「とにかく面白いものを」という笑いへの矜持(きょうじ)であり、徹底した「お客さんファースト」の視点。だからこそ、誰にも忖度(そんたく)することなく、たとえ圧力があっても屈することはないでしょう。

 それは、これだけ売れっ子になった今も、テレビだけでなく寄席を主戦場とするナイツだからできる芸当ともいえます。お笑いの危機が一部で叫ばれる今こそ、本当のお笑い力、笑いの地肩が試されているのかもしれません。

(ライター/構成作家 オグマナオト)

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オグマナオト

ライター/構成作家

雑誌「野球太郎」「週刊プレイボーイ」、WEB「エキレビ!」「サイゾー」などを中心に、スポーツネタ、コラム、人物インタビューを寄稿。ラジオやテレビのスポーツ番組にも構成作家として参加している。主な著書に「ざっくり甲子園100年100ネタ」「甲子園レジェンドランキング」「爆笑!感動!スポーツ伝説超百科」「福島のおきて」など。

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