神木隆之介、朝ドラ「らんまん」万太郎はどんな主人公に? 「マッサン」「エール」に続く“ヒット作”との共通点
神木隆之介さん主演の朝ドラ「らんまん」。男性主人公の朝ドラ「マッサン」「エール」との共通点とは…。
“日本の植物分類学の父”と称される植物学者・牧野富太郎さんの生涯をモデルに描くNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「らんまん」。物語のプロローグとも言える幼少期編が終了し、第11話から、主人公の槙野万太郎を演じる主演の神木隆之介さん(29)が本格登場となりました。子役からキャリアを積み上げてきた神木さんの確かな演技力が視聴者の関心を集めています。
近年の男性主人公の朝ドラはヒットの傾向
土佐(現・高知県)の佐川で酒造りを生業とする裕福な家に生まれ、跡取りとしての役割を期待されながらも本人は植物に夢中……。後に新種や新品種など約1500種類以上の植物を命名し、日本における植物分類学の基礎を築いた牧野氏の幼少期を、万太郎はそのままなぞっています。
幕末から昭和へと移り変わる激動の時代を、植物とともに“天真らんまん”に駆け抜けた万太郎の物語を紡ぐ本作。男性が主人公となる朝ドラとしては、俳優の窪田正孝さんが主演を務めた2020年度前期の「エール」以来、実に3年ぶりです。
「エール」は俳優の二階堂ふみさんがヒロインを務め、「紺碧の空」や「オリンピック・マーチ」などを手がけた作曲家・古関裕而さんをモデルに、音楽で人々の心に寄り添い続けた主人公の古山裕一とその妻・音の生涯を描きました。
その6年前、2014年度後期に放送されたのが俳優の玉山鉄二さん主演の「マッサン」です。「ニッカウヰスキー」の創業者・竹鶴政孝さんをモデルにした主人公の“マッサン”こと亀山政春が、日本で初の本格ウイスキーづくりに挑む姿を映し出す本作は朝ドラ史上初の外国人ヒロインを起用したことでも話題に。国内外約500人の中から選ばれたシャーロット・ケイト・フォックスさんが好演するエリーとマッサンの夫婦愛もドラマの大きな見どころとなりました。
二作品を改めて振り返ってみると、マッサンと裕一、そして今回の主人公である万太郎にとある共通点が浮かんできます。それは3人とも裕福な家庭に生まれ育ったということ。マッサンと万太郎は酒造り、裕一は呉服商として財を成した歴史ある商家の生まれで、いわゆる“坊ちゃん”です。しかも、全員が(裕一と万太郎は長男。マッサンは次男ですが、長男は家業を継がなかったため)跡取り候補。当然、周囲からはそれ相応の振る舞いを求められるわけですが、彼らはそこから少しはみ出てしまうのです。
なぜかと言うと、どうしても“やりたいこと”があるから。商いに全く興味が持てず、音楽という芸術に取り憑かれた裕一。酒は酒でも洋酒であるウイスキーづくりに傾倒し、さらにはまだ国際結婚が珍しかった時代に外国人であるエリーとの結婚を望んだマッサン。そして、当主でありながら酒造りのことは蔵人たちに任せっきりで、自分は植物採集と観察に夢中の万太郎。
自身の中から湧き上がる気持ちにあらがえない3人は、自己実現よりも役割期待への応答が優先される時代においては異端の存在となります。現代の価値観で見れば、「自分のやりたいことをやる」というのは当たり前でも、彼らが生きた時代の価値観からすると“わがまま”になるわけです。そのため、どの作品も序盤は周囲とのあつれき、そしてそこから生まれる主人公の葛藤が見どころとなってきます。
今回も第1週から第3週にかけ、万太郎が成長していくとともにどんどん膨らんでいく植物への興味と、長男であるというだけで家業を継がなくてはならないことへの疑問。一方で、槙野家を牛耳る祖母のタキ(松坂慶子さん)はそんな万太郎に不安を募らせていく……という展開が丁寧に紡がれてきました。
そうした男性主人公の朝ドラでは王道とも言える展開を踏襲しながらも、しきたりにとらわれず、自分だけの務め(道)を見つけることの大切さを教えてくれた“天狗”こと坂本龍馬(ディーンフジオカさん)や池田蘭光(寺脇康文さん)、植物分類学という自分が進むべき道を照らしてくれた憧れの植物学者・野田基善(田辺誠一さん)や里中芳生(いとうせいこうさん)という万太郎の人生に大きく影響を与える人物たちのキャラクターや、その出会いが漫画タッチで描かれているところに新しさを感じます。エンターテインメント性の高さから推測するに朝ドラという間口を若年層にも広げようという狙いがあるのではないでしょうか。
そう考えると主演に神木さんが抜擢されたことにより納得感があります。29歳にして芸歴27年という役者としての圧倒的な経験値と技術力の高さはもちろんのこと、飾らない性格で人をひきつける愛され力。その全てが万太郎というキャラクターに大いに生かされています。
コミカルな演技で周囲を振り回し気味な万太郎の“天真らんまん”ぶりを体現しながらも、酒の品評会への参加をタキに説得する場面では万太郎の知的さやカリスマ性を、下戸なのに酒を飲んで酔っ払い、自分の不甲斐なさを吐露する場面では彼が抱える葛藤をしっかりと覗かせるなど、丁寧な演技で表現していました。
平均視聴率20%を超えた「マッサン」「エール」は男性主人公かつ、主人公を支える妻との夫婦像も人気を博しました。今作でも、万太郎の妻となる西村寿恵子はビジュアルの人気はさることながら、演技でも評価が高い浜辺美波さんが扮(ふん)しているため、今作でも神木さんと浜辺さんの夫婦像も話題になる可能性があります。
「らんまん」は脚本家の長田育恵さんが手がける伝統と革新が融合したストーリーで展開していくはずです。主演である神木さんの緩急ある芝居による心地よいハーモニーが、ヒット作の「マッサン」「エール」へと続くのか、期待がかかります。
(オトナンサー編集部)
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