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松本潤主演×古沢良太脚本「どうする家康」 “ナイーブで頼りないプリンス”家康が新感覚の大河ドラマへ

松本潤さんが主演を務めるNHK大河ドラマ「どうする家康」が1月8日にスタートします。「リーガル・ハイ」「コンフィデンスマンJP」シリーズなどを手掛けた脚本家・古沢良太が描く“家康像”とは?

「NHK」のロゴ(2020年8月、時事)
「NHK」のロゴ(2020年8月、時事)

 2023年のNHK大河ドラマ「どうする家康」(NHK総合、日曜午後8時ほか)が、ついに1月8日より放送スタートします。松本潤さんが主演、ドラマ「リーガル・ハイ」シリーズや「コンフィデンスマンJP」シリーズ(共にフジテレビ系)などで知られる古沢良太さんが脚本を手がける本作は、どんな時代劇になるのでしょうか……。

“古沢ドラマ”ならではの家康像とは?

 有名な戦国武将の一人である徳川家康は、その偉業とは裏腹に“狸(たぬき)親父”というあだ名で呼ばれています。

 家康は、弱小大名の嫡男として生まれながらも、織田信長や武田信玄ら名だたる武将たちが割拠する乱世に飛び込み、ついには天下統一を果たして泰平の世を築きました。しかし、その恰幅(かっぷく)のよさや、穏やかそうに見えて、実はずる賢い政治手腕を振るっていたことから、“狸親父”と揶揄(やゆ)されることがあるのです。

 そんな家康のイメージを一新するであろう「どうする家康」が幕を開けます。脚本を手がける古沢さんは、28歳の時に「テレビ朝日新人シナリオ大賞」で大賞を受賞。プロの脚本家としてデビューした当初は、同局の刑事ドラマを多く手がけていました。特に、2008年に放送された内野聖陽さん主演のドラマ「ゴンゾウ 伝説の刑事」は高い評価を受け、同年の向田邦子賞を受賞しました。

 古沢ドラマの特徴は、魅力的なキャラクター描写と巧みな伏線回収が挙げられます。特にドラマファンから人気が高いのが、偏屈で毒舌な上に気分屋で超わがままな弁護士・古美門研介(堺雅人さん)と、真面目で正義感の強い新米弁護士・黛真知子(新垣結衣さん)のデコボココンビが繰り広げるドラマ「リーガル・ハイ」と、ダー子(長澤まさみさん)、リチャード(小日向文世さん)、ボクちゃん(東出昌大さん)という信用詐欺師3人組が、欲望にまみれた人間たちから大金をだまし取る様を描いた「コンフィデンスマンJP」でしょう。

 もともと漫画家を目指していた古沢さんが作り出す作品には、唯一無二の個性的なキャラクターが多数登場します。展開も派手で豪快。その実、至るところにラストへとつながる伏線が散りばめられた緻密な脚本に誰もが引きつけられてきました。決して善人ではないけれど、自分なりの信念を持った主人公の口から飛び出す名言も心に刺さります。

 そんな古沢さんが今回描く家康は、「ナイーブで頼りないプリンス」です。生きるか死ぬかの瀬戸際に何度も追いやられながらも、家臣に支えられ、戦国時代をどうにかこうにか生き抜いていく人間味あふれる家康像を打ち出していきます。

「どうする家康」というタイトルからも感じるように、運命に翻弄(ほんろう)されて、その度に迷い揺れる家康が、古沢さんらしくコメディータッチで描かれるのではないでしょうか。

松本潤が演じる家康は異例の愛されキャラになる?

 主演を務める松本さんは、そんな古沢さんの描く家康のイメージに最適な俳優といえるでしょう。

 松本さんの代表作のひとつが2000年代の名作ドラマ「花より男子」(TBS系)です。同作で松本さんは、ヒロインの牧野つくし(井上真央さん)が通う名門高校を牛耳る「F4」のリーダーで、御曹司の道明寺司役を好演。道明寺は典型的な“俺様キャラ”ですが、天然でかわいらしいところもあり、多くの人に愛されました。

 そんな道明寺にとって恋のライバルで、同じく「F4」のメンバー・花沢類を演じたのが2022年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で主演を務めた小栗旬さんでした。そのため、大みそかに放送された「第73回NHK紅白歌合戦」のステージ上で行われた小栗さんと松本さんによるバトンタッチセレモニーは大きな話題に。「花男」放送当時を思い出し、感慨深い気持ちになった人も多いのではないでしょうか。

 華やかでカリスマ性があるのに、どこか隙があって親しみやすい。そんな松本さん自身の魅力が、道明寺をはじめ、「99.9-刑事専門弁護士-」(TBS系)シリーズの深山大翔や、「となりのチカラ」(テレビ朝日系)の中越チカラなど、演じる役柄に反映されてきました。彼らは普通の人ならできないことをやってのける一方で、決して完璧ではなく、弱さや欠点を持った等身大のキャラクターでした。

 古沢さんが「どうする家康」で描こうとしている家康も同じ。そこに定評のあるシリアスとコミカルをあんばいよく織り交ぜた松本さんの高い演技力も加われば、視聴者から憧れと共感の両方を集め、かつてないほど愛される大河の主人公になることでしょう。

 有村架純さん、広瀬アリスさん、松井玲奈さん、杉野遥亮さん、山田裕貴さん、板垣李光人さんら、今をときめく若手キャストが脇を固めているため、時代劇になじみのない若年層も楽しみにしていることでしょう。古沢脚本で描かれる“松本家康”がどのように“天下取り”を果たすのか……。新感覚の大河ドラマになると、期待大です。

(オトナンサー編集部)

苫とり子(とま・とりこ)

エンタメ系ライター

1995年、岡山県生まれ。東京在住。学生時代に演劇や歌のレッスンを受け、小劇場の舞台に出演。IT企業でOLを務めた後、フリーライターに転身。現在は「Real Sound」「AM(アム)」「Recgame」「アーバンライフメトロ」などに、エンタメ系コラムやインタビュー記事、イベントレポートなどを寄稿している。

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