オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

Perfume、EXILE…新型コロナで相次ぐ公演中止、チケット代は払い戻せる?

新型コロナウイルスの感染拡大で、コンサートなどイベントの中止や延期が相次いでいます。チケットの払い戻しや交通費の扱いについて、弁護士に聞きました。

2019年4月、米国で開催された野外音楽フェスに出演したPerfume(AFP=時事)
2019年4月、米国で開催された野外音楽フェスに出演したPerfume(AFP=時事)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、安倍晋三首相は2月26日、多くの観客が集まるスポーツ・文化イベントの開催を2週間自粛するよう、イベントの主催者などに要請しました。法的根拠や強制力はありませんが、EXILEやPerfumeなど人気アーティストが26日の公演を中止。他のアーティストも2月下旬から3月上旬の公演中止を相次いで発表しています。

 出演者の急病など興行主催者の都合で公演が中止・延期となった場合の払い戻しは、主催者のホームページに記載しているのが一般的ですが、感染症の流行による中止・延期は記載がない場合があります。法的にはどのようになるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

中止が「不可抗力」に当たるかどうか

Q.感染症の流行によって主催者側がコンサートの中止を決め、約款に記載がない場合、法的にはどのような扱いになるのでしょうか。

牧野さん「まずは、出演者の急病など主催者側の都合で中止となった場合について説明します。この場合、主催者側の債務不履行になり、参加予定者への損害賠償責任が発生しますが、通常、取引約款でチケット代の払い戻しに責任を限定している場合が多いでしょう。

『消費者に一方的に不利な取引約款は無効』とされる可能性がありますが、万が一、取引約款が無効とされた場合や取引約款でチケット代の払い戻しに責任を限定していない場合、『予見可能な合理的な範囲』での損害賠償責任が発生します。

この場合、チケットの払い戻しに加えて、交通費が対象となるかが問題となり、交通機関のキャンセル料や払い戻し不能の交通費(返金不可の航空券など)は補償の対象となる可能性があります。ただし、あまりに遠方からの交通費やホテル代は、対象となるにしても合理的な範囲の補償に限られるでしょう。

次に、今回の新型コロナウイルスの感染拡大を防止するためにイベントの開催が中止とされ、取引約款に感染症の記載がない場合について説明します。この場合、中止がいわゆる『不可抗力』とされるかどうかが問題となります。

不可抗力の場合、主催者側の債務(イベント開催債務)と参加予定者の債務(入場料支払債務)の双方が消滅します。既に参加予定者が代金を支払っていれば、(法律上の原因なく主催者が代金を受け取っているので)不当利得に基づく返還請求ができます。つまり、チケット代の払い戻しを請求できます。

政府の命令があれば(特に、従わないと罰則が付く場合には)不可抗力といえますが、『自粛要請』『自粛勧奨』など事実上の不可抗力に基づいて、主催者側の判断で中止とされた場合、不可抗力に当たるか否かは難しいところです。

しかし、少なくとも政府から『イベント自粛要請』が出ていれば、不可抗力とされる可能性は高く、チケットの払い戻しを請求できるでしょう。ただし、交通費は参加予定者の自己負担になるでしょう」

Q.延期の場合はどうでしょうか。「当初の開催日しかコンサートに行けないので、払い戻してほしい」と要望した場合、どのような扱いになるのでしょうか。

牧野さん「延期は当該取引の契約変更となり、参加予定者の同意が必要なので延期に従う義務はありません。チケット代の払い戻しを請求できるでしょう」

1 2

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

コメント