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深夜にうるさい…苦情を受けてやめるお寺、続けるお寺 令和の「除夜の鐘」事情

各地のお寺で行われる恒例行事「除夜の鐘」ですが、近年、苦情を受けて時間を繰り上げる寺や鐘そのものをやめる寺が増えています。

「除夜の鐘」を取りやめるお寺も?
「除夜の鐘」を取りやめるお寺も?

 大みそかの深夜、おごそかに響く108の鐘の音。「除夜の鐘」といえば、年末から年明けにかけて各地のお寺で行われる恒例行事ですが、近年、「深夜に鐘の音が響いてうるさい」と近隣住民から苦情が出て時間を繰り上げる寺や、鐘そのものを取りやめる寺が増えています。一方で、従来のように深夜から年明けにかけて鐘を突くお寺もあります。令和最初の「除夜の鐘」事情を取材しました。

大みそかの午後6時開始に

 空海(弘法大師)が創建したという東長寺(福岡市博多区)では一昨年まで、大みそか深夜に除夜の鐘を突いていましたが、昨年から時間を繰り上げました。住職の藤田紫雲(しうん)さんに聞きました。

Q.除夜の鐘の、以前の時間と昨年の時間を教えてください。

藤田さん「以前は、大みそかの午後11時半から元日の午前0時半ごろにかけて行っていましたが、昨年から、大みそかの午後6時開始にしました。今年も12月31日午後6時に始める予定です。最初は寺の関係者が突きますが、その後は参拝に来られた一般の皆さんに突いていただく予定です」

Q.時間を繰り上げた理由は。

藤田さん「東長寺の近所にはマンションが多く、外国人を含め、いろいろな人が住んでおられます。あるとき、『夜遅く、0時すぎに鐘が鳴るのは迷惑だ』と言っている人がいましたよ、と参拝者から忠告され、迷惑に感じる人がおられるなら差し控えようか、という話になりました。『日本の風習だから』と言っても、理解できない人も多いのではないかと思いました。

もう一つ、大みそかにかがり火をたいたり、参拝客の整理をしたりしてお寺の手伝いをしてくださる世話人の皆さんが高齢になられて、『夜の作業は厳しい』という声が出ていました。世話人の高齢化と近所への配慮で、夕方に行うことにしました」

Q.どんな人たちが突きにくるのですか。

藤田さん「大みそかには、近くの商業施設でカウントダウンイベントがあり、一昨年までは年が明けると、若い人たちがどっと寺に訪れて『新年おめでとう』と境内ではしゃいでいました。昨年は夕方開始だったのでそういうこともなく、『毎年突くのを楽しみにしています』という常連の皆さんが来られました」

Q.「除夜」ではなく、いわば「除夕(じょせき)」の鐘になることで、本来の意味が変わってしまうことはないのでしょうか。

藤田さん「除夜の鐘の意義は、鐘を突くことで一年の煩悩を払って新年を迎えることですが、必ずしも夜中でなくてもよいのです。夕方になっても意義は変わりません。今年も一年の区切りとして行いたいと思います」

深夜の時間帯を続けるお寺も

 一方、深夜の「除夜の鐘」を継続するお寺もあります。日本三大梵鐘(ぼんしょう)の一つとして知られる、重さ約70トンの大鐘がある知恩院(京都市東山区)もその一つです。この大鐘を突く除夜の鐘について、知恩院の広報担当者に聞きました。

Q.改めて、除夜の鐘の意味は。

担当者「一年間の煩悩を払い、清らかな心で新しい年を迎えるための行事です。突く数は、われわれが持つ煩悩の数、108回です」

Q.今年の開始時間は何時ですか。例年と同じでしょうか。

担当者「午後10時40分ごろです。午前0時すぎにかけて、108の鐘をつきます。時間は例年と同じです」

Q.近年、鐘の音への苦情で除夜の鐘を中止したり、時間を繰り上げたりするお寺があります。苦情が来ることはありませんか。

担当者「当院の除夜の鐘は、17人の僧侶が心を合わせて大鐘を突きますが、参拝者の皆さんが見学や写真撮影のために待っておられます。年末の風物詩として定着しており、苦情が来たことはありません。近隣には旅館もありますが、ご理解いただいていると思います」

 なお、知恩院では12月27日午後2時から、除夜の鐘の試し突きを行い、大みそかに備えます。

(オトナンサー編集部)

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