オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

読めば命の泉湧く、疲れた中年オヤジに全力で薦める漫画はこれだ!

せち辛い世の中の苦難を乗り切るための娯楽。その一つに漫画を数えてみてはいかがでしょう。「マンガ担当書店員が全力で薦める本当にすごいマンガはこれだ!」の著書がある、TSUTAYA三軒茶屋店の栗俣力也さんに、力が湧く2冊を教えてもらいました。

 かさむ生活費に子どもの学費、住宅ローン、親の介護…現代の中年サラリーマンを取り巻く環境は厳しいものばかり。しかし、嘆いてばかりもいられません。身近なものでこの苦難を乗り切れないものでしょうか。

 そこで、2015年に「マンガ担当書店員が全力で薦める本当にすごいマンガはこれだ!」の著書があり、名作漫画の復刊なども手掛ける、TSUTAYA三軒茶屋店の名物スタッフ・栗俣力也さんに、読むと力が湧いてくる漫画2冊を紹介してもらいました。

「この漫画で人生が変わった」

 栗俣さんがまず薦めるのは、2014年から「週刊少年チャンピオン」で連載されている相撲漫画「鮫島、最後の十五日」。主人公は、鮫島鯉太郎という力士です。鯉太郎がライバルを蹴散らしながら、角界を駆け上がる様を描いた「バチバチ」「バチバチ BURST」に続くシリーズ第3作にあたります。

栗俣さんがお薦めする「鮫島、最後の十五日」(左)と「落日のパトス」

 栗俣さんいわく「勢いだけでブチ上がっていく、熱い内容」だった前2作と比べ、本作は彼の深い苦悩や迷いを描いた作品になっているそうです。

 小柄で細身。決して力士に向いているとは言いがたい鯉太郎ですが、これまで「真っ向勝負」で相撲に取り組んできました。しかし、次第に故障するようになり、ついには休場。力士としての限界を感じ始めていきます。鯉太郎は一流の力士として「運命に“選ばれなかった”のです」と栗俣さん。

 しかし、鯉太郎はその悲哀から逃げようとはしません。「かつての同期だった力士が次々と昇進していく失意の中で、鯉太郎は自分に誓います。『この瞬間を全力で生きるしかない』と」。けがにもめげず、鯉太郎は一心不乱に勝負を重ねていきます。

 この作品を読むと、栗俣さんはあるエピソードを思い出し、胸が熱くなるといいます。50代ぐらいのサラリーマンがある日、この漫画を買っていったのだそう。「3日後くらいでしょうか。再びお店に来られて、私を呼んだんです。彼は人目もはばからず泣いていました。そして私に『この漫画のおかげで人生が変わった』と言ったんです」。

 栗俣さんは続けます。「サラリーマン人生も同じ。とてもつらくて、悲しい時がある。でも頑張らないといけない。ですから仕事で壁にぶつかった時、進むべき道に迷った時にぜひ読んでほしい」。

1 2

栗俣力也(くりまた・りきや)

TSUTAYA三軒茶屋店スタッフ

絶版書の復刊や、著者を発掘して書籍化、コミック化するなど、数多くの仕掛け販売を行い、ヒット本を発掘することで知られる、TSUTAYA三軒茶屋店スタッフ。「仕掛け番長」とも呼ばれ、「日経トレンディ」の仕事人の連載などにも登場。単なる書店員としての目線ではなく、企画力あるお店作りにも定評がある。

コメント