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竹中直人、マラソンの思い出は“逆走”「一番になりたくなくて父の元へ…」

映画「サムライマラソン」でメガホンを取ったバーナード・ローズ監督と栗田又衛門役の竹中直人さんに単独インタビュー。マラソンの思い出などについて聞きました。

(左から)バーナード・ローズ監督、竹中直人さん
(左から)バーナード・ローズ監督、竹中直人さん

 映画「サムライマラソン」でメガホンを取ったバーナード・ローズ監督と栗田又衛門役の俳優・竹中直人さん。同作は、幕末の安中藩主・板倉勝明(長谷川博己さん)が藩士を鍛えるため、15里の山道を走る遠足(とおあし)を開催します。しかし、行き違いにより、幕府から反逆とみなされ、安中藩を取り潰すための刺客が送り込まれます。藩の危機を知った唐沢甚内(佐藤健さん)は藩を助けるべく走り出し…日本のマラソンの発祥とされる「安政遠足」が題材の小説「幕末まらそん侍」の映画化作品です。

 オトナンサー編集部では、ローズ監督と竹中さんに単独インタビューを実施。物語の引かれた点や、山形での撮影、マラソンの思い出などについて聞きました。

「どこにいても監督の存在感が一番」

Q.原作を読まれていたら、感想をお願いします。

ローズ監督(以下敬称略)「拝読していません。英訳されておらず、斉藤ひろしさんが脚本を書き、それを読んで手を加えていきました。映画の中で、脚本から残した部分はたくさんあります。竹中さんのキャラクターは、元の脚本ではそれほど活躍していませんが、もっと活躍させました。脚本を改稿する中で、雪姫(小松菜奈さん)や女性キャラが強くなるように改稿しました」

竹中さん(同)「僕も読んでいません。脚本も読みません。現場に行って初めて生まれてくるものだけに集中します。俳優が話の流れを知っているのもつまらないと思うし、監督の指示に従うだけです。そこから生まれてくるものが大事だと思っています」

ローズ「竹中さんのようなクレバーな役者さんがいるので、役者さんにお任せして作っていきました。演技に関していえば、細かく指示すべきではないと思っています」

Q.自由に演じられる現場だったのでしょうか。

竹中「監督の存在感というか、現場のまなざしに自然と動かされました。監督が何を望んでいるのか、どこまで監督のイメージに近づけるのかを本能的に感じていく現場でした。好きにやっているというより、監督に動かされているという方が近いです」

Q.脚本のどんなところに引かれましたか。

ローズ「侍のスポーツものなんて初めてでした。何度も見たことがあるジャンルに新しいひねりが加えられると、新鮮に感じます。僕の挑戦は作品のトーンをしっかり取ること。シリアスになりすぎず、全くコメディーでもない、暴力表現があれば痛みを観客が感じるような。歴史物を作るときに起こりがちなのは、キャラクターたちが厳粛な感じになりすぎることです。僕は時代がたっても人はおどけたものを持っていると思っています」

Q.話がきたとき、竹中さんはどんなところに引かれましたか。

竹中「僕は走るのが好きなので『わあ、走れるんだ!』とワクワクしました(笑)それも山形で走れて楽しかったです。道が悪いところで走れることに興奮しました。足元に気をつけなければならない緊張感にたまらなく胸が高鳴りましたね」

Q.一緒に仕事をされていかがでしたか。

ローズ「レジェンドですから。米国で編集しているとき、竹中さんのことを知らない人や日本語を話せない人たちが編集をしていて一番笑うのが竹中さんのシーンです。つまり、コメディーは言語を超えるということです」

竹中「僕にとっての監督はとてもチャーミングな人です。今日はスッキリしていますが、撮影時は『美女と野獣』の“野獣”のような姿で現場に立っていました(笑)」

ローズ「今日は公の場なのできれいにしています(笑)」

竹中「撮影中、どこにいても監督の存在感が一番でした。その立ち姿がたまらなかったです。余計なことは一切言わない。じっと現場を見つめている監督の“顔”。言葉を超えたエネルギーを感じました。とてもすてきな監督でした」

Q.山形での撮影はいかがでしたか。

ローズ「本当にきれいでした。いにしえからある木や森が素晴らしく、見ているだけでインスピレーションが湧きました。雨はすごく降りました」

竹中「山形は天候が安定しないのが特有の気候です」

ローズ「劇中の雨は全部本物です。唯一の問題は雨が止む前に撮り終えなければならなかったことです。ある意味、天候には恵まれました。欲しいときに雨が降ってくれましたし(笑)」

Q.マラソンの思い出を教えてください。

竹中「子どもの頃から走るのが速くて、小学生の運動会のとき、走っていたら両サイドに誰もいなくて、このままテープを切るんだと思ったら、恥ずかしくなって逆走しました。一番になりたくなかったんです」

ローズ「なぜですか」

竹中「恥ずかしいからです。そして、父のところに走っていきました。90を越えた父親は今もそのことを覚えていて、二人で会うとふと、まだその話をします(笑)」

バーナード「マラソンに似たイベントがありました。学校から競争して公園まで走って、また、学校に戻るというものでした。その中間点に映画館があったので、僕は走るフリをして映画館にいけばいいんだと気づき、映画館に行っていました(笑)」

 映画「サムライマラソン」は2月22日から全国公開。

(オトナンサー編集部)

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