オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

  • HOME
  • エンタメ
  • 春ドラマはバズり祭り? 各局が“フラグ”を狙う理由とそのリスク

春ドラマはバズり祭り? 各局が“フラグ”を狙う理由とそのリスク

4月スタートの春ドラマが終盤戦へ。吉田鋼太郎さんの“乙女キャラ”や、菜々緒さんの“美脚キック”など制作サイドがさまざまな仕掛けを施していますが、そこには「フラグを立てて楽しんでもらおう」という狙いがあるようです。

「コンフィデンスマンJP」主演の長澤まさみさん(Getty Images)
「コンフィデンスマンJP」主演の長澤まさみさん(Getty Images)

 4月スタートの春ドラマがいよいよ終盤戦に突入します。

 今春は、吉田鋼太郎さんの乙女キャラや胸キュンシーンが炸裂(さくれつ)した「おっさんずラブ」(テレビ朝日系)を筆頭に、菜々緒さんが美脚キックで会社の悪を成敗する「Missデビル~人事の悪魔・椿眞子」(日本テレビ系)、二宮和也さんのドSキャラや竹内涼真さんのヘタレキャラ、医療マシン「スナイプ」「ダーウィン」などツッコミどころの多い「ブラックペアン」(TBS系)、前シリーズ「花より男子」の“F4”が再登場し、中川大志さんの王子様キャラが話題の「花のち晴れ~花男Next Season~」(TBS系)。

 長澤まさみさんのコスプレや、名作パロディー連発の「コンフィデンスマンJP」(フジテレビ系)、ディーン・フジオカさんが無実の罪で拷問され、冷酷な紳士に豹変(ひょうへん)し、ゲスな復讐を繰り広げる「モンテ・クリスト伯ー華麗なる復讐ー」(フジテレビ系)、ユースケ・サンタマリアさんと木村多江さんのモンスター夫妻、浮気サレ妻の“あるある”が話題の「あなたには帰る家がある」(TBS系)など、ネット上でバズるキャラやシーンが目立ちます。

 これらはすべて、制作サイドが意図的に仕掛けたものですが、これまでと異なるのは、「単に話題性を狙ったもの」ではなく「フラグを立てて楽しんでもらおう」という狙いが明確なこと。そこには、どんな思惑があるのでしょうか。

リアルタイムで盛り上がってほしい

 具体例を挙げていくと、「おっさんずラブ」では、黒澤部長(吉田鋼太郎さん)が春田(田中圭さん)を会社での屋上ランチへ呼び出した時、「部長と牧(林遣都さん)が鉢合わせのフラグ!」。武川主任(眞島秀和さん)の思わせぶりな視線を見せて、「主任も“そっち”のフラグ!」。

「Missデビル~人事の悪魔・椿眞子」では、その週のゲストキャラが登場するたびに、「今夜の菜々緒様キック、餌食はコイツ」「女王様の奴隷登場!」。「ブラックペアン」では、高階(小泉孝太郎さん)が手術室に入ると、「渡海(二宮和也さん)登場フラグ」「オペ失敗まであと3分」などのコメントがネット上に飛び交います。

 これらはいずれも、「展開を予想することで盛り上がってもらおう」「お約束としての共通認識を多くの視聴者に持たせたい」という制作サイドの狙いによるもの。「録画視聴が多いため、視聴率につながりにくい」という連ドラの課題を克服するために、リアルタイムで見てもらう努力をしているのです。

 制作サイドが目指しているのは、「いつ見ても楽しい作品である」と同時に、「多くの人々とリアルタイムでフラグを立てて盛り上がりながら見ると、もっと楽しい作品」。フラグを立てやすい作品は、視聴者自らが積極的にライブ感を楽しめるものとも言えるのです。

狙いすぎると「あざとい」、批判されるリスク

 これまでの連ドラは、先の読めない難解な物語で視聴者をドキドキワクワクさせ、「次回が待ちきれない」という心境にさせる作品が主流でした。しかし、現在は先の読みやすいシンプルな物語で視聴者間の共通認識を高め、「その場で盛り上がろう」という心境にさせる作品が増えています。

 ただ、フラグ狙いがあからさますぎると、視聴者から「あざとい」「その手には乗らない」と批判されるのが難しいところ。多くの視聴者は自発的にフラグを立てたいのであって、制作サイドに誘導されたいわけではありません。

 また、フラグ狙いが進んで、わかりやすいシンプルな作品ばかりになってしまうと、飽きられてしまうでしょう。現在、制作サイドは、フラグを立てやすいわかりやすさと、予想を裏切る難解さをどう共存させるのか、そのさじ加減を試行錯誤している最中なのです。

(コラムニスト、テレビ解説者 木村隆志)

木村隆志(きむら・たかし)

コラムニスト、テレビ解説者

雑誌やウェブに月間20本強のコラムを提供するほか、「新・週刊フジテレビ批評」「TBSレビュー」などに出演し、各局のスタッフに情報提供も行っている。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもあり、新番組と連ドラはすべて視聴するなど1日のテレビ視聴は20時間超(同時含む)。著書に「トップ・インタビュアーの『聴き技』84」「話しかけなくていい!会話術」など。