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「カムカムエヴリバディ」「じゃない方の彼女」…濱田岳が“ダメ男”でも愛される理由

NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」、テレビ東京系連続ドラマ「じゃない方の彼女」に出演し、“ダメ男”ぶりの演技が話題になっている濱田岳さん。その魅力に筆者が迫ります。

濱田岳さん(2019年10月、時事通信フォト)
濱田岳さん(2019年10月、時事通信フォト)

 NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(月~土 前8:00)、テレビ東京系連続ドラマ「じゃない方の彼女」(毎週月曜 後11:06)と、2021年秋スタートのドラマに引っ張りだこの濱田岳さん。

 子役としてデビュー以降、数多くの映画やドラマで活躍し、小柄な体形と親しみやすいキャラクターで愛されてきた濱田さんですが、30代に突入して以降、大人の色気を発揮し始めています。

“愛されキャラ”を確立

 幼い頃にスカウトがきっかけで芸能界入りを果たした濱田さんですが、自分自身で俳優の道を歩もうと決めたのはドラマ「3年B組金八先生」(TBS系)がきっかけ。濱田さんはクラスのムードメーカー的な存在である一方、武田鉄矢さん演じる金八先生に反抗的な態度を取り、困惑させる狩野伸太郎役で人気を集めました。当時から、高い演技力が評価され、その才能を見込んだ武田さんや演出家には相当厳しく指導されたといいます。

 そして、金八先生卒業から2年後、濱田さんはブレークを果たすことに。主演を務めた映画「アヒルと鴨のコインロッカー」の椎名役と、大ヒットドラマ「プロポーズ大作戦」(フジテレビ系)の鶴見尚役を通し、気弱で情けない部分もあるけど憎めない“愛されキャラ”のイメージを確立させたのです。

 2015年からシリーズ化された「釣りバカ日誌~新入社員 浜崎伝助~」(テレビ東京系)では、映画で西田敏行さんが演じた若き日の“ハマちゃん”こと浜崎伝助役を好演。みち子役の広瀬アリスさんと繰り広げるコミカルなやりとりが、お茶の間に笑いを届けました。

 プライベートでは、2011年にファッションモデルの小泉深雪さんと結婚した濱田さんですが、ドラマや映画でも役として、多くの美女を落としてきています。栄倉奈々さんや吉高由里子さんら、誰もが憧れる“高根の花”のような方々がお相手となることが多く、濱田さん演じるキャラクターはいつも相手にされていません。

 しかし、相手のいいところも悪いところも包み込む懐の大きさで、女性の心を射止めてきました。屈託のない笑顔やゆったりとした優しい物言いが独特の癒やしを放っている、そんな濱田さんが演じているからこその安心感があり、女性たちがこぞって彼を好きになる気持ちに、視聴者も共感できるのではないでしょうか。

女性をとりこにするモテ男?

 しかし、近年の濱田さんが演じるキャラクターは以前と少し印象が変わってきています。特に印象的だったのは昨年公開の映画「喜劇 愛妻物語」での“ダメ男”ぶり。濱田さんが演じた主人公・豪太は年収50万円の売れない脚本家で、水川あさみさん演じる妻から愛想を尽かされているという役どころでした。

 世間の人が濱田さんに持つ「情けないけど、どこまでも優しい男性」というイメージはそのままでしたが、豪太は決して善人ではないのです。ろくに仕事もせず、ふらふらしたり、不倫相手とのやりとりにかまけて、娘から目を離したりと目に余る行動の数々を取る豪太。

 まさにどうしようもないやつですが、それでもクスッと笑えるのは濱田さんが持つキャラクターがあってこそ。どんなに最低でも、結局笑って許してしまうようなチャーミングさが濱田さんにはあるのです。

 そんな濱田さんの集大成とも言える作品が現在放送中の主演ドラマ「じゃない方の彼女」。同作は「あなたの番です」(日本テレビ系)などを手掛けた秋元康さん企画・原作のドラマで、濱田さんはどこにでもいる普通の人生を歩んできた男性・雅也を演じています。雅也は妻と娘と共に何不自由ない生活を送っていましたが、准教授として働く大学の女子大生・怜子(山下美月さん)との道ならぬ恋に落ちていくのです。

 天然小悪魔な怜子を拒絶しているようにも、積極的に受け入れているようにも見える雅也。一見、優しく真面目な男性ですが、ギリギリのところで言い逃れできそうな隠れたズルさを濱田さんは巧妙に表現しています。

 対照的なのは山崎樹範さん演じる同僚・片桐。彼のように女性をもてあそぶタイプのモテ男ではないものの、濱田さんが演じる男性たちはどこか哀愁とも呼べる色気があり、女性を引きつけてやみません。自らアプローチするわけではありませんが、女性からの猛アプローチにはすんなり屈してしまう、そんな“隠れクズ”を演じさせたら、濱田さんの右に出る者はいないでしょう。

 また、濱田さんは「カムカムエヴリバディ」で上白石萌音さん演じるヒロイン・安子の兄・算太を演じています。これがまた、くせ者で、ダンサーを目指して家を出たものの多額の借金を抱えていることが後に発覚し、怒った父から勘当され、行方をくらませていましたが、出征が決まった際にはあっけらかんと家に帰ってきました。確かにどうしようもないやつですが、やはり、時折見せる妹への優しさや家族への複雑な感情が入り交じった笑顔に、ほだされてしまいます。

 人畜無害な愛されキャラに見せかけて、不思議な魅力で女性たちをとりこにするモテ男。そんな新たな立ち位置を確立させる俳優・濱田岳さんのさらなる飛躍に期待が高まります。

(ライター 苫とり子)

苫とり子(とま・とりこ)

エンタメ系ライター

1995年、岡山県生まれ。東京在住。学生時代に演劇や歌のレッスンを受け、小劇場の舞台に出演。IT企業でOLを務めた後、フリーライターに転身。現在は「Real Sound」「AM(アム)」「Recgame」「アーバンライフメトロ」などに、エンタメ系コラムやインタビュー記事、イベントレポートなどを寄稿している。

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