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「入社1カ月で退職」隠して転職活動…経歴詐称で内定得たら“犯罪”に? 弁護士が解説

入社1カ月で退職した人が、履歴書や職務経歴書などにその職歴を書かずに転職活動を行った場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。弁護士が解説します。

短期間で退職した事実を履歴書や職務経歴書に書かずに転職活動を行うと、法的責任を問われる?
短期間で退職した事実を履歴書や職務経歴書に書かずに転職活動を行うと、法的責任を問われる?

 4月に新卒採用や中途採用で会社に入った人の多くは、職場に少しずつ慣れてきたと思います。一方、「職場の環境が劣悪だった」「働きがいを感じられない」などの理由で、就業してから1~2カ月で退職する人もいます。もし短期間で退職した後、履歴書や職務経歴書などにその職歴を書かずに転職活動を行った場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士が解説します。

法的責任を問われることはないが…

 履歴書や職務経歴書に短期間で退職した会社などの職務経歴を書かなかったとしても、何らかの罪に問われることはないでしょう。また、そのことを理由に、民事上、損害賠償責任を追及されることも考えにくいです。従って、刑事、民事上の法的責任を問われる可能性はないと考えてよいでしょう。

 ただ、法的責任とは別に、短期間で退職した会社などの職務経歴を一切書かないことが、転職活動に負の影響を及ぼすことが考えられます。まず、採用前に不記載の事実が発覚すれば、本来すべての職歴を書くべきところ、あえて短期間で退職したところのみ記載しなかったことについて不信感を抱かれ、不採用にされるリスクがあります。

 また、短期間で退職した会社の職務経歴のような、自分にとって都合の悪い情報を履歴書や職務経歴書に書かずに企業から内定をもらった場合、刑事、民事上の法的責任を問われる可能性はありませんが、事案によっては懲戒処分を下される可能性が考えられます。

 自分にとって都合の悪い職務経歴を履歴書や職務経歴書に書かない行為は「経歴詐称」の一つですが、重大な経歴詐称が発覚した場合、最も重い懲戒処分である懲戒解雇処分になる可能性もあります。

 懲戒解雇処分が許されるのは、採用段階で発覚していたとしたら採用しなかったといえるような重要な詐称で、客観的にも相当性が認められる場合に限られます。一般的には、短期間で退職した職務経歴の有無は、採用に大きな影響を及ぼさないことが多く、業務の遂行にも支障がないと考えられ、懲戒解雇になる可能性は低いです。

 ただし、短期間での退職を何度も繰り返していたことを隠していた場合などは、悪質性が高いとして、会社が懲戒解雇を検討する可能性も否定できないでしょう。

 ここで経歴詐称自体が違法なのか気になる人もいると思います。経歴詐称にもいろいろあり、その内容によって違法になることがあり得ます。例えば、大学を卒業していないのに卒業していると偽った場合、「学位を詐称」したとして軽犯罪法違反になる可能性があります(軽犯罪法1条15号)。

 他にも、業務上必要な資格を詐称して会社に損害を与えたというようなケースでは、民事上、損害賠償責任を負うことも考えられます。

 転職後のことも考えると、転職活動時は履歴書や職務経歴書に自分の職務経歴を正確に書くのが望ましいでしょう。

(オトナンサー編集部)

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佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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