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「月半ばだけど、目標数字上がったからよろしく!」…「ゴールを後で動かす相手」にどう対応する?

就活や転職、企業人事のさまざまな話題について、企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた筆者が解説します。

「ゴールを後で動かす相手」にどう対応?
「ゴールを後で動かす相手」にどう対応?

 仕事で設定された目標に向かって働いていたら、「状況が変わった」と突然、目標が先に進んでしまった、つまり目標数値が上乗せされたり、締め切りが早くなったりした経験はないでしょうか。状況変化はやむを得ないことなのですが、それでも「ゴール」が動かされると、モチベーションを保つのが難しくなったり、「このゴールは本当に正しいのか? また動いてしまうのではないか」と疑心暗鬼になったりする人もいるかと思います。

 一度決めたはずのゴールを動かす相手、これは上司である場合が多いと思いますが、そういう人にどう対応するか、あるいはゴールポストが動く事態にどう対応していくべきか、考えてみましょう。

暫定的なものを絶対的なものに見せかけている?

 まず、この変化の激しい現代において、一度決めたゴールを動かさないことが可能かどうかを考えてみます。もちろん答えは「No」でしょう。そもそも仕事におけるゴールとは、たいていの場合、一定期間における「スモールゴール」に過ぎず、その先にある最終的な「ビッグゴール」にたどり着くための手段に過ぎません。

 環境が変化すれば、「ビッグゴール」に至る手段である「スモールゴール」などは変えてもいい、いや、変えなくてはいけないのです。ですから、ゴールが動くこと自体でモチベーションが下がったり疑心暗鬼になったりしていては、これからの時代に生きていくのは、つらいことでしょう。

 ですから、ゴールが動くということ自体に動じない方がよいと思います。「もう当たり前だ」と思う方がよいでしょう。本当の問題は、その「スモールゴール」をきちんと「大目標を達成するための暫定的な手段であり、環境の変化があれば変更があり得るもの」として相互が認識しているかどうかではないでしょうか。

 本来、「スモールゴール」程度の緩いものであるにもかかわらず、上司が「絶対的に守らなくてはならないもの」と見せかけて、それに執着させようとしているのであれば、ゴールを動かした時に「裏切られた」と思われても仕方がありません。

「ビッグゴール」を擦り合わせておく

 そうではなく、「これはあくまでも仮のゴールであり、大目標を達成するために修正が必要だったり、もっとよい方法があったりすれば、いくらでも変えてよいものだ」であると、上司と部下の間で合意を形成しておくべきでしょう。

 極端な話、事前に決めたゴールはどんなものであっても、究極的には「仮説」にすぎないわけですから、いくら上司とゴールに合意したとしても、最初からそのように認識すべきです。そして、上司との間で「これは仮説である」ということを確認し合ってさえいれば、ゴールを動かされたとしても、「さもありなん」「致し方ない」と思えるのではないでしょうか。

 もちろんこのとき、その先にある「ビッグゴール」を擦り合わせておくことが重要です。結局のところ自分たちが何を目指しているのかについて、確認しておくのです。それは、個別具体的なものではなく、曖昧で抽象的なものでも構いません。

 その擦り合わせができてさえいれば、「最初の仮説は間違っていた」とか「もっとよい仮説があった」ということを考える軸が、上司と部下との間で同じになるので、メンバーの側からも「最初にこれがゴールだと言われていましたが、こちらのゴールに変更しませんか。理由はこういうことです」と、理屈を持ってゴールの修正を提案できるようになります。

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曽和利光(そわ・としみつ)

人材研究所代表

1971年、愛知県豊田市出身。灘高校を経て1990年、京都大学教育学部に入学し、1995年に同学部教育心理学科を卒業。リクルートで人事採用部門を担当し、最終的にはゼネラルマネジャーとして活動した後、オープンハウス、ライフネット生命保険など多様な業界で人事を担当。「組織」「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法を特徴としている。2011年、「人材研究所」を設立し、代表取締役社長に就任。企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を超える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開している。著書に「定着と離職のマネジメント『自ら変わり続ける組織』を実現する人材流動性とは」(ソシム)など。

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