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怒ると「無言」になる人の心理とは? カウンセラーに聞く

「怒ると黙り込んで無言になる」人、身近にいませんか。こうした人の心理や、周囲が悩みがちな接し方について、心理カウンセラーに聞きました。

怒ると無言に…なぜ?
怒ると無言に…なぜ?

「怒りの感情がこみ上げたとき、黙り込んで無言になる」。こうしたタイプの人について、身近な人や自分自身など、心当たりがある人もいると思います。怒ったとき、感情的になって激しく言葉を浴びせるタイプの人もいますが、無言になるタイプの人は、それとはかなり対照的な態度になるといえます。こうした人については、「怒ると黙り込むタイプが一番怖い」「何も言わないから、どう話し掛ければいいのか分からなくなる」「夫がこのタイプで、仲直りしづらいから面倒くさい」など、さまざまな声があるようです。

「怒ると無言になる」人の心理や、周囲の接し方について、心理カウンセラーの小日向るり子さんに聞きました。

「黙る」心理には2種類ある

Q.そもそも、「怒り」の感情とは何ですか。

小日向さん「『怒り』は簡単にいうと、自分を防衛するために起こる感情の一つです。体や心がダメージを受けた際に湧き上がる苦しみ、痛み、不安などの不快感情が『一次感情』で、こうした感情を防御・回避しようと湧き上がるものが『二次感情』ですが、この二次感情の一つが『怒り』といわれています」

Q.怒りを感じたとき、「黙り込んで無言になる」タイプの人がいますが、これはどういう心理からくる行動・態度なのですか。

小日向さん「無言になるタイプの人の心理は、大きく2つに分かれていると考えられます。一つは、怒りへの対処法の一つとして、積極的に『黙る』という選択をするタイプ、そしてもう一つは、怒りを表出した際の相手の反応が怖くて黙ってしまうタイプです。前者は自ら、『黙る』ことを選択しているのに対し、後者は恐怖という抑圧によって黙っているだけなので、後者は当然ストレスがたまりやすくなります」

Q.一方で、怒りを感じたとき、感情的になって口数が増えたり、相手を攻撃するように言葉を浴びせたりするタイプの人もいます。心理の面で何が異なるのでしょうか。

小日向さん「多弁や“口撃”によって相手を負かしてやる、という勝負心を持っている人もいますが、それ以外の人は、『感情抑制能力』が低いと思われます。『感情を抑制させる』という能力は、生まれ持った気質的には低くても、多くは教育や体験による学習で身に付いていくものですが、低いままの人もいます」

Q.怒ると黙り込んで無言になるタイプの人にみられる特徴はありますか。

小日向さん「先述した2つのタイプ別にいうと、自らの選択で黙るタイプの人は、自分の怒りの発生要因を冷静に観察し、『黙る』という行動が最適解だと判断しています。例えば、自分が黙り込めば相手が先に謝罪してくることが多いカップルの場合、『沈黙→相手が謝罪→自分の優位性を実感→怒りが収まる』という流れが次第に確立されます。そのため、一つの作戦として『沈黙』を使うようになるわけです。

これは例ですが、他の要素でも、黙ることで怒りを収めることが最適だと判断しているということは、判断力が強く、学習能力も高い人といえるでしょう。自分に自信があるタイプは、この傾向が強いように感じます。

一方、自分に自信がなくて、常に人の顔色をうかがってしまうタイプは、怒りを放出させた後の相手の反応が怖くて無言になっている可能性が高いです」

Q.怒ると黙り込むタイプの人に対して、「怒っているとき、どう接したらいいのか分からない」と考える人も少なからずいるようです。どのように接するのがよいのでしょうか。

小日向さん「ベースは『優しく』『丁寧に』です。例えば、怒ってしまったのはこちらが原因であるとはっきり分かるのであれば、優しい口調で丁寧に謝る姿勢が大切です。何が原因で怒っているのか分からない場合であっても、優しく、『理由を教えてほしい』と伝えることです。このときに、『乞う』(願い求める気持ち)という意識を持つと、自然と優しい声音になります。

黙られたままでは相互理解が進みません。『なぜ、こちら側が優しくしなくてはならないの?』という理不尽な感情が湧く場合もあると思いますが、その感情はいったん置いて、テクニックとして『優しく』を使ってください」

Q.「怒ると黙り込んで無言になる」タイプの人が、その性質を自覚している場合、怒りを感じたときに気を付けるとよい意識・行動とは。

小日向さん「『アサーション』という言葉を聞いたことがあるでしょうか。アサーションとは、相手を尊重しつつも、自分の意志や意見をきちんと伝えることを心掛けるというコミュニケーション方法です。怒りを抑制して黙り込んでしまうタイプの人は、怒りだけでなく、さまざまな感情を抑制してしまう傾向がありますが、黙り込むことは穏やかな解決法などでなく、相手を尊重していないということです。

これは対面だけでなく、LINEの“既読スルー”も該当します。ネットでのコミュニケーションが主流になった現代だからこそ、アサーションは大切です。アサーションコミュニケーションについては書籍も出ているので、思い当たる人は学んでみることをおすすめします」

(オトナンサー編集部)

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小日向るり子(こひなた・るりこ)

心理カウンセラー

カウンセリングスペース「フィールマインド」代表。出版社で働きながらボランティアで電話相談員を始めたことが、カウンセリングの世界に入るきっかけに。資格取得後、行政機関でのセクハラ相談員を経て、2012年に独立。2019年4月現在、約3500件の相談実績を持つ。メディア、ネットなどで心理・恋愛系コラムを多数執筆。フィールマインド(http://feel-mind.net/)。

コメント

1件のコメント

  1. 怒りの感情は言われるように「自己防衛機制」の一つで、その人にとって大事な生き延びる方法なので、アサーションなでを学ぶ、伝手方(テクニック)を学べばいいだけでなく「怒り」の中にある自分自身をも観る必要があると思っています。もし、それを怠ると表面上はより良いコミュニケーションができるようになるかも知れませんが、最悪には自分自身を失ってしまうかも知れません。またアサーションについては「平久典子(?)」と随分議論したことがありますが、アメリカ文化の中で育まれたテクニックなので、日本でそのまま使うことは問題だと思っています。ご存じのようにアメリカでは「個人の意見や考えは、それぞれに異なるもの」ということが分化の中にあり、其れを前提としているので日本で使う場合は要注意だと思っています。