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身だしなみ? スマホで十分? ビジネスシーンで「腕時計」をしないのはマナー違反か

ビジネスパーソンの必需品の一つとも言える「腕時計」ですが、近年は、スマートフォンの普及で身につけない若者も増えているようです。

腕時計は社会人に必須のアイテム?
腕時計は社会人に必須のアイテム?

 ビジネスパーソンの必需品の一つ「腕時計」。社会人になるのを機に、スーツスタイルなどに合わせて購入する人も多いのではないでしょうか。近年は、スマートフォンの普及で腕時計を身につけない若者も増えているようですが、ネット上では「身だしなみとして腕時計はするべき」「ビジネスの場で、スマホで時間を確認するのは失礼」「時計機能を持つアイテムはスマホだけで十分」「腕時計の必要性を感じない」と賛否が分かれています。

 これについて、専門家の見解はどのようなものでしょうか。「マナーは互いをプラスにするもの」をモットーに、国内外の企業や大学などで人財育成教育やマナーコンサルティングを行うほか、NHK大河ドラマなどのドラマや映画でマナー指導を行い、国内外で85冊以上のマナー本を出版、監修するマナーコンサルタント・西出ひろ子さんに聞きました。

アナログの良さでリスク回避

Q.マナー的観点からみて、ビジネスパーソンは腕時計をするべきでしょうか。それとも不要でしょうか。

西出さん「基本は、自社の身だしなみのルールに従うことです。特にルールがなければ、その人の自由といえます。とはいえ、ビジネスシーンにおいて『するべき』とは断定できないものの、時計を装着することで、肌にアレルギー症状などが出る人以外は『していた方がよい』と思います。

ビジネスにおいて、時間管理は大切なことです。時間を確認するために、スマートフォンを使うこと自体は特に差し支えありませんが、問題は、スマホを見ることによって『話に集中していないのではないか』『自分と話をしているのに、メールをチェックしているのだろうか』『急ぎの用件が入ったのかな』などと、相手にあらぬ誤解を抱かせてしまう可能性がある点だと考えます。

マナーとは、相手への気遣いを通して自分を守るものです。相手を不安にさせないように意識することは、自分の印象を守ることにもつながります。

また、スマホには『充電切れ』のリスクがつきものです。腕時計を持たず、スマホの電源も切れてしまっては、時間をすぐに確認する手段がなくなってしまいます。そうしたリスクを考えると、腕時計や手帳などのアナログさが強みとなることもあります。

ビジネスシーンでは、リスクを避けるための『備え』が重要です。現代のピジネスパーソンは、デジタルとアナログを上手に併用することによって、時間管理・危機管理を意識することもビジネスの一環として大事である、といえるのではないでしょうか」

Q.腕時計をしない若手ビジネスパーソンが増えていることについて、どのように思われますか。

西出さん「個人的には、自由でよいと思っています。しかし、若手の皆さんのことを老婆心ながら思えば、マナーの大前提は『相手の立場に立つ』ことです。個人による価値観はさまざまではあるものの、スマホのない時代に長く働いてきた年代の人の中には、腕時計をしていない人を『時間管理の意識が低い』と快く思わなかったり、『最近の若い人は腕時計をしないのか』と違和感を持ったりする人もいるかもしれません。

余談ですが、かつてビジネスパーソンに欠かせない身だしなみや携帯品を表す『ハトが豆食て(はとがまめくて)』という言葉が使われたことがありました。

・は→ハンカチ
・と→時計
・が→がまぐち(財布)
・ま→万年筆(筆記具)
・め→メモ
・く→くし
・て→手帳

これらのツールのほとんどをスマホ一つでまかなえるようになった現代においては、時間をスマホで確認する行為も、昔ほど不自然なものではないのかもしれません。

とはいえ、自分ではよいと思っていても、相手がどう感じるかは分かりません。若手の皆さんは、自分の感覚だけでなく、さまざまな年代の人たちと接する社会において『相手はどう思うか』も意識し、相手や状況に応じて『腕時計をする/しない』などの臨機応変さ、柔軟さを持つこともビジネスパーソンとして必要なことと感じます。例えば、プレゼンテーションを行うときには、腕時計をしている方が『格好良いビジネスパーソン』という印象になるのではないでしょうか」

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西出ひろ子(にしで・ひろこ)

マナーコンサルタント、マナー解説者、美道家

ヒロコマナーグループ代表。一般社団法人「マナー&プロトコル・日本伝統文化普及協会」代表理事。大妻女子大学卒業後、国会議員などの秘書職を経て、マナー講師として独立。マナーの本場英国へ。オックスフォードにて、オックスフォード大学大学院遺伝子学研究者のビジネスパートナーと2000年に起業し、お互いをプラスに導くマナー論を確立させる。帰国後、名だたる企業300社以上にマナーコンサルティングなどを行い、他に類を見ない唯一無二の指導と称賛される。その実績はテレビや新聞、雑誌などで「マナー界のカリスマ」として多数紹介。「マナーの賢人」として「ソロモン流」(テレビ東京)などのドキュメンタリー番組でも報道された。NHK大河ドラマ「龍馬伝」をはじめ、NHKドラマ「岸辺露伴は動かない 富豪村」、映画「るろうに剣心 伝説の最期編」などのドラマや映画、CMのマナー指導・監修者としても活躍中。著書は28万部突破の「お仕事のマナーとコツ」(学研プラス)など監修含め国内外で100冊以上。「10歳までに身につけたい 一生困らない子どものマナー」(青春出版社)など子どものマナーから、ビジネスマナー、テーブルマナーなどマナーのすべてに精通。ヒロコマナーグループ(http://www.hirokomanner-group.com)。
※「TPPPO」「先手必笑」「マナーコミュニケーション」「真心マナー」は西出博子の登録商標です。

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