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【衆院選投票】投票用紙に「頑張れ」「しっかりしろ」…なぜ無効? 候補者名・政党名を書く明確なワケ

選挙の投票の際に候補者名、政党名以外の内容を投票用紙に書いてはいけないのはなぜなのでしょうか。また、候補者名や政党名を書き間違えた場合、書き間違えた箇所に二重線を引かずにそのまま別の箇所に書き直した場合、無効票になる可能性はあるのでしょうか。弁護士に聞きました。

投票用紙に「候補者名」「政党名」以外の内容を書いてはいけない理由は?
投票用紙に「候補者名」「政党名」以外の内容を書いてはいけない理由は?

 衆院選が10月27日に投開票を迎えますが、投票日当日に用事がある人の中には、期日前投票制度を利用して事前に投票する人も多いと思います。

 ところで、投票用紙には候補者の氏名、もしくは政党名以外、書いてはいけないといわれていますが、なぜなのでしょうか。また、候補者名や政党名を書き間違えてしまったときに、書き間違えた箇所に二重線を引かずにそのまま別の箇所に書き直した場合、無効票になる可能性はあるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

“他事記載”による不正を防止

Q.選挙の際、投票用紙に候補者の氏名、比例代表の場合は政党名・政治団体名以外のことを書いてはいけないといわれていますが、なぜなのでしょうか。

佐藤さん「公職選挙法68条では、『無効投票(無効票)』について定められており、同条1項6号で『公職の候補者の氏名のほか、他事を記載したもの。ただし、職業、身分、住所または敬称の類を記入したものは、この限りでない』と記載されているからです。つまり、投票用紙に候補者名、政党名以外のことを書くと他事記載に該当し、無効投票となります。

他事記載が無効投票とされているのは、不正を防止するためです。例えば、投票用紙に特定の印をつけ、自分が投票したことが分かるようにして、有権者と候補者側が票を入れたことによる見返りを約束するといった不正が起こらないようにしています」

Q.では、もし投票用紙に「頑張れ」「しっかりしろ」などと候補者を叱咤(しった)激励する内容の文章を書いた場合のほか、落書きをした場合、投票は無効となるということでしょうか。

佐藤さん「無効になります。他事記載が無効投票とされるのは、先述のように、不正防止が目的だからです。『頑張れ』『しっかりしろ』といった応援に見える言葉であっても、落書きであっても、不正目的で書かれた可能性を否定できず、無効投票になります」

Q.投票用紙に書いた候補者名、政党名が間違っていた場合、投票が無効になる可能性はあるのでしょうか。また、候補者名の漢字が難しいからといって平仮名で書いた場合はいかがでしょうか。

佐藤さん「公職選挙法68条1項8号は、『公職の候補者の何人を記載したかを確認し難いもの』を無効投票としており、候補者名や政党名が間違っており、誰に投票したのか有権者の意思を確認できない場合、この規定に触れ、無効になります。

候補者名の漢字が難しいからと平仮名で書いたり、漢字を間違えてしまったりした場合は、有効とされるケースが多いです。例えば、『村松』『松村』のように二文字の姓を逆に書いてしまうなど、明らかに書き間違いだと推測できるものについては、有権者の意思をくみ、有効とされたケースがあります。

ただし、間違いの程度によっては無効になるため、投票用紙に記載する際は、投票所に掲示されている候補者名などをよく見て、省略せずに正しく記載するよう心掛けましょう」

Q.このほか、候補者名や政党名を書き間違えてしまったとします。この場合、書き間違えた箇所に二重線を引き、別の箇所に名前を書き直せば、投票は有効なのでしょうか。また、二重線を引かずにそのまま別の箇所に書き直した場合はいかがでしょうか。

佐藤さん「候補者名や政党名を書き間違えてしまった場合は、二重線を引いて訂正し、正しく書き直せば有効です。枠からはみ出していても、どの候補者や政党に投票したかが分かれば有効になります。

二重線を引かずに、そのまま別の箇所に書き直した場合、内容によっては無効になる可能性があります。公職選挙法68条1項4号では、『一投票中に2人以上の公職の候補者の氏名を記載したもの』を無効投票としているからです。

例えば、投票したいと思っていた候補者とは別の候補者の氏名を記載した後、書き間違いに気付き、二重線を引かずに新たに本当に投票したい候補者の氏名を記載したようなケースでは、この規定に触れ、無効になります。

訂正前の記載が残っていると、有権者の意思が分かりにくくなり、他事記載にも当たる可能性があり、無効とされる可能性が高いです。書き間違えた場合は必ず二重線で訂正してから書き直すようにしましょう」

(オトナンサー編集部)

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佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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