オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

地位向上うれしい、でも電車じゃ…「大人が漫画」市民権得てアラフォーの心情は?

話題になる漫画が増え、漫画好きを隠していた大人も電車内で漫画を読むなど、自分の趣味を公にしても苦ではないようです。中年以上で漫画を読み続けている人は、周囲の目をどのように感じているのでしょうか。

「鬼滅の刃」最終巻(2020年12月、時事)
「鬼滅の刃」最終巻(2020年12月、時事)

 昔は「大人が漫画を読むのは恥ずかしい」という風潮があり、漫画好きの大人は肩身の狭い思いをしていました。しかし、宮崎駿さんの作品や、最近では「鬼滅(きめつ)の刃(やいば)」に代表されるように、世の中で大きな話題になる漫画が増え、漫画好きを隠していた大人も徐々に、電車の中で単行本の漫画を読むなど、自分の趣味に自信を取り戻しつつあるようです。

 中年以上で漫画を読み続けている人は実際のところ、最近の周囲の目をどのように感じているのでしょうか。数人に話を聞きつつ、「大人が漫画を読むのは恥ずかしい」がすでに過去のものとなったのかを考えてみたいと思います。

それでも「漫画好き」とは思われたくない

 30年以上、「週刊少年ジャンプ」の購読を続けているAさん(41歳、男性)は「いい時代になった」と話します。

「(少年漫画は)面白いのに、子どもっぽいという理由だけで敬遠されてきたように思います。でも、最近は多くの人がその面白さに気付いて、世の中における漫画の地位も上がり、読者としてはうれしい限りです」(Aさん)

 世の中の漫画への捉え方が変わったことで、Aさんの身の回りにも変化は起きたのでしょうか。

「『少年ジャンプ』を読んでいることを周囲に大っぴらにしているわけではないので、あまり大きな変化はありません。ですが、『鬼滅の刃』が話題になったあたりから、漫画やアニメにハマる人が周りにも増えて、そういう人たちと共有できる話題ができたのはよかったです。

取引先の社長(70代前半)と漫画の話で盛り上がって、かわいがってもらえるようになったこともありました」

 人知れず、漫画好きを貫いてきたAさんですが、漫画が広く市民権を獲得しつつある現在でも、周りから、「漫画大好き人間」と思われることには抵抗があるそうです。

「私たちの世代は『大人になって、漫画を読むのは恥ずかしい』という価値観の中で育ちました。そのため、『好きで何が悪い』という気持ちがありつつ、実際は『恥ずかしいことだから、隠れた趣味にしよう』と思ってやってきました。この姿勢が身に付いてしまい、今更、漫画好きを大っぴらにしようとは思えません。

電車の中では絶対に(漫画を)読みません。『少年ジャンプ』の発売日である毎週月曜日には、気持ちが高揚しますし、ジャンプを広げて読んでいる成人男性の同志を見かけると、『いいなあ』と思うと同時に、正直なところ、『恥ずかしくないのかな…』とも思います」

漫画をきっかけに「人との輪」広がる

 一方、「ONE PIECE」のような超有名どころの漫画を中心に読む、自称「ミーハーな漫画好き」のBさん(37歳、男性)は漫画をあえて、電車の中で読むことにしています。

「電車の中で漫画を読むことで、読んでいる漫画を好きな人が僕のことを見掛けると、『同じ漫画を好きな人がいるんだ』とうれしい気持ちになってくれるかもしれません。また、読んでいる漫画をまったく知らない人が見かけて、僕が読んでいる漫画に興味を持ってくれるかもしれません。

それに、電車の中で漫画を読むのは『俺はこの漫画が好きなんだ!』と周囲に無言でアピールしている意味もあります。自分にとって、電車で漫画を読むのは一つのメッセージです。とはいえ、電車で読むのは、好きな漫画の新刊を手に入れると、帰宅するまで我慢できないという理由が大きいのですが…」(Bさん)

 近年の漫画ブームで、Bさんは「人との輪が広がった」と話します。

「僕が漫画好きなのは、みんなが知ってるので、例えば、会社の顔見知りから、『○○読んだ?』『○○最高だよね』などと、漫画の話題について話しかけてもらうことが以前に比べて格段に増えました。

これまでは『漫画好きであることは恥ずかしいことなので、漫画好きをアピールするのにも気合がいる』と、気負っていなくてはならない感じがありました。しかし、現在は大人も大っぴらに漫画のことを話せるようになり、気負う必要がなくなってきたなと実感しています」

1 2

武藤弘樹(むとう・こうき)

フリーライター

早稲田大学第一文学部卒。広告代理店社員、トラック運転手、築地市場内の魚介類卸売店勤務などさまざまな職歴を重ね、現在はライターとミュージシャンとして活動。1児の父で、溺愛しすぎている飼い猫とは、ほぼ共依存の関係にあるが本来は犬派。趣味はゲームと人間観察。

geetara610@gmail.com

コメント